池添騎乗で4番人気の
ソングラインが直線で差し切り、4度目の挑戦でうれしいGⅠ初制覇。池添騎手はちょうど2年ぶり、林調教師は開業5年目で初のGⅠ勝ちとなった。2着は2番人気の
シュネルマイスター。1番人気の
イルーシヴパンサーは8着に敗れ、平地GⅠの1番人気馬はJRAタイ記録となる12連敗となった。
同じ府中の地で、1年前の悔しすぎる忘れ物を取り返した。
ソングラインが4度目の挑戦でGⅠ初制覇。池添騎手は3万人超のファンの前で右手の人さし指を突き上げ、マイル界の新女王誕生を高らかにアピールした。
「この馬の末脚を信じて4コーナー手前から動かしていきました。最後のひと伸びがサウジ(遠征)を経験して強くなりましたね。まとめて全部かわしてくれました」
中団で折り合いをつけて4コーナーで大外に進路を取ると、執念の右ステッキを連打。0秒5差に12頭がひしめく大接戦からグイッと頭ひとつ抜け出した。
昨年の
NHKマイルCはゴール寸前まで先頭に立ちながらハナ差2着に泣き、前走の
ヴィクトリアマイルは鞍上が「自分の油断」と責めた3コーナーでのつまずきも影響して5着に終わった。「自分はGⅠでこそ(強い騎手)と思っているので。去年は悔しい思いをしたし、今年は必ず取ると決めていました」。勝負師らしい熱いハートが、自身2年ぶりとなる27個目のGⅠタイトルをつかむ原動力となった。
開業5年目の林調教師はうれしいGⅠ初勝利。「(レースは)半分見ているようで、半分見ていないような。直視できない感じでした。まだ正直実感が湧かないというか、ふわふわして地に足が付かない感じです」と率直な感想を口にした。前走から中2週と間隔が詰まっていたが、「強い牡馬もいて挑戦者の立場。もう一歩踏み込んだ調教を心掛けました」。攻めの姿勢を貫いたことが戴冠につながった。
東大医学部看護学科卒と異色の経歴を持つトレーナー。当初は競馬の世界に進むことを反対していた両親が、今は最も熱心な応援団だ。「ちょっとは恩返しできたのかなと思います。『おやじ、おかん、やったよ!』と伝えたいですね」。19日の父の日を前に最高のプレゼントを届けた。
今秋は
マイルCS(11月20日、阪神、GⅠ、芝1600メートル)や優先出走権を獲得した米GⅠBCマイル(同5日、
キーンランド、芝1600メートル)が視野に入ってくる。「メンタル、肉体とも完成の域に達した感じですね。きついローテだったのでまずは休んでほしい。秋が楽しみです」と池添騎手はさらなる飛躍を期待する。
ソングラインはこの先もマイル戦線に確かな足跡を残していくはずだ。
■
ソングライン 父
キズナ、母ルミナスパレード、母の父
シンボリクリスエス。青鹿毛の牝4歳。美浦・
林徹厩舎所属。北海道安平町・ノーザンファームの生産馬。馬主は㈲サンデーレーシング。戦績11戦5勝(うち海外1戦1勝)。獲得賞金4億4166万9300円(うち海外1億352万9300円)。重賞は2021年GⅡ
富士S、22年サウジGⅢ1351ターフスプリントに次いで3勝目。
安田記念は
林徹調教師が初勝利、
池添謙一騎手は20年
グランアレグリアに次いで2勝目。馬名は「オーストラリアに伝わる道の名。祖先の足跡」。
■安田記念アラカルト
◆
林徹調教師 初出走で勝利。JRA・GⅠは延べ13頭の出走で初勝利。これまでの最高着順は2021年
NHKマイルC(
ソングライン)の2着。重賞は
福島牝馬S(
アナザーリリック)に続く今年2勝目、通算5勝目。
◆
キズナ産駒 今年出走の2頭が初出走で勝利。JRA・GⅠは21年
エリザベス女王杯(
アカイイト)以来で通算2勝目。重賞は
京都新聞杯(
アスクワイルドモア)以来の今年3勝目、通算18勝目。
◆関東馬の1~3着独占 21年(1着
ダノンキングリー、2着
グランアレグリア、3着
シュネルマイスター)に次いで2年連続で通算4回目。JRA・GⅠでも21年の当レース以来。
■売り上げ、入場者数
安田記念の売り上げは222億2911万9400円で前年比115・5%とアップ。入場者数は3万2471人で前年比668・4%だった。