伊吹雅也のPOG分析室 (2023) ~第3回 入札分析~
閲覧 1,942ビュー コメント 0 ナイス 6
先週からJRAは夏季競馬に突入し、新シーズン「ウマニティPOG 2023」も本格始動。開幕週の新馬を制したのは、テラメリタ(テラノヴァの2021)・シュトラウス(ブルーメンブラットの2021)・アトロルーベンス(キングスローズの2021)・ボンドガール(コーステッドの2021)・バスターコール(デグラーティアの2021)でした。獲得していた仮想オーナーの皆様、おめでとうございます。
ちなみに、この5頭はいずれも単勝2番人気以内・単勝オッズ4倍未満の支持を集めていた馬。東京競馬場で施行された3レースすべてをD.レーン騎手の騎乗馬が勝ち切っている点も興味深いところです。
今回は、進行中の第2回入札や来週以降の入札に向けた指針とすべく、第1回入札の結果やその周辺情報を分析してみました。
本稿の末尾には、注目POG馬ランキング(「2023/06/07 00:00更新」分)トップ100にランクインした馬と、該当馬の性・種牡馬・生産者・調教師をまとめてあります。なお、種牡馬別・生産者別・調教師別の頭数ランキング上位は下記の通りです。
【種牡馬別頭数ランキング】
ドゥラメンテ 11頭
ハーツクライ 9頭
レイデオロ 9頭
ブリックスアンドモルタル 8頭
モーリス 8頭
キズナ 6頭
キタサンブラック 5頭
ルーラーシップ 5頭
エピファネイア 4頭
サトノダイヤモンド 4頭
スワーヴリチャード 4頭
ロードカナロア 4頭
Frankel 3頭
オルフェーヴル 3頭
ハービンジャー 3頭
リアルスティール 3頭
【生産者別頭数ランキング】
ノーザンファーム 78頭
社台ファーム 5頭
社台C白老ファーム 4頭
下河辺牧場 3頭
【調教師別頭数ランキング】
木村哲也 7頭
矢作芳人 6頭
手塚貴久 5頭
須貝尚介 5頭
中内田充正 5頭
堀宣行 4頭
宮田敬介 3頭
高野友和 3頭
国枝栄 3頭
友道康夫 3頭
調教師別頭数ランキングはJRA所属馬として登録済みの馬のみを対象としておりますのでご了承ください。
種牡馬別頭数ランキングはドゥラメンテが単独トップ。キングカメハメハ・ディープインパクトの直仔が完全にいなくなったこの世代のPOGでかなりの支持を集めた点は高く評価するべきでしょう。評判の良い産駒はもちろん、現時点ではあまり話題になっていない、手頃な価格で落札できそうな産駒にも注目しておいた方が良いかもしれません。
あとはブリックスアンドモルタルやレイデオロといった新種牡馬の産駒が人気を集めている点も見逃せないポイント。2023年の日本ダービーを制したタスティエーラはサトノクラウンの初年度産駒でしたし、キャリアの浅い種牡馬に対する期待が高まっているように思います。
生産者別頭数ランキングはノーザンファームの“一強”状態でした。種牡馬の勢力図がどう変わっていくか不透明な分、実績あるブリーダー=ノーザンファームの生産馬が例年以上に信頼されている印象。ここまで人気が集中するなら、過小評価されている他のブリーダーを狙ってみるのもひとつの手ですね。
調教師別頭数ランキングで首位に立っていたのは木村哲也調教師。第1回で指摘した通り、POG期間の序盤~中盤における勝ち馬率の高さは頭ひとつ抜けていますから、管理予定馬はひと通りチェックしておいた方が良いかもしれません。あとは須貝尚介調教師・手塚貴久調教師・中内田充正調教師・堀宣行調教師・矢作芳人調教師あたりも、重視しているプレイヤーはかなり多い模様。意外な管理予定馬が争奪戦になる可能性もありますので、注意しましょう。
注目POG馬ランキング(「2023/06/07 00:00更新」分)でトップに君臨しているアイムユアーズの2021は、矢作芳人調教師が管理するノーザンファーム生産馬で、レイデオロ産駒の牡馬。スペシャルワールドで獲得に成功したのはヤクルト一筋さんですが、落札価格は1億0100万PPと、案外お手頃な水準でした。他のワールドも似たような状況でしたから、たとえ予算が心許なくても、入札に参加するだけの価値はあると思います。
