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ディープ、死す-。2005年に無敗で皐月賞、日本ダービー、菊花賞の3冠を制し、GI7勝を挙げたディープインパクトが30日午前6時40分、北海道・苫小牧の社台ホースクリニックで死んだ。17歳だった。この日、頸椎(けいつい)骨折が判明し、安楽死の措置が取られた。父としても多くの活躍馬を送り出し、日本の競馬界を支えたスーパーホースの死を、武豊騎手(50)は「私の人生において本当に特別な馬でした」と惜しんだ。
生まれ故郷の北海道の空の下、不世出の名馬が天国へ飛び立った。17歳で死んだディープインパクトは、人間で例えるなら、おそらくは50代前半。別れは突然だった。
2月18日に原因不明の首の痛みを訴え、24頭に交配した時点で種付けを中断。種牡馬生活を送っていた北海道安平町・社台スタリオンステーション(SS)で経過観察と原因究明が続けられたが、快方が見込めず手術を決断した。米国から招へいした頸椎手術のエキスパートが執刀を担当し、2000以上の症例を持つ獣医師のチームが、7月28日に患部を固定する手術を行った。
手術は成功し、一時は草を食べ、馬房で動き回るまでに回復。しかし29日午前に容態が急変し、起立不能の状態に陥った。その後、当初に傷めた部分とは異なる頸椎部の骨折が判明。回復の見込みがなく、再手術も不可能なことから30日に苦渋の選択が取られた。
「(首の痛みが)日常生活に支障をきたしており、種牡馬として復帰させたい思いもあり、前向きな治療(手術)を試みました。手術はうまくいき、直接、(死と)手術との因果関係は認められないのですが、こういう結果になり残念です」
社台SS事務局の徳武英介氏(57)が憔悴した表情で振り返る。過去、施術を受けた馬の95%以上は改善がみられたとされており、ディープ自身も元気な姿を見せた矢先の悲しい結末。それでも最期のときは「もう観念したというか、眠るように」(徳武氏)安らかだったという。
競走生活は、その名の通り常に衝撃的だった。2004年12月のデビューから連勝街道を突き進み、05年に7戦全勝で菊花賞を制覇。1984年のシンボリルドルフに次ぐ史上2頭目の無敗の三冠馬に輝いた。驚異的な加速力で、先行馬を一気に抜き去る競馬でファンを魅了。そのラストスパートは「飛ぶ走り」と形容され、全ての脚が地面についていない滞空時間を調べるなど、強さを科学的に解明する研究も各方面で行われた。引退後は種牡馬としても44頭ものGI馬を送り出した。
全14戦に騎乗した武豊騎手は「体調が良くないと聞いていたので心配していたのですが残念です。私の人生において本当に特別な馬でした。彼にはただただ感謝しかありません」とコメントを発表。31日に記者会見をして、改めてディープへの思いを伝える。
2006年の凱旋門賞(3位入線→薬物検出で失格)で成し遂げられなかった世界制覇の夢。この秋、凱旋門賞に挑むフィエールマンやロジャーバローズといった産駒に夢の続きは託された。
◆池江泰郎元調教師 「けさ(30日)亡くなったと聞いてびっくりしました。今年は楽をさせると聞いていましたし、手術をするとは聞いていました。ショックですね。調教師として最高のレース、夢のレースを勝たせてもらいました。宝物のような馬です。種牡馬としても活躍してくれましたし、海外でも産駒がGIを勝ちました。もう少し長生きしてほしかった。残念ですが、運命なのかなと…。今は冥福を祈るしかありません」
★人間でいえば50歳台前半
一般的にサラブレッドの寿命は25歳前後だが、1964年の三冠馬シンザンは26歳まで種牡馬生活を送り、35歳まで生きた。馬は初期の成長のスピードが速く、単純に人間の年齢にあてはめるのは難しいが、3歳晩春の日本ダービーに出走する馬は17~18歳で高校生くらい。その後の成長は緩やかで、10歳は30歳台半ば。ディープインパクトの17歳は50歳台前半と推測される。
ディープインパクト 2002年3月25日生まれ、17歳。父サンデーサイレンス、母ウインドインハーヘア、母の父アルザオ。鹿毛。北海道早来町(現・安平町)・ノーザンファームの生産馬。競走馬として栗東・池江泰郎厩舎に所属。馬主は金子真人ホールディングス(株)。戦績14戦12勝。獲得賞金14億5455万1000円。07年に安平町の社台スタリオンステーションで種牡馬となり、初年度産駒から4頭のGI馬を送り出す。12~18年にJRAのリーディングサイアー(種牡馬ランキング1位)。馬名は「深い印象」。
★ディープインパクトの競走成績はこちら
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