まだまだ暑い日が続くが、今週から阪神、中山で秋競馬がスタート。阪神競馬のオープニングを飾るのは
産経賞セントウルS(10日、GⅡ、芝1200メートル)だ。秋のGⅠ第1弾・
スプリンターズS(10月1日、中山、芝1200メートル)の前哨戦。快速3歳馬
ビッグシーザー(牡)が、世代を超えた主役となるべく出陣する。管理する
西園正都調教師(67)=栗東=に手応えを聞いた。(取材構成・丸橋正宣)
--オープン特別を3連勝して挑んだ前走の葵Sは3着だった
「抜群のスタートを切った
モズメイメイ(1着)を負かしに行ったぶんです。最後は甘くなったけれど、詰め寄ってはいたし、3歳の春で芝1200メートルを1分7秒2で走るのは並みではない。十分な競馬だったと思いますよ」
--新馬戦から一貫して芝1200メートルを使ってきた。デビュー前から短距離向きの素質を感じていたのか
「お父さんが短距離(
ビッグアーサー=2016年
高松宮記念勝ち馬)でしたからね。体形もスプリント向きだったので適性は見込んでいました。だけど、普通のキャンターもできるほど精神的に余裕があったし、操縦性が高かったです」
--ここまでの調整過程は
「(8月)24日にはCWコースで(6ハロン)77秒台の時計を出していたので、1週前(同31日)は軽めに行いました(6ハロン82秒0-11秒3)。うまく体を使えるように、コースにも入れて調整しながら、じっくりやってきました。仕上がりに関しては文句がありません」
--夏の休養を経て変化はあるか
「デビュー前から変わっていませんが、体はまだまだ緩く、芯が通っていない部分があります。ただ、そのなかでもこれだけの動きができていますからね。もまれながら、さらに成長していってくれればと思います」
--緩さを残しながらも世代のスプリント路線をけん引してきた
「一番、われわれが驚いたのは福島2歳S。出負けして完全に負けパターンの競馬になったけれど、それでも完勝でした。自分で不利な展開を克服してくれたので『これは走るな、強いな』と思った瞬間でしたね。弟(
ビッグドリーム=
小倉2歳S4着)も短距離で強い競馬を見せてくれているし、本当にレベルの高い馬だと思います」
--現状の長所は
「やはりスピードと操縦性の高さですね。スタートも安定していて、前めでしっかり競馬できることも強みです」
--今回は古馬(4歳以上)との初対決になる
「古馬、古馬と人間は言うけれど、馬は分かっていないですからね。レースに出てしまえば、同じ土俵に立って勝負をするわけですから。阪神芝1200メートルはマーガレットSを快勝している舞台ですし、今回は本当に楽しみな、試金石となる一戦です」
--改めて意気込みを
「中京芝1200メートルの2歳レコードで未勝利戦を勝って、前走の時計も優秀でした。やはりスプリント路線では強いですね。そして、厩舎としても、
ハクサンムーンで
ロードカナロアを止めたレースで縁がありますからね。ここでしっかりと重賞タイトルを取って、
ハクサンムーンの忘れ物を取りに行きたいと思います」
■西園 正都(にしぞの・まさと)1955(昭和30)年12月29日生まれ、67歳。鹿児島県出身。74年3月に栗東・大根田裕也厩舎から騎手デビュー。3875戦に騎乗して303勝(うち重賞1勝)をマークし、97年2月に調教師免許を取得して引退。98年3月に栗東で開業。2001年
阪神JFでGⅠ初勝利(タムロチェリー)。4日現在、JRA通算675勝(うち重賞はGⅠ4勝を含む30勝)。長男・翔太もJRA調教師。
◆2013年の
セントウルS 当時、国内外でGⅠ4勝を含む5連勝で最強短距離馬としての地位を確立していた
ロードカナロアが単勝1・4倍の1番人気。当時4歳で、前走の
アイビスSDで重賞2勝目を挙げていた
ハクサンムーンは同4・4倍の2番人気だった。レースはムーンが大外枠からハナを奪って主導権を握る。カナロアは3番手。直線でカナロアがかわしにかかるが、ムーンも粘りに粘ってクビ差振り切った。続く
スプリンターズSでは再びムーンが逃げたが、中団から伸びたカナロアに差され、カナロア1着、ムーンが2着だった。
◆3歳馬は連対率トップ
セントウルSで3歳馬が勝ったのは2015年の
アクティブミノルまでさかのぼる。過去10年で1勝、2着3回ながら、15頭しか出走していないため、連対率は26・7%と世代別ではトップだ。2着馬を見ると18年
ラブカンプーは葵S2着、19年
ファンタジストは
小倉2歳S、
京王杯2歳S勝ち、21年
ピクシーナイトは
シンザン記念勝ち。世代別でも重賞で上位争いしていた馬なら、古馬相手でも通用している。