注目POG馬ランキング(「2023/06/07 00:00更新」分)2位はフォースタークルックの2021、3位はドバイマジェスティの2021です。この2頭はいずれもノーザンファーム生産馬のドゥラメンテ産駒。スペシャルワールドにおいては、どちらも昨年のスペシャルワールドで2位となった実績のある四白流星タイテエムさんが落札していました。どのワールドもアイムユアーズの2021よりハイレベルな入札合戦となっていましたし、ノーザンファーム生産馬やドゥラメンテ産駒の注目度を考えても、おそらく実質的な“一番人気”はこの2頭のどちらか。これから獲得を目指すのであれば、入札の金額やタイミングをひと工夫するべきでしょう。
【注目POG馬ランキング(「2023/06/07 00:00更新」分)トップ100】
●順位 馬(性/種牡馬/生産者/調教師)
●1位 アイムユアーズの2021(牡/レイデオロ/ノーザンファーム/矢作芳人)
●2位 フォースタークルックの2021(牡/ドゥラメンテ/ノーザンファーム/矢作芳人)
●3位 ドバイマジェスティの2021(牡/ドゥラメンテ/ノーザンファーム/※未登録)
●4位 サロミナの2021(牝/ハーツクライ/ノーザンファーム/池添学)
●5位 リスグラシューの2021(牡/モーリス/ノーザンファーム/※未登録)
●6位 ヤンキーローズの2021(牡/ロードカナロア/ノーザンファーム/※未登録)
●7位 ルールブリタニアの2021(牡/レイデオロ/ノーザンファーム/中内田充正)
●8位 イスパニダの2021(牝/ドゥラメンテ/ノーザンファーム/杉山晴紀)
●9位 アエロリットの2021(牡/ドゥラメンテ/ノーザンファーム/菊沢隆徳)
●10位 チェッキーノの2021(牝/ハービンジャー/ノーザンファーム/木村哲也)
●11位 シャトーブランシュの2021(牝/キズナ/ノーザンファーム/木村哲也)
●12位 ラルケットの2021(牡/レイデオロ/ノーザンファーム/須貝尚介)
●13位 マニーズオンシャーロットの2021(牝/キタサンブラック/ノーザンファーム/武幸四郎)
●14位 モシーンの2021(牡/モーリス/ノーザンファーム/堀宣行)
●15位 サンクボヌールの2021(牡/キタサンブラック/社台C白老ファーム/須貝尚介)
●16位 コーステッドの2021(牝/ダイワメジャー/ノーザンファーム/手塚貴久)
●17位 ブルーメンブラットの2021(牡/モーリス/ノーザンファーム/武井亮)
●18位 ヒストリックスターの2021(牡/レイデオロ/ノーザンファーム/友道康夫)
●19位 セルキスの2021(牡/キズナ/ノーザンファーム/※未登録)
●20位 ウェイヴェルアベニューの2021(牝/キズナ/ノーザンファーム/中内田充正)
●21位 サンブルエミューズの2021(牝/エピファネイア/ノーザンファーム/※未登録)
●22位 ジンジャーパンチの2021(牡/スワーヴリチャード/ノーザンファーム/萩原清)
●23位 ロカの2021(牝/スワーヴリチャード/ノーザンファーム/木村哲也)
●24位 アウェイクの2021(牡/エピファネイア/ノーザンファーム/池江泰寿)
●25位 ブリッツフィナーレの2021(牝/ブリックスアンドモルタル/下河辺牧場/中内田充正)
●26位 プリンセスロックの2021(牡/モーリス/ノーザンファーム/斉藤崇史)
●27位 テラノヴァの2021(牝/ブリックスアンドモルタル/社台ファーム/須貝尚介)
●28位 スキアの2021(牡/キズナ/社台ファーム/※未登録)
●29位 ソウルスターリングの2021(牝/ブリックスアンドモルタル/社台ファーム/※未登録)
●30位 エスキモーキセスの2021(牡/ハーツクライ/社台ファーム/※未登録)
●31位 フォエヴァーダーリングの2021(牡/リアルスティール/ノーザンファーム/矢作芳人)
●32位 ローザブランカの2021(牡/ルーラーシップ/ノーザンファーム/高野友和)
