土日合わせて11勝。
ルメール騎手や川田騎手をはじめとしたトップジョッキーがブリーダーズカップへ参戦していたこともあり、モレイラ騎手に有力馬が集中した週となったが、人気馬であっても結構コロコロと負けるのが競馬だし、筆者もそうしたシーンを何度も目にしてきた。
しかし、素人目に見てもモレイラ騎手が騎乗した馬の多くは明らかに動きが違っていた。人気に推されているように能力上位なのは明らかだが、彼が騎乗していることでよりのびのびと、軽やかに走っていように感じるのだ。強い馬に更にブーストを掛けて、当たり前のように勝つ……世界の名手の手腕の凄みというのものを改めて実感させられた。
そのモレイラ騎手が当レースで騎乗した
ゼッフィーロも、抽選対象でありながら抜けた一番人気。
強力なメンバーが揃っていた前走の
オールカマーで、一際目をひく末脚を繰り出していただけに、ここでも能力上位の存在であるのは明白ではあったが、道中の位置取りは中団やや後方のイン。前方にも横にも馬群が密集している状態で、「これ、捌けるんだろうか?」と心配していたが、直線に入ると抜群の手応えで進出。馬群が外に流れる絶妙なタイミングを狙い、ほとんどロスなく抜け出してきた。
ゼッフィーロの瞬発力の高さによるところも大きいが、鞍上の判断や一気に加速させる技術は溜息が出るほど。強い馬と上手い騎手による、正に人馬一体の完勝劇であった。
結果的に”最大の敵が抽選だった”
ゼッフィーロだが、着差もさることながら、ラップも最後までほとんど失速しておらず、まだまだ余裕を感じさせる内容。
オールカマーのメンバーと互角以上の走りを見せたのは、決してフロックではなさそうだ。
血統的に、今回のような長めの距離から2000m近辺の中距離まで幅広くこなすことができ、レース選択の幅も広いタイプ。それだけに、ここでしっかりと賞金を加算できたのは大きい。
今後はG1も含めた一段上のレベルの戦いに身を投じることになるだろうが、どこまでパフォーマンスを上げてくるか楽しみな存在と言えるだろう。
2着には
マイネルウィルトスが早め進出の強気な競馬で粘り込み。
比較的相性の良い舞台だったとは言え、長い休養を挟んだ7歳馬ということを考えると、よくぞここまでパフォーマンスを戻してきたと驚嘆。刻んでいるレースレベルは5歳頃からほとんど一定だし、今後も得意とする舞台では注意が必要か。現役屈指の、異質とも思える道悪適性も備えている馬でもあるので、タフな馬場状態の時にはより気にかけるようにしたい。
3着は
チャックネイトと
ヒートオンビートが同着入線。
チャックネイトは当レースと好相性の六社Sの勝ち馬。去勢後は着実にパフォーマンスを上げている印象で、重賞でも結果が残せたのは今後にとって大きな一歩。2000mでは短そうで、3000m超では少し長そうで……と、レース選択に難しさはありそうだが、今後はどこを狙ってくるだろうか。
ディープインパクトを父に持つ半兄サトノディードがダートでオープン入りしているので、本馬も一度ダートを試して欲しいと個人的には思っているのだが。
ヒートオンビートは状態面で半信半疑な部分があったが、良馬場の適舞台できっちりと巻き返し。
上位勢よりもだいぶ重い59kgの斤量を背負っていたことを考えれば、さすがと言える内容だった。
とは言え、ここから更に上を目指せるほどの迫力は感じず、あくまで現状の自分の力をきっちりと出しただけという印象。更にタイトルを積み重ねるには、何かもう一押し欲しいところ。
他馬に目をやると、上位人気馬で唯一見せ場のなかったのが
ディアスティマ。
今回は序盤から積極的に行く構えを見せず、序盤は馬群の中で力み気味に走る姿が目立った。
そのまま直線も脚を使えず後退し、近走のパフォーマンスを考えると明らかに走れていないと思える内容で、やはりストレスの少ない形で逃げたり先行したりする形のほうが合うのだろう。今回は5月以来の休み明けでもあったし、今回の結果は度外視して考えて良いかもしれない。
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霧(きり)プロフィール
ウマニティ公認プロ予想家。レース研究で培った独自の血統イメージに加え、レース戦績や指数等から各馬の力関係・適性を割り出す”予想界のファンタジスタ”。2023年1月には、長年の活躍が認められ殿堂プロ入りを果たす。
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