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■香港スプリント(シャティン芝1200m)
香港への入境は目下、香港IDか就労ビザ所持者に限られています。香港到着後、日本勢がどのような状態にあるのか、自分の目で確認することはできません。ですので、日本勢は後回しにして、香港勢の人物月旦ならぬ馬物月旦から参ります。日本勢に関しては香港に残置している陸軍中野学校ならぬ甘粕学校の工作員、そして香港競馬記者から極秘情報を収集しる最中です。11日(土)夜には公開いたします予想とコメント欄にしっかりと反映させます。ご期待下さい。
米誌『タイム』の表紙を初めて飾ったサイレントウィットネス、セイクリッドキングダム、ラッキーナイン、香港における吾が最良の馬友、楊毅さんの愛馬だったエアロヴェロシティ、ビートザクロックなど歴代王者に比肩する可能性を秘めているのがラッキーパッチ(セ5・K.ルイ厩舎)です。地元騎手出身で調教師に転じてから長く雌伏の時を余儀なくされていたルイ調教師は昨シーズン、4歳クラシック三冠馬のゴールデンシックスティを輩出、遂に復讐の狼煙をあげました。トレーナースタンドで行きかう度、満面の笑顔で迎えてくれるばかりか、自分の拙い広東語の質問にゆっくりと答えてくれ、時には不得手の北京語で答えてくれる人柄には頭が下がるばかり。長年の苦労が漸く報われたことは他人事とは思えません。
そのラッキーパッチは今シーズン既に4戦。使われるたびに良化を示し、プレミアボウル(10/17・シャティン芝1200m・G2)、前哨戦のジョッキークラブ・スプリント(11/21・シャティン芝1200m・G2)の2戦を圧勝。いずれも不利この上ない外枠から中団につけ直線で差し切った勝ちっぷりは着差以上の実力差を示しています。この新星が前述歴代スプリント王への階段を上り詰めることが果たして出来るのか? 試金石の一戦です。
ラッキーパッチに続く、否! これとトップ2を構成するのがウェリントン(セ5・R.ギブソン厩舎)。ウェリントンは昨シーズン総決算のチェアマンズスプリントプライズ(4/25・シャティン芝1200m・G1)を制覇、遂にG1王者の頂に登りました。
今シーズンは既に4戦を消化したウェリントンは、3馬身差の7着と負けた前走は本番を狙った余裕残しの調整にすぎません。一戦叩いて状態は更に上昇、千秋楽で横綱の力を見せつけんと逆転を虎視眈々と狙っています。
このトップ2に迫るのがクーリエワンダー(セ4・J.サイズ厩舎)。香港競馬史上最多勝利数を打ち立て、「千勝爺」を謳われた香港トップトレーナ、J.ムーアに代わって現役トップにたったのが同じくオーストラリア出身のJ.サイズ調教師。サイズ師は短距離重視、多くのスプリンターを輩出してきました。クーリエワンダーは昨シーズン、クラス4で香港デビュー、シャティン芝1200mを5連勝してシーズン最終戦のシャティンヴァーズ(5/23・G3)で重賞ウィナーとなりました。今シーズンは5連勝の舞台、そして本番同様のシャティン芝1200mを2戦叩かれてともに5着に敗れながら、着差は3馬身1/4、2馬身1/4と詰めてきています。サイズ師に香港の雷神、J.モレイラは鉄壁のコンビ、現在はトップ2との懸隔は僅か、本番までの調整で頂きに並び、これを凌ぐ可能性を秘めています。
ナブーアタック(セ5・D.ヘイズ厩舎)は昨シーズン末、クラス2の高条件デビュー以来、僅か5戦ながら前走の前哨戦ではラッキーパッチに3/4馬身差に迫り、大気の片鱗を披露。最大の惑星と言えます。
最も親密な香港トレーナー、そして香港レジェンドのA.クルーズ師のコンピューターパッチ(セ5・A.クルーズ厩舎)は短距離重賞の常連。1年以上勝利から遠ざかっていますが、今シーズンは3戦消化、初戦を1000mと適距離から縮めて覚醒するのが香港レジェンドの流儀。これが奏功し叩き2戦目から着差を着実に詰めて本番へしっかりと照準を合わせてきました。上記地元4強とは力の差があることは否めないものの、3連単のヒモ、特に香港の4連単のヒモには妙味を感じています。中国語では大穴を「爆冷」と表現しますが、コンピューターが算盤五玉付き日の丸コンピューター通りに入着すれば、それこそ大爆冷!懐具合は超加熱することは請け合いです。
香港は聞かずとしれた世界最強のスプリント王国。地元香港馬と香港スプリンターの供給元であるオーストラリア、ニュージーランド勢の独壇場でありました。その牙城を切り崩せたのは、あのロードカナロア、2013年のことでした。その後、ロードカナロアが連覇の偉業を達成し、昨年はダノンスマッシュ(牡6・安田隆行厩舎)と7年ぶりにシャティンの地に日の丸を掲げました。ダノンスマッシュはロードカナロアに並ばんと今年も香港に向かいました。これをラストランと定めたダノンスマッシュ、この一戦が来年の種付け料を大幅にアップさせことができます。
マイルチャンピオンシップのグランアレグリア、ジャパンカップのコントレイルと2週続けて有終の美に酔い、自分はその裏腹で財布と肝を冷やしました。生産者の横綱・大関のノーザンファームとノースヒルズにできたことがなぜ出来ぬ、ともう一方の老舗ケイアイファームは燃えに燃えていることでしょう。ケイアイファームはロードカナロアの故郷でもあるのです。
今年も日本勢は極めて優勢な局面にあります。日本スプリンター3騎がこれまでにない強力な布陣であること、そして地元香港勢とタッグを組んで立ちはだかってきた南半球勢がコロナ禍によって飛来しなかったこと、更に世界最強を誇った香港勢力がいままさに世代交代を迎えていることがその理由です。
シャティン芝1200mは枠順が大きくモノを言います。シャティン競馬場パドックで行われる演出抜群の枠順抽選会、取材できないのが残念でなりませんが、その結果と香港に残置してある草から報告が来る日本勢の状態を加味して香港ヴァーズ同様、自信満々の予想を11日(土)夜、公開の甘粕代三予想にご期待下さい。
★”日本と香港を股にかけて活躍する”海外プロ甘粕代三プロが、海外馬券販売レースの香港国際競走4レースの予想提供をいたします。当日の予想にご期待ください。
甘粕代三(あまかす・だいぞう)プロフィール
1960年、東京生まれ。高校時代から競馬にのめりこむ。
早稲田大学第一文学部卒。在学中に中国政府官費留学生。卒業後、東京新聞記者、テレビ朝日記者、同ディレクター、同台北開設支局長などを務める。
中国留学中に香港競馬を初観戦、94年ミッドナイトベットの香港カップ制覇に立ち会ったことから香港の競馬にものめりこみ、2010年、売文業に転じた後は軸足を日本から香港に。
香港の競馬新聞『新報馬簿』『新報馬経』に執筆、テレビの競馬番組にも出演。現在、香港アップルデイリー日本特約記者、北京市馬術運動協会高級顧問を務める。
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