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鈴木和幸のGI全馬追い切り診断 ~エリザベス女王杯~
●第36回エリザベス女王杯の追い切り診断
・アヴェンチュラ
11月9日 栗東W
85秒4-69秒2-54秒0-40秒0-11秒7 G強め
3連勝中、最後の1冠・秋華賞をものにしたが、その前に2ヶ月の間隔をとっており、ローテーションには無理がない。前走後、ウッド、坂路で3本の時計を出したのを見ても、もうすっかり疲れがとれていることがわかる。今週は全体的には平凡な、上がり中心の追い切りだったがこれはもう前走以上に馬体を減らしてはまずいから。内容的には内に4頭、外2頭の間に突っ込ませるような負荷のかけかたをしており、時計以上にハードな追い切り。特筆されるのはこの馬群にひるむことなく、鞍上がGOサインを出せば突き抜けたであろう勢いを見せたこと。いうところの“引っ張り切れない”勢いというやつで、ずばり、前走以上、今季の最高で2冠を目指す。
・アニメイトバイオ
11月9日 美浦P
66秒3-51秒6-37秒8-11秒8 馬なり
前走の府中牝馬Sの最終追い切りでうなって走っている、こんなに動いたアニメイトは見たことがないと絶賛したかと思うが、この快調子をいまもキープしている。2日に1週前追い切りを併せ馬でやってあるので今週は上がり中心だが、それでも別掲の時計となり、先行していた僚馬を並ぶ間もなく捕らえてラスト1F11秒8の速さ。これで追ったところがなく、またまたうなっての走り。細くは映らず一段と引き締まって馬体を見せたあたり、前走時以上といってもいい。秋も終わるこの時季の牝馬としてはまぶしいまでに栗毛が光り輝いており、もはや前走のように出遅れたりしないよう気を配るのみ。
・アパパネ
11月9日 栗東W
97秒2-65秒4-51秒4-37秒7-11秒9 馬なり
前走の負け過ぎがなんとも不可解。4ヶ月ぶりで体重が4キロ増えていた、デビュー以来の最高体重502キロだったにしても、14着はやっぱり負け過ぎ、これをどう判断すればいいのか、関係者にもわからない部分があるのではないか。今週の追い切りはいつもの坂路ではなく、ウッドの長め7Fから。先行していた馬をほとんど並ばずに交わし、あっさり4馬身の先着、別掲の好タイム。これをこれまで通りの叩き2戦めの良化、変わり身ととるのは簡単だが、私は楽観できないと見る。もちろん、その理由のひとつが前述の負け過ぎであることはいうまでもないが、もうひとつ気になるのは前走のゲート入りがまったくスムースでゴネたりしなかったこと。そういえば、前走前の中間も馬場入りスムースで、やはりゴネたりしなかったそうだ。いつも手を焼かせるクセ馬がである。関係者のひとりによると、「さっさと調教を終えてしまいたい」からゴネず、つまりは闘争心の失せ、にも感じたそうだ。それが前走の大敗原因だとしたら、今週の追い切りで動いたからといって楽観はできまい。
・イタリアンレッド
11月9日 栗東坂
52秒0-38秒2-25秒2-12秒7 馬なり
もっか3連勝中、しかし、前走はサマー2000のチャンピオンになったあとで2ヵ月半ぶり、ここに向けての前しょう戦とあって少なからず余裕残しであった。それでも勝ってしまうのだから今季の充実は驚くばかり。今週は併走したドナウブルーが調教駆けするとあって手ごたえ、脚色では見劣ったが、この馬自身、フットワークを乱したわけではなく、最後までしっかりとした動き。別掲の時計は前走時の53秒1-38秒8をしのいでいるのだし、これで十分。落ちつきがあるからこそこれだけ追えたのだし、もちろん、調子落ちは一切なし。走っても走っても人気にならない不思議な馬だが今回も要警戒である。
・エリンコート
11月9日 栗東P
76秒2-61秒3-48秒4-36秒2-12秒6 馬なり
いかに時計の出やすいポリトラックとはいえ、この全体時計の6F76秒台は優秀だ。ただ、肝心の動きには時計の速さとは裏腹に“切れ”が感じられず、ラスト1Fの12秒6もポリとしては平凡すぎる。復調したとはいいがたい。
・オールザットジャズ
11月9日 栗東W
71秒6-55秒1-39秒8-12秒4 G追う
10月29日に500万下を勝ったばかり、キョウワジャンヌらの回避で出走することができた。最終追いは3頭併せ、しかし、抑えて抑えて進み、直線もゴール寸前で気合いを入れられただけ。時計が遅いのはこのためでまったく気にしなくていい。仕掛けられての反応、そこまでの手ごたえはすばらしく、好調キープは間違いないが、いきなりのこのメンバーでは。
・グルヴェイグ
11月9日 栗東W
85秒8-69秒6-54秒5-40秒2-11秒7 直強め
併走相手の1頭がアヴェンチュラではこれにすべての点で見劣っても仕方ない。中間の乗り込みも十分だし、ラスト1Fを11秒7でまとめた今週の追いきり内容は12秒8かかっていた前走以上、つまり、この馬自身は上向いている。オークスで3番人気に支持された素質が一気に開花するかも。条件馬と侮ってはいけないのでは。
・サンテミリオン
11月9日 美浦W
65秒7-50秒7-37秒7-13秒2 馬なり
先行する2頭を追いかけ、直線で内から差を詰め並んでのゴール。脚色はとくに目立つものではなかったが、余裕は残しておりだいぶ復調の兆し。これでラスト1F12秒台なら完全復調といえるのだが、13秒2かかったところにまだ不満が残る。
