9月に入っても一向に涼しくならない新潟。
例年であれば、暑い中にも一瞬の涼を感じる瞬間もある時期なのだが、ついに最終週に至るまでただただ暑い開催のまま終わってしまった。涼しいどころか寒くなったのは筆者の財布の中くらい。もう少し色々とバランスが取れて欲しいものである。
しかし、そんなあれこれを忘れさせてくれるくらい、馬達は各地で熱いレースを見せてくれた。
この
新潟記念も例外ではなく、
フラーズダルムの奇襲的な逃げ戦法に始まり、3歳馬
ノッキングポイント敢然とした早め先頭のレースぶりと、それを追いかける歴戦の古馬達との脚比べ。直線が長いことで、そのヒリつくような攻防を普段よりも満喫できた気がする。
見た目からして圧が強い古馬の追撃を堂々と抑えた
ノッキングポイントは、ここが重賞初制覇。世代トップを決めるダービーにおいて、低人気と言えど5着に飛び込んだ能力は伊達ではなかった。
レースがかなりのスローで進んだことで、序盤はハナにすら行けそうな前向きさを見せていたものの、鞍上に抑えられるとスッと控えて先行集団を見る位置に。多少力み気味の走りではあったが、折り合いを欠くまでには至らず、適度な前進気勢を秘めた走りという印象を受けた。その分か、直線に入っての反応も機敏。仕掛けられると早々に先頭に立ち、その後も脚を持続させて長い直線を乗り切った。
結果的には完勝と言える内容だったが、道中のペースやメンバー構成もあってか、指数的な見地から見た場合、レースレベルは低調。古馬相手に勝ち切ったという点においては評価すべきで、今後もG3レベルならば勝負になりそうな域には達しているが、G1など、更にその上を狙おうとした場合は、ここからもう数段上のレベルアップが必要そうだ。
幸い、成長力に富む
モーリス産駒で、本馬はまだ3歳。その走りがここからどう進化していくか楽しみは持てる。レースで見せた前向きな走りからは距離はあまり伸びない方が良さそうで、父と同様に1600~2000m辺りの安定勢力になっていくのではないだろうか。
2着には古豪
ユーキャンスマイルが持ち味の末脚を最後まで持続させて入線。
もう8歳になり、最近は馬券に絡むことも少なくなってきた馬だが、刻んでいるレースレベル自体は6歳頃からほぼ一定の数字になっており、大きく衰えている印象はない。右回りだと内にモタれる悪癖も健在なので、左回りの舞台、もしくは適性の高い長丁場で道中追走に苦労しないくらいの流れであれば、今回のように圏内に飛び込むだけの力は残している。今後も同じような条件が揃いそうな時は、印を回すことを検討すべき1頭だろう。
3着の
インプレスは、昨年末〜年初に至るまでの上昇度が急激で、重賞通用級の能力を示していた馬。
5月のメトロポリタンSと6月の
鳴尾記念で良い流れが途切れ、一気にレースレベルも下降していたが、中間の障害練習がいい刺激になったのか、今回は調教からして素晴らしい動きだった。
前半でどうしても前に行けない割に、道中で突然前向きさを見せて掛かり気味になる難しい馬なので、安定して走るのは難しそうだが、末脚の威力は確か。タイプ的には
ユーキャンスマイルに近いイメージがあるが、血統的にステイヤーという印象は持てないため、中距離において追走に苦労しないペースになった時に良さが出る感じか。狙い時が非常に難しそうなので、今後も重賞だとそう人気は上がらないだろうが、上手く射止めた時には高配当を運んでくれる存在になりそう。
4着の
プラダリアはさすがにここでは能力上位かと思えたが、わずかの差で馬券には絡めず。相手が強くても弱くてもこの辺りの着順に来るという、馬券的には非常に悩ましい存在と化している。
東京2400mの
青葉賞を勝ってはいるが、戦績を振り返ると高いレースレベルを刻んでいるのは阪神や中京などの急坂コース。今回の新潟や東京のように、”広くて軽い”と形容されるコースはもしかしたら向いていないのかもしれない。
血統も母系がかなりのスピードタイプで、全姉のヴェントボニートはマイル近辺で活躍。
エピファネイア産駒の半弟
グランデサラスも1400mに距離を縮めて良さを出しているように、本馬も少し距離を短くしてみるなど、飛躍のためには大胆なテコ入れも必要となってくるか。
5着の
バラジは発馬でアオり、序盤に好位を確保できなかったのが痛恨。
直線も進路がなく、大外に出してからようやくじわじわ伸び出した感じだったので、不完全燃焼感が強い。
それでも重賞2戦目で掲示板を確保しており、本当にゆっくりながら力をつけているのは確か。安定して勝ち負けに加わるにはもう数段上のレベルアップが必要そうだが、今後もローカルG3くらいのメンバーレベルならばチャンスがありそうだ。
一方、一番人気に推されていた
サリエラは出遅れから直線の伸びもパッとせず7着。
この中間は暑さ対策で新潟に滞在していたが、落鉄による坐石もあり、調整の難しさに拍車がかかっていた印象。力負けではないだろう。
全姉の
サラキアが急上昇したのは5歳になってからだったが、本馬はまだ4歳。この時点の姉と比較するとスケールは同等以上と思えるだけに、立て直されれば反撃は必至か。
4番人気
マイネルウィルトスは、道中でかなり外を回っての追走。
それでも直線は一瞬突き抜けるかと思える脚を見せたが、軽い馬場でのスローの決め手勝負というのは本馬の適性とは真逆。勢いが持続しなかったのは仕方ないところか。
それでも長期の休養による能力の衰えは感じなかったし、庭とも言えるタフな馬場や距離に変わればまた巻き返してくるはず。得意条件を見逃さず狙っていきたい。
○霧(きり)プロフィール
ウマニティ公認プロ予想家。レース研究で培った独自の血統イメージに加え、レース戦績や指数等から各馬の力関係・適性を割り出す”予想界のファンタジスタ”。2023年1月には、長年の活躍が認められ殿堂プロ入りを果たす。
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