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【日本ダービー】血統考察 byうまカレ

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【日本ダービー】血統考察 byうまカレ | コラム | ウマニティ

学生団体うまカレ副代表の金沢ユウダイです。
いよいよ東京優駿日本ダービーです。やっぱりダービーは特別です。身が引き締まります。

個人的な話をさせていただくと、高校生の頃から競走馬の血統というものが好きだったのですが、今のように自分の生活の中心が血統研究になるほどノメり込んだのは、昨年のダービーを検討していたときでした。東京で威力を発揮してきたトニービンの斬れというものは、NasrullahとHyperionに起因するもので、Hornbeam(トニービンの母父)と牝祖バロクサイドのニアリークロスでトニービンの再現性の高い配合といえるドゥラメンテと、サンデーサイレンスを介さずに、あれほどまでに柔軟性があり、日本のスピード競馬に対応できるサトノクラウンの配合を、望田潤先生のブログで学んだことがキッカケでした。そして、祖母エアグルーヴ天皇賞(秋)から18年、母と同じように府中の直線を斬り裂いたドゥラメンテの姿と血統・配合の奥深さに感極まり涙を流した昨年のダービーでした。

あれから1年、この1年間はクラシック路線に重点を置いて競馬をみてきました。その答えが5月29日に出ます。書きたいことを書いて、その時を待ちたいと思います。


今年の3歳世代は、3着以下を4馬身離した朝日杯FSをみても、4着以下を5馬身離した弥生賞もみても、やはりハイレベルであることは間違いないとところ。逆にいえば、抜けた存在がいないから、3冠はそれぞれ展開、馬場、枠順などといった外的要因を最も味方に付けることができた馬が勝つと推測しています。皐月賞ヴィクトワールピサ、ダービー・エイシンフラッシュ菊花賞ビッグウィークの2010年世代に似ています。

ディーマジェスティ
4代母Margarethenから広がる牝系で、中でもTrillionの分岐からは直仔に「鉄の女」と呼ばれ富士Sを制したトリプティクを輩出し、2013・14年凱旋門賞連覇のTreveやダート王フリオーソらも輩出している。ディーマジェスティはDoff the Derbyの分岐で、母母シンコウエルメスは英ダービー、キングジョージを制したジェネラスの半妹で、その産駒にはエリ女3着のエルノヴァや、中京記念マチカネオーラらがいる。シンコウエルメスはNantallahとRuss-Marie(Margarethenの母=ディーマジェスティの5代母)のニアリークロス(NasrullahとGallant Fox≒Maarguery)5×3を持つパワー型で、そこにブライアンズタイムを配されたのがディーマジェスティの母エルメスティアラだから、極めてパワーとスタミナに特化した母といえる。このパワーとスタミナに偏重した母に、柔らかいディープインパクトを配されたディーマジェスティは、一般的なディープインパクト産駒ではなく、だからこそ急坂のある中山で肉弾戦となった皐月賞はこの馬に最も外的要因が向いていたといえよう。中間のフォトパドックを見ても明らかに他のディープ産駒に比べてお尻が大きな馬体で、東京では仮にレースが流れたとしても急坂がない分皐月賞程のパワーとスタミナが求められるレースにはならないし、良馬場で、急坂がない東京で、33秒台の上がりが求められるレースになったとき、このハイレベル世代において2冠奪取というのは非常に難しいと思うのだ。

マカヒキ
ウリウリの全妹で、ショウナンパンドラらが出るディープインパクト×フレンチデピュティという配合で、サザンヘイローを通じるHalo≒Sir Ivor≒Red God3・5×6・5。また、母母父Rainbow Coner→母父フレンチデピュティ→父ディープインパクトと3代に渡ってNasrullah≒Royal ChergerとPrincequilloを継続して交配されているから斬れる。よく父と比較をされるが、特にコーナリングにおいては、父の場合は抜群の柔軟性から股関節の可動域の大きさを活かしたチーターのようなコーナリングだったが、この馬の場合はHaloらしい“サササッ”というコーナリング、直線のストライドも父ほど雄大なものではない。瞬発力が活きるダービーの舞台は合っているが、これまでのような後方からの競馬で、このハイレベル世代で、前にいるライバルをまとめて差し切れるほど力は抜けていないだろう。

