【TAROの競馬研究室】「道悪が上手い」にもいろいろある/大阪杯展望
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春G1の開幕を告げる高松宮記念は12番人気のファストフォースが直線力強く抜け出して勝利。見事人馬ともにG1初制覇を果たした。
ファストフォースは2019年6月に未勝利戦でデビューを果たしたが結局勝ち上がることができず、一旦地方に転出した経験を持つ馬。しかし、門別で4戦3勝をマークし再びJRAへと返り咲くと、そこから快進撃が始まった。
復帰初戦の1勝クラスを勝利すると、続く小倉で連勝。2戦足踏みをしたあと8カ月以上戦列を離れることになるが、再びターフに戻るとその初戦、CBC賞を制し重賞ウィナーに。その後は重賞で4度馬券に絡むもののなかなか勝ち切れないレースが続いたが、ようやく久々の勝利を挙げたのが今回の高松宮記念だった。
パワー溢れるファストフォースにとって、雨が味方したのも事実。道悪が上手いというよりパワーがあるので、(レコード激走経験馬ながら)上がりが掛かる方が良いというタイプ。荒れた急坂を駆け上がる力強さは18頭の中でもナンバーワンだった。先々週、先週と雨の影響を受けた開催が続いているが、芝の道悪適性といってもその中身は様々だ。
まず大前提として「道悪が得意」という馬はほとんどいない。そりゃそうだろう。芝の状態が悪い方が走りやすい馬などまずいない。得意というよりは、「どれだけ平気」か、あるいは「苦手ではない」か…つまり減点が少ないという方が適切だ。したがって、陣営の道悪を歓迎しない発言も実はあまりアテにならない。というのも、そもそも大半が道悪で走ることなど歓迎しないからだ。
とはいえ、中には本当に道悪が得意という馬もいる。高松宮記念でいえば生粋の道悪巧者はトゥラヴェスーラ、そしてキルロードの2頭。この2頭は荒れた馬場でもピッチの利いた走りでスイスイと進んで行けるため、他の馬が苦労してスピードが落ちる中、その減速度合いが少ない。
レースを観ていると本当に道悪が上手い馬というのはたまにいて、例えば高松宮記念当日の中京でいえば8レースを走っていたマメコやデルマヤクシも手先が軽く道悪を苦にしないタイプだった。
道悪というと一見パワーが必要に思えるかもしれないが、逆にパワフルすぎたり跳びが大きすぎるとバランスを崩しやすい面もある。もちろんパワーとグリップ力の強さで楽々とこなす馬もいる。ファストフォースなどは典型的だし、過去の名馬で言えばグランプリボスやグラスワンダーなどもそれに近いものがある。
一方、スイスイと進んでいくタイプの道悪巧者はむしろ小柄であったり跳びが小さいケースが多い。レース映像からわかる範囲だと、地面をなぞるように走るタイプは総じて道悪が上手い。最近のG1馬だとレイパパレは理想に近いように思う。
レイパパレが制した大阪杯で2着に好走したモズベッロも道悪で結果を出す印象があるが、同馬に関しては悪化した馬場そのものが上手いというよりは道悪によって外が伸びる馬場、あるいは上がりが掛かる馬場になると有利になると考える方が適切だ。
直近2週で各場とも馬場は相当傷んでいる。今週末以降も道悪、および道悪的な要素を問われる競馬になる可能性があるので、過去の戦績やレース映像から得意な馬を見つけることができれば的中に近づけるかもしれない。
~今週末の注目馬~
今週末は大阪杯が行われる。注目馬はコチラ。
・ラーグルフ(戸崎圭太騎手)
注目はラーグルフ&戸崎圭太騎手。
クラシックには縁がなかったがココに来て本格化気配。中山金杯で初重賞制覇を果たすと、中山記念はやや距離不足ながらもゴール前猛然と伸びて来た。内容的には勝ったヒシイグアスと互角か、それ以上だろう。モーリス産駒は上昇期に一気に力をつけ格上がりを苦にしない傾向があり、今回出走してくるジェラルディーナやジャックドールも同様だ。今がまさに上昇期のラーグルフ、人気にもならなそうな今回は絶好の狙いどころとみる。
