中央競馬ニュース

【ヴィクトリアマイル2024】重賞レースおさらい帳 幸せの薔薇、春の府中に乱れ咲き! テンハッピーローズが脅威の末脚で大波乱を演出

 0   10   1,341
シェアする  x facebook LINEで送る
【ヴィクトリアマイル2024】重賞レースおさらい帳 幸せの薔薇、春の府中に乱れ咲き! テンハッピーローズが脅威の末脚で大波乱を演出


ナミュールvsマスクトディーヴァ

戦前から二強対決と目されていた今年のヴィクトリアマイル。共に直線における末脚をセールスポイントにしている馬で、ここに至るまでに示してきたスケール感も明らかに他馬より大きなものであった。

形成されたオッズも2頭が完全に抜け出す形で、あとはどちらが強いのか、どんなガチンコ対決を見せてくれるのか、そういった興味や期待を多くのファンが抱いていたと思う。

そう、最後の直線を迎えるまでは。



レースの流れは予想以上に苛烈なものとなった。

確固たる逃げ馬がコンクシェルくらいしかいないと思われたメンバー構成であったが、近い脚質を持つフィールシンパシースタニングローズが彼女の楽逃げを許さない。その直後ではフィアスプライドも前へプレッシャーを与え続け、最初の2F通過は22秒7。ここ10年の中でも最速タイとなるペースを経て直線を迎えることとなった。

こうなれば、中団で虎視眈々と追走していたマスクトディーヴァと、出遅れて後方にいたナミュールにとってはありがたい展開。強靭な末脚が活きるためのお膳立てが整う中で、あとは自分たちの走りをするだけだった。


そして実際に、"彼女"は女王に相応しい威力の末脚をもって、観衆の視線を一手に集める主役となった。豪快にして鮮烈。戦前のファンの期待通り、もしくはそれ以上と思える迫力で、あっという間に先頭へと躍り出たのだ。


だが、多くのファンにとって予想外だったのは、"彼女"が鹿毛でも黒鹿毛でもなく、栗毛の馬だったこと。

鞍上が、数々の大レースを制してきたキャロットファームでも社台レースホースでもない勝負服を身に纏っていたこと。

そして、目の前で圧勝劇を演じようとしている馬が、2倍台のオッズで並んでいた二強のいずれかではなく、200倍台のオッズを付けていたブービー人気馬であったことだった。

テンハッピーローズ


戦前はほとんど注目を集めていなかった伏兵中の伏兵が、圧倒的強者の走りでゴールへと飛び込んでいた。


G1に駒を進めてはいたものの、これまで重賞すら勝ったことのなかったテンハッピーローズ

キャリアのほとんどが1400m戦ということもあり、マイルのG1で勝ち切るというシーンを想像できた方はそう多くないだろう。

だが血統的には父エピファネイア、母父タニノギムレットと、クラシックホースの血を引いている馬。2~3歳時にはアルテミスS、フェアリーS、チューリップ賞と王道を歩んでいたこともある。

だが、王道での大成を阻んだのは自身の気性。行きたがる面が強く、それを抑えて競馬での結果に繋げるには、1400mにまで距離を短くするしかなかった。血統やフィジカルの面ではマイルは十分にこなせる条件だったが、メンタル面で結果が出しにくい馬だったのだ。

それが今回想定以上にペースが流れたことで、これ以上なく完璧に折り合って脚を溜めることができた。自身の難しい部分を早々に封じ込めることができれば、あとは得意の左回りでのびのびと走るだけ。結果的にG1の厳しいペースが、本馬の潜在能力を解き放つ鍵になったと言えるかもしれない。

この勝利をもって本馬をどれほど評価していいのか、現時点でははっきりと決めかねる部分が多いが、”ハマって勝った”にしてはやたらとインパクトのある勝ち方だった。これをきっかけに覚醒状態が続くのか、それとも元のパフォーマンスレベルに収束していくのか、いずれにせよ次走の走りに大きな注目が集まることになる。