サトノダイヤモンド
マカヒキと同じサザンヘイローを通じるHalo≒Sir Ivor3・5×4・4。母マルペンサは亜古馬牝馬チャンピオンに2度輝いた名牝で、HaloやNothern Dancer、デインヒルなどの牝祖Almahmoud6・7・5×5・6という強烈なクロスを持つ。また、マルペンサの血統表の1/4部分である3代母RiviereはHaloを持たないが、その父LigicalはBlue Larkspur、Man o’War、The Tetrarch、Pharamond、Sir GallahadなどがHalo共通で、Almahmoudだけでなく、LogicalでもHaloの血統構成を増幅させているのがすごい。とはいえ、BCマイルを連覇した母父父LureはDanzig×Alydarという配合馬で、これはジェンティルドンナの母父Bertoliniと同じでパワーに特化。このパワーをHalo的な柔らかさで中和しているが、走りをみるとやはり地面に叩きつけるような走法で、体型に恵まれているから完歩は大きいがストライドが伸びているとはいえないから、特別東京向きというわけではない。皐月賞きさらぎ賞から直行というローテーションに加え、池江調教師は先行有利な馬場状態だったため、ルメール騎手に「好位の5~7番手くらいの先頭から5馬身差くらいを追走してくれ」と指示を出したという(*1)。向こう正面でルメール騎手が追っつけ、ハイペースに付いていったのは、その「先頭から5馬身差くらいを追走してくれ」という指示を守っていたからで、そのことに加え直線での不利がなければマカヒキと2着争いに絡んでいたであろう非常に強い負け方。最も崩れないのはこの馬だろう。

リオンディーズ
シーザリオは、強い遺伝力を持つHabitatの影響で自身と同じ外回り向きのストライド走法で走る産駒を多く輩出する名繁殖牝馬で、リオンディーズのあの完歩の大きさ(サトノダイヤモンドマカヒキよりも一完歩が大きいとMahmoudさんが試算されている(*2))、あのフットワークはどこからどう見ても明らかに直線の長いコース向き。また、リオンディーズに関しては①手前と、②折り合い不安について仮説を持っている。

①手前については、リオンディーズは道中を右手前で走る右回りの朝日杯において、直線に入り左手前に替えてから、内回りとの合流地点で再度右手前に戻し、末脚が爆発。マイル戦で完全なエアスピネルの勝ちパターンを差し切るという、とんでもないパフォーマンスを披露した。弥生賞こそしっかり直線では左手前一本で走っていたが、皐月賞ではミルコ騎手もコメントをしているように、残り300m地点までコーナリングから手前を替えずに右手前のまま走っていた。このことからリオンディーズは、左手前以上に右手前の方が走りやすい、好き、得意なのではないかと推測できる。だから道中右手前が温存できる左回りの今回はどんな末脚を繰り出すのか、個人的には「楽しみ」というより、「恐ろしさ」さえ感じている
②折り合い不安について、ミルコ騎手は、Web Sportiva(*3)において、『皐月賞で「向こう正面でマウントロブソンが近付いてきたところで掛かった」と言われていますが、「リオンディーズのフットワークを活かすために自分の意思で出していった」が、レース後振り返ってみると、明らかに速すぎたと思い、自身の騎乗を悔やんだ』という趣旨のコメントを残しています。つまり、皐月賞リオンディーズは鞍上の指示通りに走れていたわけで、決して掛かったわけではなかった。また、新馬戦と休み明けは掛かるそぶりを見せていましたが、皐月賞での走りは、エピファネイアと同じように、「掛かっている」というよりも「パワーで突進している」という表現の方が正しく、ミルコ騎手の手腕を持ってすればそのパワーをコントロールすることができると思うのです。