●33位 ユードントラヴミーの2021(牡/オルフェーヴル/ノーザンファーム/杉山晴紀)
●34位 ブチコの2021(牡/モーリス/ノーザンファーム/須貝尚介)
●35位 コールバックの2021(牡/Frankel/ノーザンファーム/※未登録)
●36位 ラヴズオンリーミーの2021(牡/ハーツクライ/ノーザンファーム/矢作芳人)
●37位 シーズアタイガーの2021(牝/ハーツクライ/ノーザンファーム/※未登録)
●38位 ジェンティルドンナの2021(牝/モーリス/ノーザンファーム/※未登録)
●39位 ルミナスパレードの2021(牡/リアルインパクト/ノーザンファーム/木村哲也)
●40位 ハルーワスウィートの2021(牝/スワーヴリチャード/ノーザンファーム/友道康夫)
●41位 インクルードベティの2021(牡/ハーツクライ/ノーザンファーム/※未登録)
●42位 カーミングエフェクトの2021(牡/Frankel/ノーザンファーム/木村哲也)
●43位 メチャコルタの2021(牝/モーリス/ノーザンファーム/宮田敬介)
●44位 セリエンホルデの2021(牝/ドゥラメンテ/ノーザンファーム/※未登録)
●45位 デグラーティアの2021(牡/ルーラーシップ/ノーザンファーム/田村康仁)
●46位 キューティゴールドの2021(牡/サトノダイヤモンド/社台C白老ファーム/※未登録)
●47位 アッフィラートの2021(牡/ブリックスアンドモルタル/社台C白老ファーム/堀宣行)
●48位 ウィキッドリーパーフェクトの2021(牡/サトノダイヤモンド/ノーザンファーム/池江泰寿)
●49位 リッスンの2021(牡/ドゥラメンテ/ノーザンファーム/※未登録)
●50位 サマーハの2021(牡/リアルスティール/ノーザンファーム/※未登録)
●51位 カンデラの2021(牡/レイデオロ/ノーザンファーム/手塚貴久)
●52位 Starlet's Sisterの2021(牡/Siyouni/※外国産馬/矢作芳人)
●53位 Waldjagdの2021(牡/Kingman/※外国産馬/矢作芳人)
●54位 Stacelitaの2021(牡/Frankel/※外国産馬/※未登録)
●55位 マウレアの2021(牡/レイデオロ/下河辺牧場/手塚貴久)
●56位 アールブリュットの2021(牡/ドゥラメンテ/ノーザンファーム/※未登録)
●57位 シーウィルレインの2021(牝/サトノダイヤモンド/ノーザンファーム/※未登録)
●58位 ナスノシベリウスの2021(牡/ブリックスアンドモルタル/ハシモトフアーム/武井亮)
●59位 シャンブルドットの2021(牝/スワーヴリチャード/ノーザンファーム/庄野靖志)
●60位 ユキチャンの2021(牡/ヘニーヒューズ/ノーザンファーム/宮田敬介)
●61位 トータルヒートの2021(牡/ハーツクライ/社台C白老ファーム/※未登録)
●62位 キングスローズの2021(牝/リアルスティール/ノーザンファーム/高野友和)
●63位 Impedeの2021(牡/Kingman/※外国産馬/※未登録)
●64位 ロベルタの2021(牡/ドゥラメンテ/ノーザンファーム/寺島良)
●65位 シャルマントの2021(牡/レイデオロ/ノーザンファーム/※未登録)
●66位 シュガーハートの2021(牡/ドゥラメンテ/ヤナガワ牧場/※未登録)
●67位 アロマドゥルセの2021(牡/ハービンジャー/ノーザンファーム/渡辺薫彦)
●68位 レキシールーの2021(牡/ロードカナロア/ケイアイファーム/中内田充正)
●69位 リビアーモの2021(牝/エピファネイア/ノーザンファーム/木村哲也)
●70位 クロノロジストの2021(牝/レイデオロ/ノーザンファーム/※未登録)
●71位 ミスエーニョの2021(牝/ドゥラメンテ/ノーザンファーム/※未登録)
●72位 グリューネワルトの2021(牝/ロードカナロア/ノーザンファーム/※未登録)
