春の中山開催は早くも最終週を迎え、日曜に牡馬クラシック第1弾の
皐月賞(18日、GI、芝2000メートル)が行われる。登録19頭中、
シャイニングレイと
アンビシャスが回避するため、
岡部幸雄騎手騎乗の
ダイナコスモスが勝った1986年(当時はフルゲート22頭で21頭立て)以来、実に29年ぶりにフルゲート(18頭)割れで争われることになった(※)。
それでもメンバーの質は高い。中でも主力と目されるのは
サトノクラウン(美浦・
堀宣行厩舎)だ。新馬→GIII
東京スポーツ杯2歳S→GII弥生賞と無傷の3連勝。一戦ごとにレースぶりが進化し、馬場状態も問わない。上がり3ハロン33秒台の瞬発力が何とも魅力だ。デビュー戦で468キロだった馬体も、前走時は480キロと成長が顕著。現状でも十分に完成度は高いが、まだ大きな伸びしろも見込める。クリストフ・ルメール騎手との新コンビも魅力たっぷり。
桜花賞では注目された無敗馬がいずれも馬券に絡めず完敗したが、こちらは無敗の4連勝で戴冠を目指す。
サトノクラウンと人気を分け合いそうなのが、フジテレビ賞
スプリングSで追い込み届かず2着に終わった
リアルスティール(栗東・
矢作芳人厩舎)。早めに抜け出した
キタサンブラックをとらえ切れず初黒星を喫したが、ゴール前の脚いろは勝ち馬を大きくしのぐものだった。
キズナや
アユサン、
ラキシスらと同じ
ディープインパクト×Storm Cat牝馬の配合というだけでなく、近親にも世界的な活躍馬が出ている良血馬。反応の良さも抜群で、
皐月賞向きという声も少なくない。
ディープインパクト産駒初の
皐月賞馬となるか、注目だ。
その
スプリングSを2番手から抜け出して3戦全勝としたのが
キタサンブラック(栗東・
清水久詞厩舎)。3、9、5番人気での3連勝で、走っても走っても人気にならないタイプといえる。先週の
桜花賞のように、有力馬が牽制(けんせい)し合う展開になれば、前に行ける強みを生かすシーンもあるだろう。ご存じ演歌界の大御所である北島三郎オーナーも中山に駆けつけることを明言しており、新コンビの
浜中俊騎手に期待がかかる。
ドゥラメンテ(美浦・
堀宣行厩舎)は未勝利、セントポーリア賞と圧勝して挑んだ前走のGIII
共同通信杯で、
リアルスティールに半馬身差の2着。当初は賞金的に
皐月賞に出られないとみられていたが、賞金上位馬に回避が相次いで出走枠がめぐってきた。3代母
ダイナカール、祖母
エアグルーヴ、母
アドマイヤグルーヴというGI血脈で、スケールの大きさはトップクラス。まだレースぶりが粗削りなうえ、小回りコースも初めてになるためアテにはできないが、僚馬
サトノクラウンにとって最も警戒すべき身内の強敵となる。約2カ月ぶりとレース間隔はあいたが、乗り込み量は豊富で仕上がりに心配はない。新たにコンビを組むミルコ・デムーロ騎手は、2003年
ネオユニヴァース、04年
ダイワメジャー、13年
ロゴタイプと
皐月賞歴代最多タイの3勝。強力な切り札となる。
昨年の最優秀2歳牡馬
ダノンプラチナ(美浦・
国枝栄厩舎)は休み明けの
スプリングSで3着に終わったが、叩いた上積みが見込める今回は変わり身必至。反応の良さや切れ味が武器だけに距離延長が鍵となりそうだが、一昨年の
ロゴタイプに続く2歳王者のVも十分に考えられる。
札幌2歳Sの優勝馬
ブライトエンブレム(美浦・
小島茂之厩舎)は、朝日杯フューチュリティSでは一敗地にまみれたが、距離を延ばした弥生賞で2着と巻き返した。後方から豪快に伸びた末脚はさすがの破壊力で、本番の舞台を経験できたこともプラス。小回りの多頭数で脚質的に馬群をどうさばくかがポイントとなるが、前出の人気馬たちをまとめて負かす可能性を感じさせる良血馬(母は
秋華賞馬)だ。
2走前に今回と同じ中山芝2000メートルの
京成杯を勝った
ベルーフ(栗東・
池江泰寿厩舎)、産駒の活躍が目立つ
スクリーンヒーローを父に持つ
ミュゼエイリアン(美浦・
黒岩陽一厩舎)と
グァンチャーレ(栗東・
北出成人厩舎)、逃げに徹して3連勝中の
スピリッツミノル(栗東・
本田優厩舎)、潜在能力が高く大崩れのない
クラリティスカイ(栗東・
友道康夫厩舎)なども前評判ほどの差は感じられない。
桜花賞のような波乱が待ち受けているのか、それとも、人気馬がファンの信頼に応えるのか。そして、4着馬までに与えられる
日本ダービー(5月31日、東京、GI、芝2400メートル)の優先出走権争いも見どころのひとつとなる。75回目の
皐月賞を制し、2冠、3冠への挑戦権を手にするのは果たして-。
※…1992年、95年、99年は18頭未満で行われているが、いずれも枠順確定後に出走取消馬が出たもの。登録前からフルゲートに満たないのは86年以来
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