蒼馬久一郎
スガダイ
E-TOMO
第47回スプリンターズS(29日、中山11R、GI、3歳上オープン国際(指)、定量、芝・外1200メートル、1着本賞金9500万円=出走16頭)岩田康誠騎乗で1番人気のロードカナロアが中団追走から直線で伸びて、GI5連勝を決めた。昨年に続く優勝で、1993年・94年のサクラバクシンオー以来19年ぶり2頭目のスプリンターズS連覇を成し遂げた。タイム1分7秒2(良)。2着はハクサンムーン、3着はマヤノリュウジンが入った。 これが絶対王者の底力だ。ロードカナロアが最後の坂を一気に駆け上がる。逃げ粘るハクサンムーンを捕らえ、芝短距離GI史上最多タイの5勝目のゴールに飛び込んだ。 「きょう負けたら引退が決まっていたので、僕自身、プレッシャーを感じていたし、勝ててよかった」。歓喜の輪の中で、岩田康誠騎手が衝撃の事実を口にした。 前走のセントウルSでまさかの2着に敗退。王者としてこれ以上、傷はつけられない。「レース後に(スプリンターズSで負けたら引退)決めました」と安田隆行調教師がいうように、背水の陣で臨んだ一戦だった。 スタートで若干出負けしたが、ひるまずに前に進出。ハクサンムーンがハイラップで逃げるなか、中団を追走した。直線入り口で前がぽっかりとあくと、迷わず突っ込んだ。あとは、ライバルたちをねじ伏せるだけ。3/4馬身差の着差以上の強さを見せつけて、史上2頭目の連覇を決めた。 「少し出遅れて納得いかないレースになった。ただ、馬のリズムを崩さなければ絶対に負けないと思っていた。久しぶりに緊張してのどがカラカラ。ガッツポーズもできなかったね」と主戦は振り返った。 安田調教師はスプリンターズS史上初の3連覇を達成。「レースが終わるまでのプレッシャーは計りしれませんでしたが、Vの喜びも計りしれませんね」と満面に笑みを浮かべていた。 年内引退は決まっているが、ラストランは昨年優勝した香港スプリント(12月8日、シャティン、GI、芝1200メートル)か同日の香港マイル(芝1600メートル)が濃厚。「何とか次も負けないように頑張りたい」と岩田騎手。史上に残る短距離王者の物語はまだ終わらない。再び世界に羽ばたき、有終の美を飾るつもりだ。 (渡部陽之助)