※週末の重賞の最終本命馬は、ブログ『TAROの競馬』にて無料公開予定です。
○TARO プロフィール
栃木県出身、競馬予想家。2004年にブログ『TAROの競馬』スタート。2012年より開始した有料メルマガ『回収率向上のための競馬ノート』はまぐまぐ競馬部門で読者数第1位。『競馬記者では絶対に書けない騎手の取扱説明書』(ガイドワークス)など著書多数。最新刊は『馬券力の正体 収支の8割は予想力以外で決まる』(オーパーツ・パブリッシング)。 |
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【TAROの競馬研究室】トップ厩舎なのに穴激走も多い矢作厩舎/弥生賞ディープインパクト記念展望
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先週の中山記念は最終的にシュネルマイスターに本命を打ったものの、直線勢いよく伸びて来たところで進路が塞がってしまい4着。少々悔しい結果となった。もちろん内を突く以上詰まるリスクがあるのは当然なので、こればかりは仕方ない。
勝ったヒシイグアスは4コーナーで上手く脚を溜めた松山騎手の好プレーが光った。これで2年ぶり2度目の中山記念制覇。リピーターが強いレースらしい結末だった。今後という意味では2着のラーグルフにも注目。いかにも距離不足を感じさせるレースぶりだったが、それでもラストは力強く伸びて勝ち馬に迫った。モーリス産駒らしく、古馬になっての本格化を予感させる好内容だった。
さて、遠くサウジアラビアでは日本馬が今年も大活躍。バスラットレオン、シルヴァーソニック、パンサラッサの3頭が勝利した。
3頭のうち2頭は矢作厩舎の管理馬。矢作厩舎といえば既に世界的に名を知られるトップ厩舎だが、それでいて穴馬券の供給が多いのも特徴。パンサラッサの快挙から約半日後の阪急杯では、ホウオウアマゾンが6番人気で3着と好走。昨年のマイラーズカップで2着好走ののち4走連続で2ケタ着順が続いていたが、その間マイルや1400m、そしてダートを挟み、約10カ月ぶりの馬券圏内好走となった。
矢作厩舎は昨年JRAでの出走回数が523回。これは全厩舎の中でトップ。ちなみに2位は清水久厩舎で504回、3位は391回で斎藤誠厩舎。
・2022年厩舎別出走回数トップ3
矢作厩舎 523回
清水久厩舎 504回
斎藤誠厩舎 391回
なお、昨年の全国リーディングも1位が矢作厩舎、2位が清水久厩舎、関東リーディングが斎藤誠厩舎。まさに出走回数通りとなっている。
数多くのレースを使える…というのはそれだけ勝つチャンス、さらには稼ぐチャンスが増えるということでもあり、厩舎力に直結するのかもしれない。そして数多くのレースを使うからこそ、凡走も多いが、凡走が多いからこそ穴での好走が増える。1戦必勝型厩舎は人気になりやすく、穴での激走は少ない。
阪急杯では中内田厩舎のグレナディアガーズが単勝1.7倍。中内田厩舎は昨年の出走回数が245回。2022年の全48勝のうち45勝が1~3番人気でのもの。レース数を絞るため人気になりやすく、5番人気以下では2勝。矢作厩舎は2022年の59勝のうち1~3番人気で39勝、5番人気以下で15勝。清水久厩舎は52勝のうち1~3番人気で31勝、5番人気以下で15勝。
以下のように並べてみると顕著な差が出ている。
・2022年人気別勝利数
矢作厩舎 59勝 1~3番人気 39勝 5番人気以下 15勝
清水久厩舎 52勝 1~3番人気 31勝 5番人気以下 15勝
中内田厩舎 48勝 1~3番人気 45勝 5番人気以下 2勝
ホウオウアマゾンを例にしたが、同じレースに出ていたミッキーブリランテも、本当によく名前を見かけ、毎年のように穴をあけている。穴馬券を獲るためには、戦績や騎手も大事だが、厩舎も大事だと痛感する。
~今週末の注目馬~
というわけで、今週末からいよいよクラシックトライアル戦線がスタート。ココでは弥生賞ディープインパクト記念を取り上げることにする。現時点での注目馬はコチラ。
