12番人気の
ファストフォースが、直線で力強く脚を伸ばしてJRA・GⅠ初制覇。
団野大成(22)=栗・斉藤崇=にとっても、JRA・GⅠ10回目の参戦で初Vとなった。
西村真幸調教師(47)=栗=も開業9年目でGⅠ初勝利。2着に2番人気
ナムラクレア、3着に13番人気
トゥラヴェスーラが入り、3連単は66万8280円の波乱となった。
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冷たい雨が降りしきる桶狭間の電撃戦で、伏兵馬が大金星を挙げた。12番人気のファストフォースが、力強く抜け出しJRA・GⅠ初制覇。5年目の団野騎手にとっても、10度目の騎乗で初のビッグタイトル獲得だ。
「オーナーをはじめ、西村先生や厩舎の人たちに感謝の気持ちでいっぱいです。本当に力強いレースをしてくれました」
❼枠⑬番からスタートを決めて、先団の後ろを追走。「内から4~5頭目がいいように見えていた」と道悪馬場を冷静に見極め、相棒の末脚を引き出した。先頭でゴールに飛び込むと、左手を高く突き上げて喜びを爆発させたが、直線で
アグリの進路を妨害(過怠金5万円)。「自分自身の反省でもありますし、陣営にもものすごく申し訳ないです」と、インタビューでは笑顔を封印した。
鞍上は昨年3月に落馬負傷し、左足の距骨を骨折。休養中に同期の岩田望、菅原明騎手が、
日本ダービーに騎乗している姿を目に焼き付けた。「誇りに思うと同時に悔しいですね」。けがを契機に自身のレベルアップを心に誓い、トレーニングジムに通う回数を増やすなど努力を重ね、同期でGⅠ一番乗りとなった。
ファストフォースは2019年にデビューしたが、6戦未勝利で地方へ。門別で3勝を挙げてJRAに再転入すると、21年
CBC賞を当時の日本レコードで重賞初制覇を飾った。以前は脚部不安で坂路でしか調整できなかったが、体質強化でコースでも攻められるようになり、力のいる馬場での戴冠につながった。
地方に在籍したことがあるマル地馬((地))のJRA・GⅠ制覇は、1984年以降では02年
マイルCSの
トウカイポイント以来21年ぶり。開業9年目でJRA・GⅠ初勝利を飾った西村調教師は「未勝利を勝たせきれなかった技術不足もありましたが、戻ってきてからは一番合う適性で走らせようと心掛けました。ずっと(GⅠを)勝ちたいと思っていたので、すごくうれしいです」と笑みを浮かべた。
今後は未定ながら、海外のビッグレースも視野に入る。群雄割拠の短距離界を制した
ファストフォースの未来は、まぶしく光り輝いている。
■
ファストフォース 父
ロードカナロア、母ラッシュライフ、母の父
サクラバクシンオー。黒鹿毛の牡7歳。栗東・
西村真幸厩舎所属。北海道浦河町・三嶋牧場の生産馬。馬主は安原浩司氏。戦績29戦7勝。獲得賞金3億1384万7000円。重賞は2021年GⅢ
CBC賞に次いで2勝目。
高松宮記念は
西村真幸調教師、
団野大成騎手ともに初勝利。馬名は「第一の力」。
■団野 大成(だんの・たいせい) 2000(平成12)年6月22日生まれ、22歳。滋賀県出身。栗東・
斉藤崇史厩舎所属。父の勝さんは同厩舎の調教助手。19年3月にデビュー。重賞初勝利は21年の
日経新春杯(
ショウリュウイクゾ)で、同年には欧州遠征も経験した。26日現在、JRA通算183勝で重賞は4勝。
【アラカルト】
◆
団野大成騎手 JRA・GⅠは10回目の騎乗で初勝利。JRA重賞は本年初勝利で通算4勝目。
◆
西村真幸調教師 JRA・GⅠは27頭目の出走で初勝利。JRA重賞は本年2勝目で通算10勝目。
◆父子制覇 父
ロードカナロアは2013年に勝利しており、09年
ローレルゲレイロ(父
キングヘイロー)、21年
ダノンスマッシュ(父
ロードカナロア)以来、2年ぶり3組目。
◆馬主・安原浩司氏 当レースは3頭目の出走で初勝利。JRA・GⅠは18年
JBCレディスクラシックをアンジュデジールで制して以来、5年ぶり2勝目。JRA重賞は通算5勝目。
◆生産牧場・三嶋牧場 当レースは2頭目の出走で初勝利。JRA・GⅠレースは21年
安田記念を
ダノンキングリーで制して以来、通算2勝目。JRA重賞は通算26勝目。
◆7歳馬の勝利 15年(エアロヴェロシティ)以来、8年ぶり3回目。
◆関西馬の勝利 21年
ダノンスマッシュ以来、2年ぶり19回目。他に関東馬が8勝、外国馬が1勝。
◆売り上げ、入場者数
高松宮記念の売り上げは150億7921万1300円で前年比96・1%とダウン。入場者数は2万1129人(うち有料入場2万610人)で同356・2%だった。