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【霧プロの重賞レースおさらい帳】中山記念2024 雨中の難戦、分かれた明暗。距離巧者マテンロウスカイが念願の重賞制覇

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【霧プロの重賞レースおさらい帳】中山記念2024 雨中の難戦、分かれた明暗。距離巧者マテンロウスカイが念願の重賞制覇


開幕週の雨馬場。この極端な要素同士の掛け合わせに悩んだ方は多いのではないだろうか。
開幕週といえば、多くの場合馬場が綺麗で時計も速く、逃げ・先行馬が有利になったり、インコースをロスなく回ってきた馬が有利になったりするものだ。一方、雨の影響を受けた馬場はそう単純ではない。タフな馬場で先行勢の脚が鈍る、踏み荒らされたインコースが全く伸びないといったことは普通にあるし、馬それぞれの適性にも左右される部分が大きい。
では、その両方を併せ持つ条件だった場合は? となると、結果を正確に予想するのは難解なこと極まりない。今回の中山記念はその最たるものだったが、こうした環境下での予想は特にハマる、ハマらないの差が大きいように思う。ちなみに筆者は当然のように後者だった。泣きそうである。

レースをじっくりと見てみると、勝ったマテンロウスカイ、2着のドーブネ、3着のジオグリフはいずれもスタートが良く、最序盤の時点で前に付けていた上、3頭ともが最内のインコースを確保した。この形になったことで、他の先行勢は微妙に外を回らざるを得ず、差し・追い込みに構えた組は最後に詰まる結果を嫌ったのか、多くの馬がインコースを空けて外を走っていた。
雨の影響を受けていたことを考えると、1000m通過が58秒5というのはやや速いペースに映っただけに、いくらコースロス無く運んでいても前が止まりそうな雰囲気はあった。実際にラスト600mで大きくラップも落ちており、前が苦しかったのは間違いないのだろうが、結果的には外を回っていた組はそれ以上に苦しくなった。直線を向く頃には脚を失う馬が大半だったのだ。終わってみれば、完全に”前有利、内有利”な結果。開幕週によくある傾向が、雨によってより強固なものとなって顕在化したことになる。

勝ったマテンロウスカイは、4走前のケフェウスSにおいて暴走逃げを打ってしまうほど、気性に難しさを抱えている馬。雨で緩んだ馬場で、こうした激しさが適度な前進気勢として働いたように感じる。全くロスのないレース運びを実現した横山典弘騎手の手腕もさすがと思えるものだった。
ここ2走はマイル戦に挑戦していたが、マイルと1800mでは刻むレースレベルに大きな差がある馬で、”1800m巧者”である可能性を強く感じる。だが、この後に控えるG1は2000mの大阪杯やマイルの安田記念など、いわゆる根幹距離のレースばかり。そこでどのような走りを見せるかで、本馬のイメージは大きく変わる可能性がある。現状ではマイルだとやや頭打ちの感があるので、上のレベルに到達する可能性があるとすれば2000mのほうだろうか。血統構成も中長距離の要素が強い馬なので、今回のような落ち着いたレース運びが叶えば見せ場があるかもしれない。

2着のドーブネも、マテンロウスカイと同様に”1800m巧者”の印象を強めた。
逃げ馬のテーオーシリウスのダッシュが鈍く、引っ掛かる気性のエエヤンも2番手で落ち着き、単騎逃げの形が叶ったのも大きかったが、指数的な見地からすると、ここ3戦で走っていたマイル戦よりも、今回や昨春~昨夏の間に走っていた1800m戦のほうが明らかにレベルが高い。自身の持つ気性、スピード、スタミナのバランスがちょうど良くなるのがこの距離なのだろう。マイルでもスピード負けしているわけではないが、もう一段上を目指すのならば1800~2000mのほうが伸びしろはありそうだ。


3着のジオグリフは芝の2000m以下という久しぶりの条件で復活。
大きく馬体が増えていたように余裕のある作りだった分甘くなった印象だが、クラシックホースとしての存在感はしっかりと示したと言える。近走は惨敗続きだったが、序盤から行きっぷりも良く、小回り向きの機動力も健在。競走意欲が落ちていないことを確認できたのは大きな収穫だろう。この好走で今後は芝のマイル~中距離が主戦場となってくるだろうし、楽しみな馬が帰ってきた。

一方で、今年の飛躍を期待される人気の4歳2騎は苦戦。
ソールオリエンスはデビュー戦以来の1800mで、前走の有馬記念から大きく距離短縮となるローテ。元々道中はそれほど前向きでないタイプなだけに、後方からの競馬となってしまったのは仕方のないところか。勝負所や直線も大きく外を回る形となり、普通ならば惨敗しても不思議ないところから4着まで押し上げてくるのだから、高い能力を持つのは間違いないし、長い距離よりは中距離のほうがいい走りを見せそうな雰囲気はある。だが、久々の今回でも馬体が増えておらず、肉体面での大きな成長が見られないのは懸念材料だ。この一年の間で更に上の領域に到達できるのか、次走以降の走りに注目が集まる。

ソールオリエンスと人気を分け合ったエルトンバローズは、前目にこそ付けていたものの、最終コーナーの時点で既に苦しい手応え。陣営のコメントによれば、緩い馬場でかなりノメるところがあったようだし、前走からさらに8kg増の馬体で余裕残しの仕上がりだった分もあるかもしれない。今後に弾みの付く内容ではなかったが、その分次走への上積みは大きそうで、反撃も十分に考えられるだろう。
ただ、路線は悩ましい。走りからはマイルでも中距離でも対応してきそうな雰囲気があるが、兄姉は全て1200~1400mで好走しているだけに、短い距離への適性を秘めている可能性もある。本馬のベスト条件がどこにあるのか、陣営の選択や自身の走りに今後も注目しておきたい。


(きり)プロフィール
ウマニティ公認プロ予想家。レース研究で培った独自の血統イメージに加え、レース戦績や指数等から各馬の力関係・適性を割り出す”予想界のファンタジスタ”。2023年1月には、長年の活躍が認められ殿堂プロ入りを果たす。

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