コントレイルは強いんだ!!
ジャパンCが28日、東京競馬場で行われ、1番人気で昨年の無敗の3冠馬
コントレイル(栗東・
矢作芳人厩舎、牡4歳)が、GI5勝目で有終の美を飾った。
福永祐一騎手(44)=栗東・フリー=が、涙のラストランに懸けていた思いを、独占手記として寄せた。
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ゴールした直後は心が震えました。自然と叫んでいました。レース後にあふれ出た涙は、苦しいときを乗り越えて、引退レースで勝ち切った
コントレイルの頑張りに感動したからです。
無敗の3冠馬の名誉を守るためには勝つしかない。
コントレイルの頑張りに応えるためにはいい騎乗をするしかない。プレッシャーではなく、使命感のようなものを感じていました。本当に
コントレイルは強いんだ-。みなさんに知っていただきたかったことを証明できました。
適距離ではない3000メートルの
菊花賞で死力を尽くした後、昨年の
ジャパンCにタフなローテーションで臨んだことで、競馬に対してネガティブな感情を持ったように感じました。そのことが今年に入ってゲート内での駐立の悪さに影響しましたが、最後にそれを乗り越えてくれました。スタートを決めて非常にいいポジションを取れたので、向こう正面に入ってからはいつ追い出すかだけを考えていました。あとは
コントレイルを信じること。それ以外にしたことはありません。
無敗の3冠馬
ディープインパクトの産駒で、初めて誕生した無敗の3冠馬。スピード、切れ、パワー、器用さ、勝負根性…。競走馬として非凡な能力を兼ね備えていますが、決してそれだけで偉業を達成したわけではありません。体がまだ出来上がっていなかった2歳時はモタれる面があって、GI初勝利を挙げた
ホープフルSでは、首を上下ではなく、回しながら走っていました。
ホープフルS後に放牧先の大山ヒルズで右にモタれる面などバランスを修正してもらえたのが大きかったです。担当の金羅助手も熱心に、継続的に取り組んでくれて、走り方がとても良くなりました。学習能力の高さも
コントレイルの長所ですね。
「この馬のことは任せた!!」という声をかけていただいた、オーナーブリーダー・ノースヒルズの前田幸治代表。騎手が調教に携わることを受け入れてくれた矢作調教師、厩舎スタッフ。また、放牧先の大山ヒルズにもレースで感じたことを伝え、みんなが力を合わせて課題修正に取り組めたことはとても大きいですね。脚元の不安があって育成時に半年間、調教をできなかったように、決して順調ではなかったですからね。ノースヒルズグループ、矢作厩舎だったからこそ、ここまでこられたことは間違いありません。ホースマンとして得難い経験をさせてもらいました。
父子で無敗の3冠を達成した流れを後世に伝えられるのは
コントレイルだけで、競馬の歴史に必要な種牡馬になると確信しています。また彼の子に関わることを楽しみに、頑張っていきたいと思います。(JRA騎手)
★28日東京12R「
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福永祐一(ふくなが・ゆういち) 1976(昭和51)年12月9日生まれ、44歳。滋賀県出身。栗東・北橋厩舎所属で96年3月にデビューし、同年53勝で最多勝利新人騎手。99年
桜花賞(
プリモディーネ)でGI初制覇。2011、13年にJRAリーディング獲得。28日現在、JRA通算2514勝。重賞はGI32勝を含む157勝。160センチ、52キロ。競馬開催日に本紙でコラム「新ユーイチが行く」を連載中。
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ジャパンCのVTR…
アリストテレスが逃げる予想外の展開の中、福永騎手と
コントレイルは中団で折り合った。向こう正面に入ると、
キセキが後方から進出して先頭に立ち、一気にペースが速くなったが、慌てることなく直線で外に持ち出してスパート。内で粘る
シャフリヤールを残り200メートル付近で振り切ると、先に抜け出した
オーソリティも難なくかわし、2馬身差の完勝で有終の美を飾った。ゴール後、福永騎手は馬上で涙を流し、
日本ダービーのときと同様、スタンドに向けて深々と一礼した。
★GI完全制覇へ残り6つ…現在24レース行われているJRAのGIのうち、福永騎手は
ジャパンCで18レースを制覇。完全制覇に向けて、残るは
大阪杯、
ヴィクトリアマイル、
宝塚記念、
マイルCS、チャンピオンズC、
有馬記念の6レースとなる。完全制覇に最も近いのが
武豊騎手で残りは
朝日杯FSと
ホープフルSの2レース。他ではルメール騎手が4レース、M・デムーロ騎手は5レースを残している。