2019年以来、5年ぶりに七夕当日の開催となった
七夕賞。
新鋭から古豪までキャリアも脚質も様々な馬が揃い、はっきりしない天気予報も含め、一筋縄ではいかない雰囲気が戦前から漂っていた。"荒れる夏のハンデ重賞"という長年培われてきたレースイメージも手伝って、伏兵の台頭を期待した方も多かったはずだ。
レース自体も非常に難しい流れが形成された。
バビット、
セイウンプラチナの逃げ馬2頭がどのような形で自分の競馬を貫くのかというのは、このレースを紐解くための鍵の一つであったが、
バビットは頑なにハナを譲らず、
セイウンプラチナは2番手から力んで
バビットを突き続けた。
これにより、2F目と3F目に10秒台のラップが連続して刻まれるなど、前半のペースは短距離戦かと思えるほどの激流。当然のように馬群は縦に長くなるが、あまりにも伸び過ぎた隊列が曲者だった。前に付けた馬は当然辛いが、後方待機の馬たちの多くは追走や位置押し上げに伴う負荷のほうが高くなってしまった。あまりにも前と離れ過ぎてしまったのだ。
そんな中で、勝った
レッドラディエンス・戸崎騎手の立ち回りは巧みだった。
序盤は先行勢をすぐ前に見る位置で運び、ペースが速いと見るや徐々に下げて後方待機馬群の先頭へ合流。ハイペースに巻き込まれることを避けながら、前を射程に入れられる絶妙な位置を確保していたのだ。
加えて、馬自身の強さも光った。
これまでゆったりとした流れのレースばかり経験していた馬で、小回りローカルの忙しい流れは不慣れだったはずだが、それを全く感じさせないスムーズな加速。他馬と比べても脚色の違いは歴然で、これが初めての重賞挑戦だったとは思えない堂々たる勝ち方だったと思う。
これで11戦連続の馬券圏内。コース形態や流れの違いに左右されない対応力も示し、今後の選択肢も大きく広がっただけに、どのような路線を歩んでいくのか楽しみな存在だ。
2着の
キングズパレスは後方馬群から進める形となり、3~4コーナーや直線でもあまり余裕を感じる走りではなかった。右回りでのモタれ癖も相変わらずで、単純に力だけでもぎ取った結果であるように映る。
レッドラディエンスだけでなく、この馬もまた相当な堅実派だ。
ここ2戦で、G3クラスにおいては上位の能力を持つという点と、左回りのほうがパフォーマンスが高いということがより明確となっただけに、この後は新潟や中京、東京のレースを目指すことが増えるのではないだろうか。血統的にはマイルくらいでも良さそうな構成なので、路線を変えた戦いも見てみたい気がする。
3着には
ノッキングポイントが入り、復調気配を示した。
今年に入ってからの2走はあまりにも淡白な負け方だったが、今回は厳しいペースの中でも好位から我慢が利いた。道中だらっとした流れからの瞬発力勝負よりも、こうした消耗戦のほうが向いているのかもしれない。
血統も含め、どこに真の適性があるのか非常に分かりにくい存在で、これからも出走してくるたびに評価に迷うことになりそうだが、今回の好走が上昇のきっかけとなるだろうか。次走が試金石となりそうだ。
4着の
ダンディズムはいつもの出遅れから、押して好位を目指す積極策。
結果的には厳しい流れの中に身を投じる形になってしまったが、持ち前の小回り適性を活かして大きな見せ場を作った。どうしてもゲート難がつきまとう分、安定して好走できる馬ではないが、基礎能力は依然高い水準を維持している。
5着の
リフレーミングはいつも通りの後方待機策となったが、今回はあまりにも特異な展開になってしまった。
3~4コーナーでは
キングズパレスや
カレンルシェルブルの動きにより、自慢の機動力が削がれたような形になっており、やや不完全燃焼だった感が強い。それでも最後は伸びているだけに、今後も小回りの舞台なら巻き返しがあっても不思議ないはずだ。
終わってみれば2番人気と1番人気によるワンツー決着で、戦前の”もやもや感”はどこへと言った感じの順当な結果に。
勝ち馬の勝負服に煌めく星がより目立って見え、「あぁ、七夕だもんねぇ」と現実逃避をすると同時に「ラディエンスってどういう意味だろう?」と思い立った。
調べてみると、その意味は”光輝、きらめき”。
なるほどなるほど。七夕開催の
七夕賞には本当にぴったりなネーミングでもあったのか。お見事!