●73位 ボンジュールココロの2021(牡/ルーラーシップ/ノーザンファーム/高柳大輔)
●74位 クリスプの2021(牡/ハーツクライ/ノーザンファーム/※未登録)
●75位 アパパネの2021(牡/ブラックタイド/ノーザンファーム/※未登録)
●76位 ウイングステルスの2021(牡/サトノダイヤモンド/ノーザンファーム/※未登録)
●77位 レッドラヴィータの2021(牡/ブリックスアンドモルタル/ノーザンファーム/手塚貴久)
●78位 ベルダムの2021(牡/エピファネイア/ノーザンファーム/音無秀孝)
●79位 アニメイトバイオの2021(牝/ブリックスアンドモルタル/ノーザンファーム/須貝尚介)
●80位 サトノジュピターの2021(牝/ブリックスアンドモルタル/ノーザンファーム/堀宣行)
●81位 チェリーコレクトの2021(牝/キズナ/ノーザンファーム/中内田充正)
●82位 デルフィニア2の2021(牝/No Nay Never/ノーザンファーム/国枝栄)
●83位 コスモアクセスの2021(牡/キタサンブラック/コスモヴューファーム/畠山吉宏)
●84位 スピードリッパーの2021(牡/ルーラーシップ/ノーザンファーム/堀宣行)
●85位 カリンバの2021(牝/ハービンジャー/ノーザンファーム/松下武士)
●86位 ヴィルジニアの2021(牡/キタサンブラック/ノーザンファーム/※未登録)
●87位 リュズキナの2021(牝/ハーツクライ/ノーザンファーム/国枝栄)
●88位 シェリールの2021(牡/ルーラーシップ/ノーザンファーム/稲垣幸雄)
●89位 シャンパンルームの2021(牡/キズナ/ノーザンファーム/武幸四郎)
●90位 リリサイドの2021(牡/ハーツクライ/ノーザンファーム/※未登録)
●91位 タイキオードリーの2021(牡/キタサンブラック/下河辺牧場/清水久詞)
●92位 マイミスリリーの2021(牝/ロードカナロア/レイクヴィラファーム/手塚貴久)
●93位 ハニージェイドの2021(牝/ダイワメジャー/追分ファーム/斎藤誠)
●94位 ミセスワタナベの2021(牡/オルフェーヴル/ノーザンファーム/木村哲也)
●95位 リンフォルツァンドの2021(牡/レイデオロ/ノーザンファーム/松下武士)
●96位 ケイティーズハートの2021(牝/サトノクラウン/ノーザンファーム/※未登録)
●97位 ヴァシリカの2021(牡/ドゥラメンテ/ノーザンファーム/国枝栄)
●98位 キャレモンショコラの2021(牝/ミッキーアイル/ノーザンファーム/宮田敬介)
●99位 オータムフラワーの2021(牡/オルフェーヴル/社台ファーム/友道康夫)
●100位 アドマイヤローザの2021(牡/モーリス/ノーザンファーム/高野友和)
■執筆者プロフィール
伊吹 雅也(いぶき・まさや)
埼玉県桶川市在住のフリーライター、競馬評論家。JRAホームページ内『今週の注目レース』において「データ分析」のコーナーを担当しているほか、JRAのレーシングプログラム、TCKホームページ、グリーンチャンネル、ニコニコチャンネルなどさまざまなメディアを舞台に活動している。近著に『ウルトラ回収率 2023-2024』(ガイドワークス)、『WIN5攻略全書 回収率150%超! "ミスターWIN5"のマインドセット』(ガイドワークス)など。2023年03月28日には最新刊『血統&ジョッキー偏差値2023-2024 ~儲かる種牡馬・騎手ランキング~』(ガイドワークス)をリリース。 |
|
[もっと見る]
【香港チャンピオンズデー2023】レース展望①チェアマンズスプリントプライズ
閲覧 1,083ビュー コメント 0 ナイス 2
