ウマニティ会員の皆さん、初めまして。甘粕代三(あまかす・だいぞう)です。『週刊競馬ブック』『GALLOP』などでこのヘンテコな名前をご覧になったことがある会員さんもおいでになろうかと思います。プロフィールにもあるようにミッドナイトベットの香港カップ優勝に立ち会ってしまったことから香港競馬にのめりこみ、20年近くがたってしまいました。ミッドナイトベットが先頭でゴールインし、ウィナーズサークルへ駆け出して行った時、隣に妙齢の美女を発見! 思わず社台ファームの方ですか、と訪ねたら、河内の家内でございます、と挨拶され吃驚仰天したのが昨日のことのようです。
さて、サラリーマンを辞めてから、特にここ数年は香港の滞在期間が長くなり、日本の競馬場よりも香港のハッピーバレー、シャティン競馬場を訪ねる回数が多くなってしまいました。香港で最も売れていている競馬新聞『新報馬簿(Hong Kong Daily News Racing Booklet』『新報馬経(Hong Kong Daily News)』やテレビの競馬番組などに依頼され、日本馬が遠征してくる香港の国際競走の際にはコラムや生出演などで日本馬の紹介、そして予想をしてきました。『新報馬簿』が日本の業務を拡大したいということで、この春から新報馬簿の駐日代表とを仰せつかりました。
業務拡大というのは日本の競馬情報を香港に伝えることが主ですが、折しも日本で海外馬券、サイマル発売が解禁された年に重なり、極めて感慨深いものを感じざるを得ません。5年ほど前の夏、『週刊競馬ブック』でこの8月に亡くなった畏友、石川ワタルさんらと「明日の馬券を考える」という座談会を2回にわたって連載しましたが、その座談会で石川さんと2人で強く訴えたのがサイマル馬券の解禁、海外馬券を発売することだったのです。昨年の凱旋門賞に出発するその朝、癌が見つかってパリ行きをキャンセルした石川さんは、日本初のサイマル発売となった凱旋門賞を前に8月下旬、旅立たれました。石川さんにサイマル馬券を楽しんで貰いたかったという思いを心から消し去ることはできません。
さて、その石川さんも大好きだった香港国際競走、HKIRがいよいよ1ヵ月後の12月11日に迫りました。既に日本からはG1の4競走に38頭が予備登録を済ませ、天皇賞で距離の壁を打ち破ったモーリス、エイシンヒカリをはじめ招待が決まった馬が続々と出てきています。アルゼンチン共和国杯、マイルCSが終わって最終的な顔ぶれが決まりますが、日本勢は史上最高の顔ぶれになる予感がしてなりません。

昨年のHKIRではエイシンヒカリが最高峰の香港カップを圧勝し、日本のマイル王、モーリスが世界一のレベルと層を誇る香港マイラー陣を破って、帰国後には年度代表馬と選ばれました。世界の競馬シーンでも屈指のあのHKIRを指をくわえて馬券を買えず、悔しい思いをされたファンの方も多いかと思いますが、12月11日にはその悔しい思いを馬券にぶつけることができます。それも今年のダービー馬、マカヒキが挑戦した凱旋門賞のように眠い目を擦りながらではなく、日本の競馬とほぼ同じ時間帯にG1レースが4つも楽しめるのです。深夜帯の発売、発送であった凱旋門賞が約42億円売り上げたのですから、時差が1時間しかなくこれまでで最高の顔ぶれが予想される4レースのG1が行われるHKIRの売り上げは200億円を突破するのではないか、と確信しています。
凱旋門賞の際には友人である友道康夫調教師の応援もかねてパリを訪れましたが、パソコンで日本のスポーツ新聞などのニュースを見ていて不思議でなりませんでした。マカヒキの一挙手一投足はいずれのメディアも大々的に報じている一方、迎え撃つ欧州勢の情報が極めて乏しいのです。サイマル馬券発売を可能にした昨春の競馬法改正の際、JRAは海外の出走馬に関しては国内レースと同様の情報を提供することと注文を付けられているのですが、こと凱旋門賞の報道ぶりを見る限り、この注文は果たされていなかったと断じざるを得ません。
というような訳で、ウマニティの場をお借りして香港馬の動向を会員の皆さんにお知らせしようとこのコラムを始めた次第です。香港競馬は今年、9月3日から開幕し、最大のイベントであるHKIRに向けて激しいレースを繰り広げ、20日のトライアル3レースで史上最高の日本勢を迎え撃つ地元、香港勢の顔ぶれが決まります。次回以降はシーズンインからこれまでの情勢、そしてHKIRに向けた香港のレース体系などを随時お伝えしたいと考えています。4日からは香港入りしてトライアル前の、そしてトライアルの結果など細大漏らさずお伝えし、本番の前日には得意ではない予想もお届けしたします。ぜひご期待ください!
(写真提供:HKJC)
※次回のコラムは11月18日(金)公開予定になります。
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■甘粕代三(あまかす・だいぞう)プロフィール
1960年、東京生まれ。高校時代から競馬にのめりこむ。
早稲田大学第一文学部卒。在学中に中国政府官費留学生。
卒業後、東京新聞記者、テレビ朝日記者、同ディレクター、
同台北開設支局長などを務める。中国留学中に香港競馬を初観戦、
94年ミッドナイトベットの香港カップ制覇に立ち会ったことから
香港の競馬にものめりこみ、2010年、売文業に転じた後は軸足を
日本から香港に。香港の競馬新聞『新報馬簿』『新報馬経』に執筆、
テレビの競馬番組にも出演。現在、新報馬業(『新報馬簿』『新報馬経』)
駐日代表、北京市馬術運動協会高級顧問を務める。
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