・シンメイフジ
11月9日 栗東坂
54秒1-38秒6-24秒6-11秒8 G一杯
テンを15秒5、14秒0にセーブしての実質2Fだけの追い切りだが、24秒6、11秒8は速い。中間にもウッド、坂路併用で10本以上の時計を出しており、その成果が今週の鋭さにつながった。6ヶ月半ぶりは確かに厳しいが、仕上げに関してはこれでいい。ツボにはまればすごい脚を使う切れものだし、穴党には食指が動く。
・スノーフェアリー
11月10日 京都芝
キャンターのみ
まったくの軽いキャンターのみ。これでは診断のしようがないが、動きはギクシャクとして硬さが残り、お世辞にもいいとはいえない。ひとことでいうと凱旋門賞3着のあと、中1週で英チャンピオンSを使った疲れがとりきれていない。その後の日本への長時間空輸もこたえているか。
・ダンシングレイン
11月10日 京都
馬場入りせず…
・フミノイマージン
11月9日 栗東W
80秒2-64秒5-50秒8-38秒4-12秒6 G一杯
決して鋭さを感じさせない、しかし、男馬のように力強い動きをする馬だ。今週も直線の追い比べになるとこの本領を発揮し、3馬身の先着、ウッドでこの時計ならもちろん合格点がやれる。休み明けの前走で体重が減っていたのが気になっていたが、中間にもハード併せ馬を消化しており、これならさらに体重が減る心配もない。むしろ、前走を叩かれての上積みが見込める。
・ブロードストリート
11月10日 栗東坂
53秒8-39秒2-25秒6-12秒8 末強め
前走の府中牝馬Sの9着は直線でこれからというときに前が壁になる不利があったもの。それでも時計差は0秒6しかなく、決して内容は悪くなかった。この中間はすこぶる順調で、先週のポリトラックでは3F35秒5、1F11秒2をマーク、ここにきてにわかに復調ムードだ。今週は木曜日に坂路でしまい重点、時計は目立たなくてもキビキビとした、弾むような動きが目を引き、何やら一発気配が漂ってきた。
・ホエールキャプチャ
11月9日 栗東坂
51秒9-37秒7-24秒3-12秒0 一杯追
秋華賞では1番人気で3着に沈んだものの、少し外、外を走りすぎており、評価は下がらない。先週に坂路53秒1-38秒4、今週が別掲の速さとなると、元気がなければこなせるハードさではない。むろん、調子落ちはないとみていいが、難をいえば追い出されていささかフットワークを乱したようにもみえた。前走以上は望めない。
・レインボーダリア
11月9日 美浦W
82秒2-66秒7-51秒8-37秒8-12秒9 G強め
格上げ初戦の前走で4着どまり、まだ条件馬だ。それだけに今回は大きな変わり身が期待されだが、併走先着したものの突き放すことができず、食い下がられてしまった。これではこれだけ相手が強化されたのだし、勝負になるまい。
・レディアルバローザ
11月9日 栗東P
80秒3-63秒9-50秒6-37秒8-11秒6 馬なり
先週の2日にポリトラック6F75秒9-35秒8をマークしたことでもわかる通り、調教はいつも動く。今週も追ったところなしでこの時計だから、ケチのつけようがない。しかし、これは前走時も同じだった、それで8着どまり。5月のヴィクトリアマイルで0秒1差3着、2着ブエナビスタを最後の最後まで苦しめた実績を持つだけにまだ見限れないが、それにしても前走が直線バテすぎで、、、。
・レーヴディソール
11月9日 栗東W
96秒6-65秒2-51秒4-37秒9-12秒0 一杯追
3月のチューリップ賞から実に8ヶ月余ぶり、にもかかわらず今週見せた追い切りの動きは“さすが”とうならされるものだった。7Fの長めから行って直線、実戦並みの叩き合いを演じたのだが、瞬時にして先行していたユニバーサルバンクの前に出て2馬身先着。この抜け出すときの反応のよさ、交わす速さはとても長く休んでいた馬のそれではなかった。大きく前脚をかき込み、次の瞬間、トモ脚というより腰全体が踏み込んでくるような、この馬独特のパワフルなフットワークは健在、モノの違いを見せつけられた。しかし、時計を出し始めたのは10月の半ばになってからだし、いっぱいの追い切りは今週の1本だけで他はすべて馬なりである。果たして、これで中身までできているかどうか。最終追い切りの圧巻さに目を奪われたのは事実だが、今回に限っては割り引きが必要だろう。
・ワルキューレ
11月9日 栗東坂
51秒2-37秒0-25秒0-12秒8 強め
月1回のローテーションをきちっと守ってきたおかげで調子に狂いはない。今週も別掲の時計でビシッと追えている。3連続2着から大きな変わり身はないものの、高いレベルで体調は安定している。問題は1600万下でも勝ち切れない実力だろう。
鈴木和幸
競馬評論家。ダービーニュース時代には、TBSのテレビ番組「銀座ナイトナイト」にダービー仮面として出演。メインレース予想7週連続的中の記録を作った。
日刊現代では、本紙予想を20余年にわたって担当。58年にその日の全レースを的中させるパーフェクト予想を達成。日刊・夕刊紙の本紙予想では初の快挙。
著書に
「競馬ハンドブック」「競馬・勝つ考え方」「競馬新聞の見方がわかる本」「まるごとわかる 競馬の事典」(共に池田書店刊)「競馬◎はこう打つ」(日本文芸社刊)「距離別・コース別・競馬場別 勝ち馬徹底研究」(ぱる出版刊)など多数。
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