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【凱旋門賞まるわかりガイド】日本馬の挑戦を振り返る

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 日本調教馬による凱旋門賞挑戦は、1969年のスピードシンボリによって始まった。3歳時のダービーで28頭立ての27番人気にすぎなかった馬が、果敢に世界へと立ち向かい、45年のときを経てその功績がよみがえる。

 4歳秋にもワシントンDC国際に挑戦(9頭立て5着)したスピードシンボリは、6歳秋になって凱旋門賞を最大目標に掲げた遠征を敢行。しかも、7月には英国・アスコットのキングジョージ6世&クイーンエリザベスSに出走(5着)した。ドーヴィル大賞(10着)を経ての凱旋門賞参戦という壮大なキャンペーンだったが、大目標の凱旋門賞は後方から差を詰めたものの着外(フランス競馬では、11着以下は着外扱い)に終わっている。

 しかし、帰国後にぶっつけで臨んだ有馬記念を快勝。7歳になった翌年も宝塚記念を勝ち、有馬記念では連覇を果たした。和田共弘オーナーが海外の一流レースに挑戦させ続けたことが確かな見立てであることを証明したスピードシンボリは、7冠馬シンボリルドルフの母の父としても知られている。現在まで続く日本馬の挑戦は、この馬の存在を抜きには語れない。

 日本調教馬2度目の凱旋門賞挑戦は、前年の天皇賞・春、宝塚記念を制した1972年のメジロムサシだ。スピードシンボリでの遠征を経験した野平祐二騎手が、自身の騎乗技術向上と日本競馬のレベルアップを目的として、当時、欧州に長期滞在していた。このチャレンジを応援する数人の馬主グループに名を連ねていたのが“メジロ”の北野豊吉氏。自身の所有する一流馬をフランスへと送り込んだ。

 しかし、前哨戦として出走予定だったドーヴィル大賞典のレース直前に馬房で負傷。そのダメージから立ち直れないまま出走した凱旋門賞は、あえなく18着に終わっている。

 日本のクラシックホースとして初めて凱旋門賞に挑戦したのは、ダービー馬シリウスシンボリだ。当初、和田共弘オーナーは1歳上の3冠馬シンボリルドルフとともに欧州に遠征するプランを描いていたが、ルドルフが肩の故障で宝塚記念を回避したため、ダービーを制したばかりの3歳馬シリウスだけが渡欧した。

 欧州の厩舎に移籍して、85年のキングジョージ(8着)を皮切りに各地を連戦。計14戦で勝ち星を挙げることはできなかったが、バーデン大賞4着、フォワ賞2着などの成績も残している。凱旋門賞には出走したのは1986年の秋。当時、世界最強とうたわれたダンシングブレーヴが圧巻の勝利を飾った一方で、15頭立ての14着に終わっている。

 13年ぶりとなる日本馬の凱旋門賞挑戦を敢行したのは、1999年のエルコンドルパサー。世界の頂点に最も近づいた瞬間として、今もその走りは語り草となっている。

 前年にNHKマイルCとジャパンCを優勝すると、渡邊隆オーナーは長期滞在によるフランス遠征を決断。半年に及ぶキャンペーンを敢行した。渡仏初戦のイスパーン賞こそ2着に敗れたが、現地の馬場に対する優れた適応力を見せたエルコンドルパサーは、続くサンクルー大賞で前年の凱旋門賞馬サガミックスや、前年の愛仏ダービー馬ドリームウェル、さらにドイツの強豪タイガーヒルなどを相手に、直線半ばまで持ったままの楽勝。ひと息入れて臨んだフォワ賞も制して、本番に臨んだ。

 走り慣れた欧州馬でさえ苦労する道悪馬場で果敢に先手を奪うと、最後の直線でも後続を突き放す力走。しかし、1完歩ごとに差を詰めてきた3歳馬モンジューにわずかにかわされ、2着に終わった。現地メディアも「今年の凱旋門賞には2頭の勝ち馬がいた」と表現したほどの大健闘。蛯名正義騎手は悔し涙を流したが、場内からは惜しみない拍手が送られた。

 サンデーサイレンス産駒による初の凱旋門賞参戦は、2002年のマンハッタンカフェだった。この年は、不世出の名種牡馬である父が蹄葉炎のために天に召され、ほぼ時を同じくしてエルコンドルパサーも急逝。日本競馬に大きな足跡を残した2頭の思いを背負っての渡仏となった。

 しかし、レースでは見せ場なく13着に敗れている。敗因は左前脚の屈腱炎。好位を進んでいたが、レース終盤を迎えたあたりで急に手応えが悪くなり後退。診断の結果、左前脚に屈腱炎を発症していることが判明した。充実一途の戦績を残しての渡欧でもあり、「まともだったら…」という声が数多く聞かれた。

 前年のジャパンCを圧勝し、夏の宝塚記念もV。遅咲きの名馬として花開いたタップダンスシチーは2004年、7歳秋にして凱旋門賞に挑んだ。しかし、輸送機トラブルによる調整不足という、不可抗力の影響で17着に終わっている。

 当初、9月26日に渡仏する予定だったが、前日の昼前になって出発できないことが判明。次の出発便は3日後で、「それでは現地での調整時間が足りない」と一時は出走断念を表明した。しかし、陣営が改めて協議を重ね、急転、凱旋門賞参戦が決定。レース2日前に現地到着という強行軍だけに、大敗もやむを得ないことだった。

 それでも、レースでは自分の形を貫いて先行。タップダンスシチーらしさを垣間見せている。凱旋門賞の大敗が力の衰えではなかったことは、帰国初戦の有馬記念で0秒1差2着という走りを見せたことでも明らかだった。

 日本調教馬による海外挑戦の中でも、最も注目を集め、そして期待された遠征は、ディープインパクトによる2006年の凱旋門賞挑戦だろう。前年、シンボリルドルフ以来史上2頭目となる無敗の3冠を達成した英雄が、満を持しての参戦。日本から応援に訪れたファンも6000人以上と報じられ、当日は日本人専用のインフォメーションや売り場が設けられるフィーバーとなった(この年以降、日本馬が出走する際には日本人向けの施設が設けられている)。

 レースは凱旋門賞史上2番目に少ない8頭立て。いつもの後方待機ではなく、中団のやや前でレースを進めたが、直線では独特の“飛ぶ”走りが見られず、デビュー以来初めて後ろの馬に差される屈辱も味わう3着に終わった。

 帰国後、失意の敗戦に追い打ちをかけるように禁止薬物(イプラトロピウム)の検出がフランスギャロ(フランスの競馬統括組織)から発表され、ディープインパクトは3位入線→失格という戦績が残っている。

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