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最序盤で、ほとんど勝負は決したように思えた。
精鋭が18頭揃っていた中で、最も速く、最も綺麗なスタートダッシュを決めたのがジャンタルマンタルだった。元々スタートは上手な馬であったが、前走の皐月賞からそれはさらに洗練され、今回もいきなり1馬身ほどのアドバンテージを得たように映った。
そこから内のポジション争いを見る形でスッと好位に控えると、マイルの流れで課題の折り合いもスムーズ。悠々としたレース運びかと思いきや、わずかに後方に位置取っていたライバル・アスコリピチェーノの動きを警戒するのも怠らず。がっちりと外目でブロックしたまま、直線へと向かう。
道中の完璧な運びもあり、直線に入ってもジャンタルマンタルを遮るものはなにもなかった。
苦しい位置に追いやられたアスコリピチェーノがさらに狭い内へ舵を切るのを見届けると、満を持して鞍上の川田騎手がゴーサイン。ゴチャ付く内目を尻目に、あっという間にセーフティリードを確保すると、楽な手応えで堂々の押し切り。力の差を見せつけるような内容でG1・2勝目を決めた。
正に”テン良し、中良し、終い良し”の内容だったジャンタルマンタル。
前走の皐月賞では同様の早目抜け出しから差されてしまったが、マイルへの距離短縮で今度はしっかりと脚が持続した。馬の強さももちろんだが、適性をしっかりと把握し、厳しいローテでも状態を維持して臨んだ陣営の高い手腕も評価すべきだろう。
前走の好走と今回の圧勝劇で、”2000mでも強いマイラー”というイメージがより鮮明なものになり、今後もこうした適性を重視したレース選択をされることになるはず。血統的にはダートをこなしても何ら不思議ない構成でもあり、来年にはサウジやドバイ、アメリカなど、世界を見据える存在になっている可能性もありそうで、楽しみは広がる。
一方、悔いの残る内容だったのが2着のアスコリピチェーノ。
ジャンタルマンタルの徹底したブロックにより直線で外に出せず、内へ進路を求めたところで他馬と接触。一つ間違えれば大事故だったと思えるほどに危ないシーンがあった。
鞍上のルメール騎手がこうした強引な進路取りをするのは珍しいが、故意に狭い場所に突っ込んだというよりは、前を行っていたマスクオールウィンが全く同時に同一ラインへ進路を取ってきたのが大きかったようにも映る。採決の内容を見ても、鞍上に悪意はなかったと判断されたのだろう。
とは言え落馬事故が多発する昨今、見ている側が肝を冷やしたのは確かで、被害馬の陣営も悔いの残る結果だったはず。加えて、これほどの状況から2着を確保したアスコリピチェーノ自身の奮闘が、様々な意見や批判によって薄まっているのは少し寂しさがある。
各馬、各陣営の頑張りを素直に称えられるよう、少しでも安全なレースが続いてほしいと願うばかりだ。
結果的に2歳王者がワンツーを決める形になったが、それに続く走りを見せたのが、同じく2歳時から頭角を現していたロジリオンとゴンバデカーブース。
ロジリオンは京王杯2歳S、ファルコンSと、重賞ではかなり致命的な不利を受け続けてきた馬。今回は一転して終始スムーズな競馬が叶い、ようやく本来の走りができたという印象が強い。気性的には1400m寄りのタイプだが、マイルでもここまで見せ場を作れたのは収穫。現状の完成度では上位2頭とは差がある感じだが、今後の成長でどこまで差が縮まってくるか。
ゴンバデカーブースは紆余曲折あった臨戦過程を思うと、かなり高評価できる内容。終始外目を回る形でも最後までしっかり伸びていたし、半信半疑な部分が多かった能力の高さを自身の走りで証明してみせた。
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適性面に関してはまだ謎な部分が多く、父のブリックスアンドモルタル自身にしても、同じ母系から出た近親馬にしても、こなす距離の幅が妙に広い馬が目立つ。本馬もここまでの3戦は全てマイル戦だが、案外2000mでも2400mでもこなしてしまうのかもしれない。今後どこを主要路線としてくるのか、興味深い存在と言える。
こうした上位馬が強さを見せた一方で、能力をきっちり発揮できたとは思えない馬も。
ボンドガールは前述の不利の影響をまともに受けたし、ディスペランツァはゴンバデカーブースの進路取りに翻弄され、直線で右往左往。アルセナールは大外枠から痛恨の出遅れだった。
ノーブルロジャーも発馬で躓いて鞍上が大きくバランスを崩した上、中盤では下がってきたイフェイオンの動きで大きく位置を下げた。
このあたりはスムーズならば巻き返してくる可能性がありそうで、次走以降の巻き返しに期待したいところだ。
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