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【香港国際競走2020】レース展望③<香港カップ>エイシンプレストンを彷彿とさせるウインブライト連覇なるか!?

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【香港国際競走2020】レース展望③<香港カップ>エイシンプレストンを彷彿とさせるウインブライト連覇なるか!? | コラム | ウマニティ

香港カップ(シャティン芝2000m)
さて、香港国際競走のメーンレース、香港カップには連覇と同一年のクイーンエリザベス2世カップとの連覇を目指す我らが日本のウインブライト(牡6・畠山吉宏厩舎)以下、3頭が出走します。ウインブライト香港カップがラストラン。父ステイゴールドも2001年香港ヴァーズで普段のジリ脚がどこにいったのかと思わせる鬼の末脚を繰り出し、有終の美を飾りました。そのまま種牡馬入りして三冠馬オルフェーブルをはじめとする良駒を輩出。ウインブライトステイゴールド晩年の最高傑作と言っても過言ではありません。
またウインブライトは今世紀初頭、香港横綱と異名をとったエイシンプレストンを想起させます。エイシンプレストンは古馬になってから超高速馬場の日本では時計一つ足りず、善戦マンに留まっていましたが、シャティンの馬場と香港の風土が余程合っていたようです。春のクイーンエリザベス2世カップ(QE2)でも暮れの香港国際競走でも、香港に到着すると毛艶が見る見るうちによくなり、調教やパドックスクーリングでは香港馬や他の遠征馬を睥睨するような横綱の風格を漂わせていたものです。

そして、忘れられないのが2003年のQE2です。あの年は今と同じようにSARSという疫病の下、国際競走が行われ、日本から香港へは渡航が制限され、日本の記者、カメラマンメディアはたった7人。私もそのうちの一人でした。エイシンプレストンはSARS禍にもかかわらず香港遠征を敢行、レースでは香港競馬史上唯一の牝馬香港ダービーウィナー、エレガントファッションを1馬身3/4ちぎってQE2連覇を成し遂げたのです。ウィナーズサークルから観客もまばらなスタンドに向けて故平井豊光オーナーはインタビューにこう答えたのです。
「プレストンは香港に育ててもらった馬です。香港がSARSで苦しんでいるときに香港の皆さんに頑張ってもらいたい。だから遠征を決めました。香港の皆さん、SARSに負けずに頑張ってください」
平井オーナーのこのメッセージには香港競馬ファンも目頭を熱くしていました。
あれから17年、コロナ禍はSARSとは違って全世界に蔓延。日本も香港も感染爆発に近い拡大を見せている中、エイシンプレストンと同じように香港で国際G1ウィナーとなって大きく飛躍したウインブライトエイシンプレストンに重なって見えて仕方ないのです。

松岡正海騎手は8日朝、日本の調教師、騎手ではただ一人勇躍香港に向かいました。出発直前の松岡騎手に連絡したところ、既に香港入りしている畠山厩舎のスタッフから香港到着後は空輸の疲れがないどころか、状態が急速に上向いてきたという連絡が入っているとのこと。松岡騎手を背に調教に臨めば状態は更に少々することでしょう。松岡騎手とは直前に連絡を取り合う約束をしましたから、レース前日までには松岡騎手からのリポートをウマニティ会員の皆さんに直前情報としてお届けする予定です。

ウインブライトのことばかり書きすぎてしまいました。コロナ禍の下、今春のオーストラリア、クイーンエリザベスS(G1・ランズウィック芝2000m)に遠征し3着と健闘したダノンプレミアム(牡5・中内田充正厩舎)が今年2回目の海外遠征を敢行しました。厩舎担当者のご苦労は如何ばかりかと心配になってしまいますが、香港ではW.ビュイック騎手を鞍上に迎えました。
イギリスを中心に活躍する彼、実は北欧ノルウェイ出身で、お父様はリーディング8回という北欧の名騎手。お母さまは馬術の名手という馬の名門家庭に生まれています。日本には2012年、ワールドスーパージョッキーズシリーズで初騎乗。2013年には短期免許を取得して1月5日から3月4日まで騎乗。クイーンカップをウキヨノカゼで勝ち、日本での重賞初勝利を挙げています。その後、ゴドルフィンの主戦騎手となり、世界各地で大活躍を見せ、2018年には再び来日、短期免許来日初週にマイルチャンピオンシップステルヴィオで制し、日本のG1初制覇を果たしていますので日本の競馬ファンの皆さんも覚えていらっしゃるかと思います。
日本の騎手には失礼かもしれませんが、W.ビュイックの起用は明らかに鞍上強化。このプラスと今年2度目の海外遠征をどう天秤にかけるか、この馬の取捨のポイントです。

昨年のヴィクトリアマイル勝ち馬、ノームコア(牝5・萩原清厩舎)は香港マイルではなく香港カップを選択しました。いずれもこなせる距離ではありますが、今年の札幌記念を快勝した2000m洋芝とシャティンの芝は酷似していますので、これが選択のポイントになったものと思われます。こちらもダノンプレミアム同様、外人騎手を鞍上に迎えました。なんと香港の雷神、J.モレイラです。
彼の技量は皆さんご存じの通りですが、実は昨馬季までは絶不調のどん底にあったのです。モレイラは2018年、日本での長期免許を目指して来日しました。香港では毎朝の調教の後、彼と雑談していましたが、その香港を卒業してJRAの通年免許に挑戦する決意を聞かされた時には、思わず早まるなと忠告しました。誰に言われたのか知らないが、日本語の拙いジョアンが合格する可能性は皆無。暫く待った方がいい、と。しかし、ジョアンは私の言うことに全く聞く耳を持たず、試験に落とされて号泣したのです。

香港ジョッキークラブは一度後ろ足で砂をかけたジョアンには冷淡で、18/19馬季はジョッキークラブお抱えのクラブジョッキーではなく、J.サイズ厩舎専属騎手とライセンスもワンランク下のものしか与えられませんでした。不合格のショックから後頭部は円形脱毛症になり、彼の指定席だったリーディングもライバルのザック・パートンに2馬季続けて奪われてしまいます。
しかし、不合格ショックから立ち直った今馬季は開幕から飛ばしてリーディングトップを独走中。シャティンコースの隅から隅までご存じの雷神さまですから、W.ビュイック以上の鞍上強化。彼が日本で短期騎乗していた際にモレイラ5馬身と私はよく書きましたが、復調したモレイラなら5馬身どころではありません。
今年の香港カップ日本代表3頭はいずれも勝負になるだけの条件を揃えています。地元香港勢、コロナ禍の中遠征してきた欧州勢の分析は明日に譲ります。お楽しみに!

★”日本と香港を股にかけて活躍する”海外プロ甘粕代三プロが、海外馬券販売レースの香港国際競走3レースの予想提供をいたします。当日の予想にご期待ください。


甘粕代三(あまかす・だいぞう)プロフィール
1960年、東京生まれ。高校時代から競馬にのめりこむ。
早稲田大学第一文学部卒。在学中に中国政府官費留学生。卒業後、東京新聞記者、テレビ朝日記者、同ディレクター、同台北開設支局長などを務める。
中国留学中に香港競馬を初観戦、94年ミッドナイトベット香港カップ制覇に立ち会ったことから香港の競馬にものめりこみ、2010年、売文業に転じた後は軸足を日本から香港に。
香港の競馬新聞『新報馬簿』『新報馬経』に執筆、テレビの競馬番組にも出演。現在、香港アップルデイリー日本特約記者、北京市馬術運動協会高級顧問を務める。

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