・タスティエーラ(松山弘平騎手)
ハイレベルだった共同通信杯組のタスティエーラに注目したい。共同通信杯は4着と競り負けたが、いかにも距離が延びた方が良さそうな内容だった。父サトノクラウン自身も古馬になって宝塚記念、香港ヴァーズを制したスタミナ型。本馬もレース内容&血統面から距離延長はプラスになる。先週の中山記念で好騎乗を見せた松山騎手には、今週末も期待したい。
※週末の重賞の最終本命馬は、ブログ『TAROの競馬』にて無料公開予定です。
○TARO プロフィール
栃木県出身、競馬予想家。2004年にブログ『TAROの競馬』スタート。2012年より開始した有料メルマガ『回収率向上のための競馬ノート』はまぐまぐ競馬部門で読者数第1位。『競馬記者では絶対に書けない騎手の取扱説明書』(ガイドワークス)など著書多数。最新刊は『馬券力の正体 収支の8割は予想力以外で決まる』(オーパーツ・パブリッシング)。 |
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【TAROの競馬研究室】2023年復権に期待している騎手/フェアリーS展望
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新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
昨年暮れのホープフルSは◎トップナイフが2着好走。もっとも、勝利したドゥラエレーデ、3着キングズレインはともに3列目だったため、大的中とはいかず悔しい結果に。それでも横山典騎手らしい変幻自在の騎乗を見ることができた。
年明け最初の重賞中山金杯で期待したのはバシュロ騎手のラーゴム。スタートでやや後手を踏んで流れに乗れずに終わってしまったが、正月開催から同騎手は3勝。早速存在感を見せている。3勝はすべて500キロ超の大型馬で、欧州ジョッキーらしくビッシリ追えるのは強みだ。
勝ったラーグルフはモーリス産駒。クラシックでは通用しなくてもその後成長するのが同産駒の特徴で、ラーグルフも良い成長曲線に乗ってきている。
京都金杯は上手くインで溜めたイルーシヴパンサーが馬群を捌いて抜け出し。岩田望来騎手らしい馬場読み力と思い切りが光った好騎乗だった。期待した◎ピースワンパラディは最後に伸び切れず4着止まり。
というわけで、東西重賞は本命馬が馬券に絡めずのスタート。中山金杯は波乱の想定をしていたので、4番手クリノプレミアムからのタテ目を少しだけ押さえておいたことで、負けは最低限に留めることができた。今年もしぶとく、買い方を工夫して、勝負所の強弱をつけて1年間戦っていきたい。
ジョッキー界も若手騎手が伸びて来ている上に、福永騎手は2月で引退。またコロナ禍前のように短期免許の外国人騎手の来日が増える可能性が高く、同時に斤量規定も変わった。
いろいろと変化のある一年を楽しんでいきたい。個人的には、昨年後半から巻き返し気配がみられる戸崎騎手の復権に大いに期待している。
~今週末の注目馬~
では、いつも通り今回も週末の注目馬で締めたい。今週末はシンザン記念が行われるが、7頭立てと少頭数になったので、3日間開催最終日のフェアリーSを取り上げたい。注目馬はコチラ。
・ヒップホップソウル(松山弘平騎手)
今回の注目はヒップホップソウル。
デビュー戦が今回と同じ中山芝1600mで強い競馬。出遅れたがコーナーワークは自在で、大型馬ながら父キタサンブラック譲りの器用さを見せてくれた。最後は余力十分に抜け出し。初戦の内容ならば重賞でも戦えるはずだ。
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栃木県出身、競馬予想家。2004年にブログ『TAROの競馬』スタート。2012年より開始した有料メルマガ『回収率向上のための競馬ノート』はまぐまぐ競馬部門で読者数第1位。『競馬記者では絶対に書けない騎手の取扱説明書』(ガイドワークス)など著書多数。最新刊は『馬券力の正体 収支の8割は予想力以外で決まる』(オーパーツ・パブリッシング)。 |