ウマニティ会員の皆さん、お久しぶりです。甘粕代三です。ドバイワールドカップデー以来、1カ月ぶりのお目見えです。国際G1 3競走が同日に行われる春の祭典、チャンピオンズデーが30日(日)に迫りました。香港では今年1月から入境にワクチン接種証明も不要となり、入境後の行動制限も撤廃されました。ワクチンを一度も接種していない筆者は昨年12月香港国際競走の際に入境できず涙を飲みました。接種証明不要となってすぐに香港を3年ぶりに再訪、その後もドバイ遠征前に香港に立ち寄って香港ダービーを観戦していますが、国際競走は2019年のこのチャンピオンズデー以来。シャティン競馬場の雰囲気は今年既に訪れた2回とは全く違った盛り上がりを感じ、自分自身も胸の高鳴りを覚えざるを得ません。
さて、今年のチャンピオンズデーには日本から1頭がチェアマンズスプリントプライズ(シャティン芝1200m)、3頭がクイーンエリザベス2世カップ(同2000m)が名乗りを上げました。チャンピオンズデーは日本のG1戦線との兼ね合いもあって日本馬の挑戦は多くはなかったのですが、コロナ禍が明けた今年は質的に大きく落ち込でしまいました。クイーンエリザベス2世カップは日本中距離馬の金城湯池といってもいいレースで、この10年で3勝、一昨年は4着までを独占しています。しかし、今年はどうもそうはいかない、と見ています。その原因は先月のドバイワールドカップデーです。今年は史上最多の27頭がドバイに遠征し、中長距離馬のトップが出払ってしまったのです。賞金水準でドバイをはるかに上回るサウジカップデーからドバイという流れが定着し、日本のA級馬の多くがその路線を取るようになりました。サウジ、ドバイから香港転戦のローテーションは余りにも厳しく、その結果、クイーンエリザベス2世カップに出走するA級日本の中長距離馬が少なくなった、ということです。前置きはこのくらいにして、日本で発売される2レースの展望に移りましょう。
チェアマンズスプリントプライズ
昨年8月の3歳1勝クラスから4連勝で阪急杯を勝ったアグリが唯一頭、ここに名乗りを上げました。日本短距離界の新星誕生を期待して、前走の高松宮記念では香港のネットメディアの予想で本命に推したのですが、見せ場は作ってくれたものの7着と敗れてしまいました。鞍上の横山和生は不良馬場を敗因に挙げているように自分の競馬が出来なかったことは間違いありません。捲土重来とばかりに安田隆行調教師はここを狙ってきました。安田調教師はあのロードカナロアで日本勢にとっては未来永劫開けることのできないと思われていたほど厚かった香港スプリントの壁を初めて破り、翌年もロードカナロアで連覇。そればかりか2020年ダノンスマッシュで香港スプリント3勝をあげているのです。シャティン1200mを知り尽くし、これだけ大きな実績を残している安田調教師のこの選択を無視することはできません。
しかし、新旧交代期を迎えている香港スプリンター陣のレベルは相変わらず、いや例年以上に高いといても過言ではありません。このレースを連覇しているウェリントンが新記録となる3連覇を狙えば、4歳の新鋭ラッキースワイネスはここでウェリントンを破って香港短距離馬王の奪取を狙います。王者ウェリントンは昨年の香港スプリントで前哨戦を勝った上り馬ラッキースワイネスを一蹴したものの、今年に入ってからの4戦はラッキースワイネスがウェリントンを圧倒。香港短距離王を既に奪取、ここで厳かに戴冠、と見ています。前走が香港では珍しい単勝1.2倍、今回はこれを下回る大本命となることは間違いありませんが、ここは不動の中心、どころではなく、不動の勝ち馬と見て馬券を組み立てざるを得ないでしょう。香港には日本にない4連単がありますから、私はこれで勝負です。日本ではアグリが人気を集める分、ラッキーの人気は香港より下がるでしょうから、3連単でも悪くないはずです。
相手1番手はウェリントン、これとほぼ並ぶのが我らがアグリ。残る香港馬ではドバイ帰り、アルクオーツスプリント4着のサイトサクセス、前走で復活の兆しを見せ、香港に帰ってきた雷神ことJ.モレイラ騎乗で前進見込めるマスターエイト、香港短距離の善戦マンクーリエワンダーまでを4連単のヒモ金曜段階では見ています。以上にどう優劣をつけて点数を絞り込めるのか――レース直前までの大きな宿題です。