Cコースに替わり、先行有利な近年のダービーにおいては、マカヒキなどと異なり、弥生賞、皐月賞と先行させたことが活きてくるとも思うし、得意である可能性が高い右手前の威力を存分に発揮できる左回り、圧倒的に大きなストライド、先行できるパワースピード、その特徴をフルに活かせる条件に好転する東京2400mでどんな走りを見せてくれるのか、楽しみでなりません。

エアスピネル
Bold RulerやTudor Minstrelのスピードを伝えるアイドリームドアドリームの牝系で、この牝系は器用さがあるのでエアシャカール皐月賞)やエアメサイア秋華賞)やエアシェイディ有馬記念2年連続3着など)、エアアンセム(ホープフルS)など内回りでの好走が目立つ。本馬も小刻みなピッチ走法で走るのでコーナリングは抜群に巧く、外回り<内回りであることは間違いないところ。しかしいくら枠順や展開の恩恵が働いても距離が伸びて皐月賞上位組を逆転できるとは思えない。

スマートオーディン
母レディアップステージはGII時代のプリティポリーSを制し、GIオペラ賞では3着。父Alzao、Busted、Fair Trialとウインドインハーヘアと血統の共通項が多い馬。とはいえ、Habitatを通じてSir Gaylord4×5を持つから前駆で走り、ベストは平坦コースか。プール調教などで心肺機能を高めてきたが、やはり体型はマイラーに近く、ダービーを1着で駆け抜ける馬体にはみえない。2400mも長く、スローでどこまでやれるかだろう。

ヴァンキッシュラン
母リリーオブザヴァレーは2010年のオペラ賞勝ちで、ND3×6・6・5、叔父には昨年のUAEダービーを制したMubtaahujがいる。母はMiswaki≒ラストタイクーンでNasrullahとPrincequilloとLa Troienneのクロス、更にBold Reason≒Never Bendでもあるからパワー型で、前脚の可動域は狭くストライドは伸びないが、Galileoらしい持続力で長い脚が使えるタイプ。しかし皐月賞上位組が見せたこれまでにみせたパフォーマンスと比較すると、それ以上のものは感じなかったから3着までとみる。

レッドエルディスト
母は父、母父、母母父、3代母父とNasrullah血脈が入り、母母Alruccabaはクリスタルパレス×ゼダーンでGrey Sovereign4×3とフランス血脈をクロスしているから斬れる。しかし父がゼンノロブロイでマイニングとNever Bendを通じLa Troienneのクロスの影響かヴァンキッシュランと同じく前脚の可動域は狭い。自分の競馬に徹してどこまでやれるかだろう。

レインボーライン
面白いのがNHKマイルC3着のレインボーライン。3代母レインボーローズがRoyal Cherger≒Malimdi4×3、Prince Rose4×4、母父フレンチデピュティの母MitterrandもBold RulerとPrincequilloを持つので、母レーゲンボーゲンはRoyal Cherger≒Milindi=NasrullahとPrince Rose系を増幅した配合といえ、外回りで長い脚を使うことに長けている。体型をみてもマイラーとは思えないので、距離延長はプラスととらえたい。今年の3着穴があるとすればこの馬ではないか。

【まとめ】
条件好転のリオンディーズが兄の無念を晴らすとみる。相手は大崩れが考えられないサトノダイヤモンド。この2頭の争いで、穴ではレインボーラインに少し注目してみたい。

*1 サラブレ6月号『JRA調教師池江泰寿のやっぱり だから 競馬は 難しい 面白い』(28~29頁)
*2 サラブレ6月号『皐月賞&桜花賞ラプ・完歩ピッチ分析』(18~21頁)
*3 Web Sportiva『皐月賞はボクがへたくそ」デムーロのリオンディーズがダービーで復権』


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【参考】
日本サラブレッド配合史―日本百名馬と世界の名血の探究(笠雄二郎著)
望田潤さんのブログ http://blog.goo.ne.jp/nas-quillo
栗山求さんの連載「血統SQUARE」http://www.miesque.com/motomu/works.html
『覚えておきたい 日本の牝系100』(平出貴昭著)

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執筆者:うまカレ(MYコロシアム>最新予想にリンク)

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