第154回天皇賞・秋(30日、東京11R、GI、3歳上オープン国際(指)、定量、芝2000メートル、1着本賞金1億5000万円=出走15頭)ライアン・ムーア騎乗の1番人気
モーリスが直線半ばで先頭に立ってそのまま押し切り、5度目のGI制覇。昨年の年度代表馬が、中距離でも頂点を極めた。タイム1分59秒3(良)。次走は12月11日にシャティンで行われる
香港カップ(GI、芝2000メートル)か
香港マイル(同、芝1600メートル)の予定で、ここがラストランとなる。1馬身1/2差の2着は7番人気の
リアルスティールだった。
世界に名をとどろかす最強マイラーが、中距離界も制圧した。昨年の年度代表馬
モーリスが、香港のチャンピオンズマイル以来、約半年ぶりの勝利でGI5勝目。検量室に引き揚げてきたムーア騎手は、クールな表情で相棒をねぎらった。
「完勝だった。早めに抜け出しても、誰も追いついてこられないという自信があった」
コンビを組んでGI3連勝。英国の名手は馬の力を信じる強気の騎乗で能力を引き出した。中団の外から抜群の手応えで直線に向くと、ぐんと加速。鞍上の豪快なアクションに応えて徐々に外へ進路を取り、馬場の真ん中を力強く駆け抜けた。
「すぐ前にあまり人気のない馬がいたので外を回ったが、反応がすごく良くて、最高の形で直線を迎えられた」。思い描いた通りの快走だった。
前日から短期免許で騎乗しているムーアは、今年も
凱旋門賞(ファウンド)制覇など世界中で活躍。レース後は大急ぎで機上の人となった。あすの豪GIメルボルンC、さらに4、5日の米GIブリーダーズC騎乗と、世界を飛び回ってその技量を発揮し続ける。
「今までにない走りを見せられた」とジョッキーがいえば、堀調教師も「今回がベストパフォーマンス」と胸を張る。国内ラストランで約9万人の観衆を魅了し、2年連続の年度代表馬も射程圏にとらえた。
陣営は以前から2000メートルへの挑戦を考えていたが、昨年の
安田記念でGI初制覇を飾った時点でも「燃えすぎる気性とゲート難がウイークポイントだった」とトレーナーは振り返る。怪物はそこからさらなる進化を遂げ、新境地へと足を踏み入れた。「馬自身が足りない部分を克服してきた。馬体は完成の域に入ったし、気性的な成長が一番大きい。まだまだ良くなると思う」。指揮官はたくましくなった愛馬を誇らしげに見つめた。
ラストランとなる次走は、
香港カップか
香港マイル。伝説の終幕まで、最強の座は譲らない。 (藤沢三毅)
★香港出走レースはムーアの状況次第
夫人の吉田和美オーナーに代わって表彰台に上がったノーザンファームの吉田勝己代表(67)は、引退レースとなる香港国際競走について「(カップかマイルか)どちらになるか、まだ分かりません。ムーア騎手の状況次第になると思います」と説明した。ムーア騎手が騎乗できるレースを優先する方針で、もし両方とも騎乗できない場合は、モレイラ騎手とのコンビでカップに出走する予定だ。
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