最後に香港から日本に関する特ダネを一つ。大本命のラッキースワイネスですが、香港ではこのレースの後の安田記念挑戦が伝えられました。日本にも伝わっているかもしれません。シャティン競馬場で文家良調教師に確認したところ、「オーナーが日本に遊びに行きたいと伝えてきたので仕方なくエントリーした。1400mまでしか走ったことのない馬が勝負になるとは欠片思っていない。オーナーを説得して安田にはいかないようにする」とのことでした。
★”日本と香港を股にかけて活躍する”海外プロ甘粕代三プロが、海外馬券販売レースの香港チャンピオンズデー2レースの予想提供をいたします。当日の予想にご期待ください。
甘粕代三(あまかす・だいぞう)プロフィール
1960年、東京生まれ。高校時代から競馬にのめりこむ。
早稲田大学第一文学部卒。在学中に中国政府官費留学生。卒業後、東京新聞記者、テレビ朝日記者、同ディレクター、同台北開設支局長などを務める。
中国留学中に香港競馬を初観戦、94年ミッドナイトベットの香港カップ制覇に立ち会ったことから香港の競馬にものめりこみ、2010年、売文業に転じた後は軸足を日本から香港に。
香港の競馬新聞『新報馬簿』『新報馬経』に執筆、テレビの競馬番組にも出演。現在、香港アップルデイリー日本特約記者、北京市馬術運動協会高級顧問を務める。 |
|
[もっと見る]
伊吹雅也のPOG分析室 (2022) ~第6回デビュー前の有力馬~
閲覧 6,430ビュー コメント 0 ナイス 5
[もっと見る]
【香港国際競走2021】レース展望②<香港スプリント>スプリンター3騎による強力な布陣で臨む日本勢が有利な局面!
閲覧 1,396ビュー コメント 0 ナイス 0
■香港スプリント(シャティン芝1200m)
香港への入境は目下、香港IDか就労ビザ所持者に限られています。香港到着後、日本勢がどのような状態にあるのか、自分の目で確認することはできません。ですので、日本勢は後回しにして、香港勢の人物月旦ならぬ馬物月旦から参ります。日本勢に関しては香港に残置している陸軍中野学校ならぬ甘粕学校の工作員、そして香港競馬記者から極秘情報を収集しる最中です。11日(土)夜には公開いたします予想とコメント欄にしっかりと反映させます。ご期待下さい。
米誌『タイム』の表紙を初めて飾ったサイレントウィットネス、セイクリッドキングダム、ラッキーナイン、香港における吾が最良の馬友、楊毅さんの愛馬だったエアロヴェロシティ、ビートザクロックなど歴代王者に比肩する可能性を秘めているのがラッキーパッチ(セ5・K.ルイ厩舎)です。地元騎手出身で調教師に転じてから長く雌伏の時を余儀なくされていたルイ調教師は昨シーズン、4歳クラシック三冠馬のゴールデンシックスティを輩出、遂に復讐の狼煙をあげました。トレーナースタンドで行きかう度、満面の笑顔で迎えてくれるばかりか、自分の拙い広東語の質問にゆっくりと答えてくれ、時には不得手の北京語で答えてくれる人柄には頭が下がるばかり。長年の苦労が漸く報われたことは他人事とは思えません。
そのラッキーパッチは今シーズン既に4戦。使われるたびに良化を示し、プレミアボウル(10/17・シャティン芝1200m・G2)、前哨戦のジョッキークラブ・スプリント(11/21・シャティン芝1200m・G2)の2戦を圧勝。いずれも不利この上ない外枠から中団につけ直線で差し切った勝ちっぷりは着差以上の実力差を示しています。この新星が前述歴代スプリント王への階段を上り詰めることが果たして出来るのか? 試金石の一戦です。
ラッキーパッチに続く、否! これとトップ2を構成するのがウェリントン(セ5・R.ギブソン厩舎)。ウェリントンは昨シーズン総決算のチェアマンズスプリントプライズ(4/25・シャティン芝1200m・G1)を制覇、遂にG1王者の頂に登りました。
今シーズンは既に4戦を消化したウェリントンは、3馬身差の7着と負けた前走は本番を狙った余裕残しの調整にすぎません。一戦叩いて状態は更に上昇、千秋楽で横綱の力を見せつけんと逆転を虎視眈々と狙っています。
