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歴史的快挙を阻んだのは、同じ美浦所属の牝馬だった。安田記念が7日、東京競馬場で14頭によって争われ、3番人気のグランアレグリアが直線で抜け出してGI2勝目をマーク。池添騎手は、レース中の負傷で右目を腫らしながらも笑顔で喜びを爆発させた。史上初の芝GI8勝目が懸かっていた断然人気のアーモンドアイは猛追したが2馬身半差の2着。連覇を狙った2番人気のインディチャンプは3着だった。
◇
血染めでつかんだ勲章だ。昨年の桜花賞馬グランアレグリアが、圧倒的人気を集めたアーモンドアイに2馬身半差をつけてGI2勝目。池添騎手は「やったー」と叫びながら、馬上で何度もガッツポーズ。引き揚げてきてゴーグルを外すと、腫れあがった右目から鮮血がしたたり落ちた。
「こんな醜い顔で恥ずかしいんですけど、自分の仕事はしっかりできたと思います。うれしさの方が勝っているので、目はもう痛くないです」
気丈に振舞ったが、試合後のボクサーのような顔が、ダメージの大きさを物語っていた。アクシデントが起きたのは3コーナー過ぎ。時速70キロものスピードで疾走するなか、前の馬が跳ね上げた巨大な芝の塊が顔面を直撃。脳しんとうを起こしかけるほどの衝撃だった。何とか意識を保つと、直線入り口で一気にスパート。馬場の真ん中から早めに先頭に立たせ、懸命にステッキをふるって後続との差を広げた。
「外から1頭来ていたので、蓋をされるより気分のいいときに行った方がいいと思って。(自分の)目はふさがりかけていましたが、必死すぎて忘れていました。逆に(衝撃で)力が抜けたのが良かったのかもしれませんね」。インタビュー中には、ルメール騎手からアイシングの氷を差し入れられ、「ハードワーク!」と声をかけられる一幕も。敗者も称賛を惜しまない、ガッツあふれる騎乗だった。
「手応えが良かったので、4コーナーを回るときは安心して見ていられました。強い相手に強い競馬で勝ってくれました」と笑顔の藤沢和調教師。もしアーモンドが勝っていれば、自身が調教助手時代に手がけたシンボリルドルフなどの“芝GI最多7勝”の記録が塗り替えられていた。それだけに「(負けたら)野平のじいちゃん(ルドルフを管理した故・野平祐二元調教師)に怒られるからね」と、ホッとした表情を見せた。
今後は休養し、秋も短距離路線を歩む予定だ。
「すごいメンバーに勝てて、価値が上がったと思います。チャンスがあるならずっと乗っていたいですね」と池添騎手。次はファンの戻った競馬場で、大歓声(スペイン語で“グランアレグリア”)を呼び起こす。(漆山貴禎)
★7日東京11R「安田記念」の着順&払戻金はこちら
■グランアレグリア 父ディープインパクト、母タピッツフライ、母の父タピット。鹿毛の牝4歳。美浦・藤沢和雄厩舎所属。北海道安平町・ノーザンファームの生産馬。馬主は(有)サンデーレーシング。戦績8戦5勝。獲得賞金4億5324万3000円。重賞は2018年GIIIサウジアラビアRC、19年GI桜花賞、GII阪神Cに次いで4勝目。安田記念は藤沢和雄調教師が1997年タイキブリザード、98年タイキシャトルに次いで3勝目、池添謙一騎手は初勝利。馬名は「大歓声(スペイン語)」。
★池添謙一騎手…10度目の挑戦で初勝利。これまで最高は2002年(ダンツフレーム)、05年(スイープトウショウ)の2着。JRA・GIは19年マイルCS(インディチャンプ)以来の26勝目で、6年連続のJRA・GI勝利。
★藤沢和雄調教師…1998年(タイキシャトル)以来、22年ぶり3勝目で、堀宣行調教師に並ぶ最多。JRA・GIは19年スプリンターズS(タワーオブロンドン)以来、自身の持つ歴代最多記録を更新する通算30勝目。JRA重賞はシンザン記念(サンクテュエール)以来の今年2勝目で通算121勝目。
★ディープインパクト産駒…17年(サトノアラジン)以来の通算3勝目で、種牡馬別安田記念勝利数単独1位になった。JRA・GIは日本ダービー(コントレイル)に続く2週連続の今年4勝目で、通算56勝目(ほかにJ・GIを1勝)。JRA重賞は日本ダービーに続く2週連続で今年16勝目。通算232勝目。
★馬主 (有)サンデーレーシング…所有馬延べ15頭の出走で初勝利。これまで最高は18、19年(ともにアエロリット)の2着。JRA・GIは天皇賞・春(フィエールマン)以来の今年3勝目で通算51勝目(ほかにJ・GIを2勝)。JRA重賞は前日の鳴尾記念に続く今年7勝目で通算187勝目。
★生産牧場 ノーザンファーム…19年(インディチャンプ)に続く2年連続で通算4勝目。JRA・GIはヴィクトリアマイル(アーモンドアイ)以来の今年4勝目で通算148勝目(ほかにJ・GIを3勝)。JRA重賞は前日の鳴尾記念に続く今年24勝目で通算628勝目。
★GI馬10頭出走…14年の9頭を抜いて安田記念史上最多出走数。
★関東馬の勝利…16年(ロゴタイプ)以来、4年ぶり。通算成績は関東馬、関西馬ともに17勝。ほかに外国馬が3勝している。
★牝馬の優勝…09年(ウオッカ)以来11年ぶりで通算5勝目。
★4歳馬の勝利…18年(モズアスコット)から3年連続の通算13勝目。
◆売り上げ 安田記念の売り上げは190億2941万8000円で、前年比93・0%となった。今年、これまでの平地GI11レースで、前年比減は日本ダービーに続いて9レース目。前年比増は高松宮記念とヴィクトリアマイルの2レース。
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