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【香港チャンピオンズデー2021】レース展望①~世界が注目、香港馬王出走のチャンピオンズマイルは販売なし

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【香港チャンピオンズデー2021】レース展望①~世界が注目、香港馬王出走のチャンピオンズマイルは販売なし | コラム | ウマニティ

ウマニティ会員の皆さん、半年のご無沙汰をしました。甘粕代三です。コロナ禍の下、今年も香港競馬春の祭典、香港チャンピオンズデーが今週日曜、25日に迫りました。チェアマンズスプリントプライズ(1200m)、チャンピオンズマイル(1600m)、クイーンエリザベス2世カップ(2000m)と距離の異なる国際G1 3レースが同日に発走。G1 4レースが同日に行われる12月の香港国際競走(HKIR)から2400mの香港ヴァーズを除いた形ですが、2月のサウジカップデー、3月のドバイワールドカップデーに続く世界の春競馬の一大祭典です。

例年ならドバイから欧州馬が転戦して正に春の祭典そのものなのですが、昨年からのコロナ禍で様相は一変しました。欧米馬の姿はなく、香港に挑戦したのは日本馬5頭だけ。なんと日本勢と地元香港勢の一騎打ちになってしまったのです。昨年12月の香港国際競走の際には、日本人騎手としてただ一人渡港した松岡正海騎手から香港での厳しい防疫態勢を電話でインタビューしてお伝えしました。松岡騎手ら日本競馬関係者は香港到着後にホテルで缶詰め。外出できるのは競馬場への往復だけ。競馬場の往復もそれぞれの国の出走関係者が団体で行動、シャティン競馬場での調教前後も香港人との接触は禁じられるという厳しいものでした。こうした厳しい防疫態勢を欧米陣営は嫌ったものとも思えますが、欧米のコロナ被害は日本、香港を含むアジアよりも格段に深刻ですので、香港遠征どころではないというのが真相かもしれません。

海外メディアへの手厚い歓待は香港が世界一なのですが、昨年の香港国際競走以来シャットアウト。それもそうです。昨年と同じく、現在香港に入境できるのは香港IDかワーキングビザを持っている人間だけで、入境後は香港特別行政区政府指定のホテルで2週間隔離されなくてはなりません。コロナ禍以前、日本人はノービザで3か月香港に滞在できましたが、今では認められません。この入境制限は当初4月20日までだったので、チャンピオンズデーには香港に渡航できるのではないか、と淡い期待を抱いたのですが、コロナ禍が一向に収束の兆しを見せなかったため9月までに延長されてしまいました。日本、香港そして世界のコロナ感染の現状、そして昨年のように秋から冬にかけて感染が拡大したことを考え合わせると12月の香港国際競走取材のために香港を訪れることも厳しいかもしれません。

閑話休題--。こうした厳しい状況の中、日本からは昨年の香港スプリントの覇者、ダノンスマッシュチェアマンズスプリントプライズに、そして無冠で牝馬クラシック三冠を達成したデアリングタクトラヴズオンリーユーの牝馬2強、昨年の香港ヴァーズを制したグローリーヴェイズ菊花賞キセキの4頭がクイーンエリザベス2世カップに名乗りを上げました。この2レースが日本でサイマル発売されますが、昨年の香港4歳クラシック三冠を総なめし香港マイルまで制してこれまで17戦16勝と香港競馬史上最強馬との呼び声も高いゴールデンシックスティーズが出走するチャンピオンズマイルは日本馬が出走しないため発売されません。ダービーの翌週に日本の春のマイル王決定戦、安田記念まで間隔が詰まりすぎ、また世界最高レベル、層の厚さも一番の香港マイラー陣にしり込みしてチャンピオンズマイルに挑戦する日本馬は例年多くはないのですが、世界の競馬サークルの注目を集めるゴールデンシックスティーズが出走するこのレースが発売されないのは何とも片手落ち。ドバイワールドカップデーで日本馬が出走しながらG1ではないという理由でUAEダービーは日本では発売されませんが、これと併せて海外馬券発売要件の緩和を強く望みます。

しかし、日本・香港一騎打ちとなった今年、これまでになかった見どころが生まれました。香港最強馬、ゴールデンシックスティーズを三冠に導いた売り出し中の若手騎手、ヴィンセント・ホーが何と日本馬、ラヴズオンリーユーの鞍上に選ばれたのです。ヴィンセント・ホーは地元香港出身の30歳。2009/10シーズン(以下「季」と省略)にデビュー、その季に10勝をあげました。欧米の名手が半分以上を占める香港で地元香港出身の騎手は「華将」と呼ばれます。しかし歴戦の強者に見習い騎手から競馬人生を歩み始める華将は旗色が悪く、騎手としても調教師としてもともにリーディングに輝いた香港レジェンド、アントニー・クルーズが手塩にかけて育てた秘蔵っ子、マシュー・チャドウィックですら白人騎手の厚い壁を破ることはできませんでした。
マシューよりも1季遅れでデビューしたヴィンセントは順調に勝ち星を伸ばして頭角を現し、ゴールデンシックスティーズと巡り会って大きく成長。今では華将を代表する若手となりました。これまでに昨季の三冠に加えチャンピオンズマイルも制してGⅠは4勝、これを含む重賞は11勝。今季は既に44勝を挙げてリーディング4位と華将のトップに立っています。

香港に遠征した日本馬にはこれまでJ.モレイラ、Z.パートンら香港所属の非香港人の外人騎手、C.スミヨンら正真正銘の外人騎手が騎乗したことはありましたが、華将の騎乗はおそらく初めてのことではないか、と思います。欧米勢が遠征を手控え、C.スミヨンら欧米の名手が香港に渡航しない事情も作用しての起用であることは間違いありませんが、ヴィンセントに実績と実力がなければ陣営が彼を選ぶはずもありません。シャティン競馬場の隅から隅まで知り尽くしたヴィンセントがラヴズオンリーユーをどう導くのか、クイーンエリザベス2世カップはチャンピオンズマイルのゴールデンシックスティーのレースぶりと同様に必見です。

明日23日(金)はダノンスマッシュが出走するチェアマンズスプリントプライズを、明後日24日(土)にはデアリングタクトら日本四天王が挑戦するクイーンエリザベス2世カップを展望。25日(日)には畢生(ひっせい)の予想をお届けします。ご期待ください。


甘粕代三(あまかす・だいぞう)プロフィール
1960年、東京生まれ。高校時代から競馬にのめりこむ。
早稲田大学第一文学部卒。在学中に中国政府官費留学生。卒業後、東京新聞記者、テレビ朝日記者、同ディレクター、同台北開設支局長などを務める。
中国留学中に香港競馬を初観戦、94年ミッドナイトベット香港カップ制覇に立ち会ったことから香港の競馬にものめりこみ、2010年、売文業に転じた後は軸足を日本から香港に。
香港の競馬新聞『新報馬簿』『新報馬経』に執筆、テレビの競馬番組にも出演。現在、香港アップルデイリー日本特約記者、北京市馬術運動協会高級顧問を務める。

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