このトップ2に迫るのがクーリエワンダー(セ4・J.サイズ厩舎)。香港競馬史上最多勝利数を打ち立て、「千勝爺」を謳われた香港トップトレーナ、J.ムーアに代わって現役トップにたったのが同じくオーストラリア出身のJ.サイズ調教師。サイズ師は短距離重視、多くのスプリンターを輩出してきました。クーリエワンダーは昨シーズン、クラス4で香港デビュー、シャティン芝1200mを5連勝してシーズン最終戦のシャティンヴァーズ(5/23・G3)で重賞ウィナーとなりました。今シーズンは5連勝の舞台、そして本番同様のシャティン芝1200mを2戦叩かれてともに5着に敗れながら、着差は3馬身1/4、2馬身1/4と詰めてきています。サイズ師に香港の雷神、J.モレイラは鉄壁のコンビ、現在はトップ2との懸隔は僅か、本番までの調整で頂きに並び、これを凌ぐ可能性を秘めています。
ナブーアタック(セ5・D.ヘイズ厩舎)は昨シーズン末、クラス2の高条件デビュー以来、僅か5戦ながら前走の前哨戦ではラッキーパッチに3/4馬身差に迫り、大気の片鱗を披露。最大の惑星と言えます。
最も親密な香港トレーナー、そして香港レジェンドのA.クルーズ師のコンピューターパッチ(セ5・A.クルーズ厩舎)は短距離重賞の常連。1年以上勝利から遠ざかっていますが、今シーズンは3戦消化、初戦を1000mと適距離から縮めて覚醒するのが香港レジェンドの流儀。これが奏功し叩き2戦目から着差を着実に詰めて本番へしっかりと照準を合わせてきました。上記地元4強とは力の差があることは否めないものの、3連単のヒモ、特に香港の4連単のヒモには妙味を感じています。中国語では大穴を「爆冷」と表現しますが、コンピューターが算盤五玉付き日の丸コンピューター通りに入着すれば、それこそ大爆冷!懐具合は超加熱することは請け合いです。
香港は聞かずとしれた世界最強のスプリント王国。地元香港馬と香港スプリンターの供給元であるオーストラリア、ニュージーランド勢の独壇場でありました。その牙城を切り崩せたのは、あのロードカナロア、2013年のことでした。その後、ロードカナロアが連覇の偉業を達成し、昨年はダノンスマッシュ(牡6・安田隆行厩舎)と7年ぶりにシャティンの地に日の丸を掲げました。ダノンスマッシュはロードカナロアに並ばんと今年も香港に向かいました。これをラストランと定めたダノンスマッシュ、この一戦が来年の種付け料を大幅にアップさせことができます。
マイルチャンピオンシップのグランアレグリア、ジャパンカップのコントレイルと2週続けて有終の美に酔い、自分はその裏腹で財布と肝を冷やしました。生産者の横綱・大関のノーザンファームとノースヒルズにできたことがなぜ出来ぬ、ともう一方の老舗ケイアイファームは燃えに燃えていることでしょう。ケイアイファームはロードカナロアの故郷でもあるのです。
今年も日本勢は極めて優勢な局面にあります。日本スプリンター3騎がこれまでにない強力な布陣であること、そして地元香港勢とタッグを組んで立ちはだかってきた南半球勢がコロナ禍によって飛来しなかったこと、更に世界最強を誇った香港勢力がいままさに世代交代を迎えていることがその理由です。
シャティン芝1200mは枠順が大きくモノを言います。シャティン競馬場パドックで行われる演出抜群の枠順抽選会、取材できないのが残念でなりませんが、その結果と香港に残置してある草から報告が来る日本勢の状態を加味して香港ヴァーズ同様、自信満々の予想を11日(土)夜、公開の甘粕代三予想にご期待下さい。
★”日本と香港を股にかけて活躍する”海外プロ甘粕代三プロが、海外馬券販売レースの香港国際競走4レースの予想提供をいたします。当日の予想にご期待ください。
甘粕代三(あまかす・だいぞう)プロフィール
1960年、東京生まれ。高校時代から競馬にのめりこむ。
早稲田大学第一文学部卒。在学中に中国政府官費留学生。卒業後、東京新聞記者、テレビ朝日記者、同ディレクター、同台北開設支局長などを務める。
中国留学中に香港競馬を初観戦、94年ミッドナイトベットの香港カップ制覇に立ち会ったことから香港の競馬にものめりこみ、2010年、売文業に転じた後は軸足を日本から香港に。