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2022年11月18日(金) 14:00
TARO
【TAROの競馬研究室】キャリアを重ねながら一気に本格化するモーリス産駒/マイルCS展望
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エリザベス女王杯は大外枠のジェラルディーナが突き抜けて完勝。連続開催のAコースに加えて雨が降ったことで一気にタフ化&外伸び化した馬場を利して、勝ち馬以下、外を回した組が上位を独占した。
2着ライラック、同着のウインマリリン、4着アカイイト、5着ナミュールまでいずれも2ケタ馬番&外を回したことが好走に繋がった。逆に外枠から内にこだわったルビーカサブランカは実にもったいなかった。残念ながら6着に敗れたデアリングタクトはむしろ健闘といっていい内容で、次走以降に希望を持たせた。
勝ったジェラルディーナは父モーリス、そして母はジェンティルドンナ。血統背景からもデビュー時から注目を集めていたが、4歳秋を迎えてようやく本格化。前走のオールカマーで待望の重賞初制覇を果たすと、一気にG1も射止めてみせた。
考えてみればモーリス自身も早期から期待を集め2歳重賞でも1番人気に支持されるほどだったが、結局3歳シーズンは目立った活躍をできず、本格化は4歳になってから。怒涛の7連勝で春秋のマイルG1に加えて香港マイル、さらにはチャンピオンズマイルを制し、5歳秋には天皇賞(秋)→香港カップと中距離G1タイトルを獲得した。
産駒も父に近い成長曲線をたどることが多く、ピクシーナイトは3歳春から活躍したものの、NHKマイルCでは見せ場なく敗れ、G1を制したのはやはり秋になってから。ジャックドールもクラシックには間に合わなかったものの、怒涛の5連勝で金鯱賞を制し、今後のさらなる活躍が期待されている。
これから…という意味ではラーグルフも注目の存在。ホープフルS3着と2歳時から素質の一端を見せたものの、クラシックでは出番がなく、ココからが本番といったところだろう。来年の今ごろは中距離重賞、あるいはG1戦線に再度乗ってきているかもしれない。
最近は休養を挟み目標へ向けて調整するパターンが主流になっているが、使いつつ力をつけて行く「反主流のモーリス産駒」の活躍には今後も期待したい。
~マイルCS展望
では、いつも通り最後は週末の注目馬で締めたい。今週末はマイルチャンピオンシップ。注目馬はコチラ。
・ソウルラッシュ(松山弘平騎手)
注目はソウルラッシュ&松山騎手。
春の安田記念では13着と大敗を喫しているが、有利な外枠から内に入れてしまい、3コーナー、さらに直線で再三の不利を受けてのもので度外視OK。もともと急坂コース向きのパワータイプで、重賞を制している阪神芝1600mはベスト条件だろう。荒れ馬場も向いており、前走から騎乗する松山騎手もソツがなく、外国人騎手相手でも互角の戦いを挑める。人気は中穴程度に留まりそうだが、好勝負になる。
※週末の重賞の最終本命馬は、ブログ『TAROの競馬』にて無料公開予定です。
○TARO プロフィール
大川慶次郎さんの予想に魅了され、中学2年の時にネット掲示板で予想スタート。2004年にブログ『TAROの競馬』スタート。2009年9月『競馬最強の法則』で連載開始。2012年より開始した有料メルマガ『回収率向上のための競馬ノート』はまぐまぐ競馬部門で読者数第1位。著書に『ラッキーゲート』(KKベストセラーズ)、『回収率を上げる競馬脳の作り方』『回収率が飛躍的に上がる3つの馬券メソッド』(いずれも扶桑社新書)、『万馬券の教科書 -新時代のサバイバル穴予想術』(ガイドワークス)。 |
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