勝ち馬には抵抗できなかったものの、先行勢総崩れの中を踏ん張ったのが2着のフィアスプライド


前走の中山牝馬Sでは不本意な結果になったものの、今回のメンバーの中では上位の能力を持つということを改めて印象付けた。

この馬もやや紙一重な気性の持ち主で、スタートや追走面での危うさも抱えるだけに、勝ち馬同様にG1の流れがフィットした部分があったのかもしれない。今後は緩い流れでもしっかりと結果を残せるかどうかがステップアップの鍵となる。


これに続く形でなんとか3着を確保したのが、二強の一角マスクトディーヴァ

無難なスタートから道中は中団に付け、直線も伸びてくる雰囲気はあったが、外にいたドゥアイズの徹底したブロックと、直線で進路を切り替えてきたウンブライルサウンドビバーチェの動きにより、進むべき道が完全に塞がれてしまった。その後は内に進路をとって目立つ伸びを見せていただけに、惜しまれる結果と言える。

今年に入ってからの3戦はいずれもどこか不本意な部分があり、昨秋のように思う存分伸び切るというレースができていないが、個人的にはやはりマイルは少し短いように思えるし、やや大味なタイプである分、道中や直線で俊敏な立ち回りを要求されるような形も合わなそう。もう少しゆったりと運べる条件ならば大きく変わってきそうなので、この後の反撃に期待したいところだ。


もう一方の二強・ナミュールはスタートの大出遅れも響いて8着。レースの流れは悪くなさそうだったが、近走で見せていた豪快な末脚は鳴りを潜めた。

戦前から不安材料として挙げられていた海外帰りの厳しいローテと難しい調整過程により、どこか心身ともに乗り切らない面があったように思える内容で、力負けでないのは確かだろう。

しっかりと時間をかければ立て直しは十分に可能だろうし、一時期よりもマイラーっぽさが薄れ、距離の融通も利くようになっているようにも映る。その分レースの選択肢も幅広そうで、今度はどこであの末脚を見ることができるのか楽しみは尽きない。



馬券的には相当に難しいレースだったが、G1であっても時にはこんな決着もある。

テンハッピーローズで言えば、1週前追い切りの内容が絶好だったし、筆者が残している前走・阪神牝馬Sのメモにはこう書いてあった。

”外差し傾向強まる中で内から見せ場。左回りベストでハマれば上位進出可能”

ここまで書いていてなぜ無印なのか。メモをバットに巻き付けて、予想時の自分を思う存分殴ってやりたい。嗚呼。

この記事はいかがでしたか?
ナイス (10)

このニュースへのコメント

コメントはありません。

関連競馬ニュース

新着競馬ニュース

人気競馬ニュース

会員登録(無料)でできること

レース情報

今週の注目レース

6月2日()
安田記念 G1
6月1日()
鳴尾記念 G3

⇒今週の番組表へ

先週のレース結果

5月26日()
日本ダービー G1
目黒記念 G2
5月25日()
葵ステークス G3

⇒先週の番組表へ

総賞金ランキング
JRA競走馬総賞金ランキング
4歳以上
1 ドウデュース 牡5
102,726万円
2 スターズオンアース 牝5
84,098万円
3 リバティアイランド 牝4
74,444万円
4 ディープボンド 牡7
73,123万円
5 ジャスティンパレス 牡5
65,388万円
6 シャフリヤール 牡6
59,685万円
7 タスティエーラ 牡4
57,005万円
8 テーオーロイヤル 牡6
51,827万円
9 セリフォス 牡5
49,313万円
10 ジャックドール 牡6
49,004万円
» もっと見る

3歳
1 ジャスティンミラノ 牡3
40,307万円
2 ダノンデサイル 牡3
38,200万円
3 ジャンタルマンタル 牡3
32,053万円
4 ステレンボッシュ 牝3
28,331万円
5 アスコリピチェーノ 牝3
22,165万円
6 チェルヴィニア 牝3
21,519万円
7 シンエンペラー 牡3
19,041万円
8 コスモキュランダ 牡3
15,392万円
9 レガレイラ 牝3
11,278万円
10 ライトバック 牝3
11,256万円
» もっと見る