香港の競馬新聞『新報馬簿』『新報馬経』に執筆、テレビの競馬番組にも出演。現在、香港アップルデイリー日本特約記者、北京市馬術運動協会高級顧問を務める。 |
|
[もっと見る]
【TAROの競馬研究室】新潟記念展望/近くの枠の馬が一緒に走りやすいレース
閲覧 2,234ビュー コメント 0 ナイス 2
先週行われたキーンランドカップは、3歳牝馬レイハリアが好位から抜け出し重賞連勝。初の古馬との対戦だったが、相変わらずの立ち回りの上手さを見せつけた。
父はロードカナロア。ロードカナロア産駒は馬群を苦にしない器用なタイプが多く、アーモンドアイやダノンスマッシュといった一流馬にも共通する特徴だ。レイハリアもスタートが上手く自在に立ち回れるのは、多頭数のスプリント戦で大きな武器になる。
個人的には最終的に本命にした◎カイザーメランジェが粘ってくれれば最高だったのだが、思いのほか先頭に立っていたメイケイエールが早めにバテてしまったのが誤算だった。
もっとも、決してメンバーレベルは高くなく、キーンランドカップの組がスプリンターズSでも通用するかというと微妙なところ。どうやらレイハリアは出走しない公算が高いようだが、その他の敗戦組も、本番では苦戦を強いられるかもしれない。
~近くの枠の馬がまとめて来て波乱になりやすい
さて、今週末は新潟記念。いよいよ夏のローカル開催最終週となる。このレースにはもう何年も前からずっと指摘し続けている、変わらない特徴がある。それは、
「近くの枠の馬がまとめて来る」
ということである。過去の上位3頭を馬番で並べると…
2013年 4番→9番→8番
2014年 13番→16番→15番
2015年 3番→6番→4番
2016年 17番→14番→12番
2017年 1番→11番→7番
2018年 1番→5番→4番
2019年 7番→5番→6番
2020年 17番→5番→16番
全体に近くの枠の馬が一緒に来ているのがよくわかると思う。特に2015年は3→6→4で3連単は38万馬券、2019年は7→5→6で3連単10万馬券と穴馬券もしばしば発生している。
これは新潟外回りの特徴で、とりわけ2000mの場合は隊列次第で内有利にも外有利にもなり得る。内の馬が外に張り出してくれば、外枠の馬は大きく外に振られて絶望的なロスを被るし、逆に外の馬が馬場の良いところをスムーズに通ると、内の馬は終始馬場の悪いところを通らされてしまう。
これは新潟記念のみならず同コースの新潟大賞典などでも見られる特徴で、少々古い話だが2004年の同レースでは外ラチ沿いしか伸びない今の直線競馬のようなレースになり、16番→15番→13番の決着。当時も今もコースの傾向は変わらないというわけだ。
今週末の新潟芝の馬場状態がどのようになるかはわからないが、馬券を買う際は近くの枠の馬をヒモに入れる…といった工夫をすると良いかもしれない。
~新潟記念の注目馬
さて、ココではいつも通り週末の重賞の注目馬を一頭挙げておきたい。今回は新潟記念。
・ヤシャマル(菅原明騎手)
初の重賞挑戦となった前走のエプソムカップは、出負け気味のところから仕掛けてしまい、直線は伸び切れず。細かい出し入れをできる騎手でなかったことから荒っぽいレースになってしまったが、それでも0秒7差の9着ならまずまずといえるだろう。距離延長はプラスで、今回は菅原明騎手にスイッチされるのもプラス材料。もう少しゆったり運べれば、持ち味のしぶとい末脚が生きるはずだ。
※新潟記念の最終本命馬は、ブログ『TAROの競馬』にて無料公開予定です。
○TARO プロフィール
大川慶次郎さんの予想に魅了され、中学2年の時にネット掲示板で予想スタート。2004年にブログ『TAROの競馬』スタート。2009年9月『競馬最強の法則』で連載開始。2012年より開始した有料メルマガ『回収率向上のための競馬ノート』はまぐまぐ競馬部門で読者数第1位。著書に『ラッキーゲート』
(KKベストセラーズ)、『回収率を上げる競馬脳の作り方』『回収率が飛躍的に上がる3つの馬券メソッド』(いずれも扶桑社新書)、『万馬券の教科書 -新時代のサバイバル穴予想術』(ガイドワークス)。
|
|
[もっと見る]