牝馬活躍の年を象徴する結末だ。今年の中央競馬を締めくくる
有馬記念が27日、中山競馬場で16頭によって争われ、ファン投票1位で1番人気の
クロノジェネシスが、
宝塚記念に続くグランプリ連勝を飾った。鞍上の
北村友一騎手はこのレース初参戦でV。クビ差の2着に引退レースだった11番人気の
サラキアが入り、史上初の牝馬ワンツーとなった。3着は2番人気
フィエールマン。2着馬と同じくラストランの
ラッキーライラックは4着だった。
史上最多21万4742票の期待に、堂々と応えてみせた。ファン投票1位、本番も1番人気の
クロノジェネシスが、初の中山コースを攻略。
宝塚記念との同一年グランプリ連覇を達成した。牝馬では昨年の
リスグラシューに次ぐ2頭目の快挙。会心のレースに、有馬初参戦の北村友騎手が左手の拳を小さく握った。
「位置取りなどは深く考えず、馬のリズムを重視して競馬したつもり。いつものクロノらしく、いつもの自分らしく競馬ができた。20万人以上のファンの期待を背負っていましたし、勝ててよかった」
デビューから13戦、全てでコンビを組んできた人馬の絆が、その手綱さばきから伝わってきた。ゲート内で少し頭を上下させたパートナーを、ポンポンポンと軽くお尻をたたいて落ち着かせる。課題のスタートを五分に切り、序盤は“密”な馬群の後ろで、ソーシャルディスタンスを保ちつつ中団で折り合った。
向こう正面の残り1000メートルから、馬群の外に持ち出して進出。4コーナーを抜群の手応えで回り、先に抜け出した
フィエールマンを残り50メートルでかわすと「外から何かが来ているのは感じた。でも差されるとは全く思わなかった」とゴール前、
サラキアの急襲もクビ差封じた。
この日のクロノはプラス10キロで、迫力満点の体つき。馬体重の2桁増は4度あり、GI3勝を含めて全勝だ。進化を続ける管理馬に、斉藤崇調教師は「雰囲気はすごく良かった。体の成長よりも精神的な成長が大きいですね。装鞍所、パドックとおとなしく、そこがスムーズだったのが大きい」と目を細める。続けて「来年はもっと大きいレースに行きたい。いろんな夢を見させてもらえれば」。オーナーサイドからは、今後の大目標として、秋の
凱旋門賞などのレースも候補に挙がっている。夢は広がるばかりだ。
アーモンドアイがターフを去り、来年、
クロノジェネシスは日本競馬をリードする立場となる。無論、北村友騎手もそれは承知している。
「未対戦の3冠馬2頭がいますが、負けたくないし、そこに譲らないよう、引っ張っていくような存在でいてほしい」
コロナ禍に振り回された2020年。最後も大歓声こそなかったが、激戦を制した主役に3516人の入場者からは惜しみない拍手が送られた。明るい未来が待っている。
クロノジェネシス&
北村友一が新たな歴史をつくっていく。 (板津雄志)
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クロノジェネシス… 父バゴ、母クロノロジスト、母の父
クロフネ。芦毛の牝4歳。栗東・
斉藤崇史厩舎所属。北海道安平町・ノーザンファームの生産馬。馬主は(有)サンデーレーシング。戦績13戦7勝。獲得賞金8億7342万円。重賞は2019年GIII
クイーンC、GI
秋華賞、20年GII
京都記念、GI
宝塚記念に次いで5勝目。
有馬記念は
斉藤崇史調教師、
北村友一騎手ともに初勝利。馬名は「母名より+創世記」。
★27日中山11R「
有馬記念」の着順&払戻金はこちら
○…牝馬のV 今年の牡牝混合GIにおける牝馬の勝利は9勝目。これは1984年のグレード制導入後で最多。
○…ファン投票1位馬の勝利 通算16勝目で、ファン投票1位の牝馬が優勝したのは初めて。
○…
斉藤崇史調教師 初出走で初勝利。38歳3カ月29日での優勝は、グレード制導入降、09年の
池江泰寿調教師の40歳11カ月15日を抜いて最年少記録。JRA・GIは今年3勝目、通算4勝目。
○…バゴ産駒 初出走で初勝利。JRA・GIは今年2勝目、通算4勝目。
○…馬主・有限会社サンデーレーシング 14年
ジェンティルドンナ以来6年ぶりで、通算5勝目。これは馬主として単独で歴代最多勝。JRA・GIは今年9勝目、通算57勝目(他にJ・GI2勝)。年間9勝はグレード制導入以降で最多。
◆GIの売り上げ、入場者
有馬記念の売り上げ金は464億2589万4400円で、昨年比99・0%と微減。入場者は3516人(うち有料入場人員は2451人)。