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GⅠメモリアル ~2009年 天皇賞(秋)~
競馬を見始めたころ、7歳馬は大ベテランという認識だった。8歳馬ともなればピークを過ぎたオッサン。9歳以上はもはやおじいちゃん。そんな扱いが一般的だった。事実、15歳まで現役を続けた希代の個性派ミスタートウジンが、ギリギリ馬券になっていた9~10歳ごろに、スポーツ紙に「今日も頑張るミスター老人」的な見出しが載ったと記憶している。それゆえに、8歳馬のトロットサンダーが安田記念を制したときは、感動すら覚えたものである。
このトシでGⅠを勝つなんてすげぇ。アッパレだ!
これが当時の率直な感想である。馬券は持っていなかったけど……。
というのはすべて、馬齢表記のルールが改められる前の時代の話。数え年ではなく満年齢を採用している国際表記に統一された21世紀以降、20世紀の競馬を語る際は数字をひとつ減らして考える必要性が出てきた。つまり、トロットサンダーがGⅠを勝ったのは7歳時ということになる。
7歳馬によるGⅠ制覇がいまの時代に達成されたらどんな感想を持つか?
よく頑張ったなぁとは思うだろうが、おそらく感動まではしない。もちろん、驚きもしない。それだけ、高齢馬の活躍が当たり前になったからだ。
育成技術、調教技術、治療技術は、設備面を含めて日進月歩しており、さらに新たなサプリメントが導入されるなど、飼料面でも常に進化が見られている。ここ10~20年で、競馬は大きく変わった。競走馬の“現役寿命”が圧倒的に長くなった。
しかしである。三つ子の魂百までではないが、最初にすり込まれた“常識”はなかなか払拭できるものではない。高齢馬は軽視できないという“新常識”は頭にあっても、いざ馬券を買う際にはどうしても嫌いたくなってしまう。
わかっちゃいるけど、やめられない。
もう、どうにもとまらない。
いつまで経っても、植木等と山本リンダの恐怖の呪縛から抜け出せられないでいた。
2009年11月1日、第140回天皇賞(秋)。迷うことなく2枠3番のカンパニーを消去した。確かに力の衰えは感じられない。ウオッカを下した毎日王冠も強かった。でも、8歳馬である。むかしでいえば9歳のおじいちゃんである。
勝つわけがない。というより、勝っちゃいかんでしょう……。
「年寄りをナメてもらっちゃ困るねぇ」
直線で先頭に立ったとき、彼はそんなことをつぶやいていたかもしれない。カンパニーは、ウオッカをはじめとする、並みいるGⅠ馬たちを退けて快勝した。好発。折り合って中団待機。直線で一気の抜け出し。上がり最速で1着。完璧だ。非の打ち所のない勝利とはまさにこのことだ。
本当に、本当に、強かった。
ただ1頭、芝コースの上を通ってスタンド前に引き揚げてきたカンパニー。鞍上の横山典弘が左手の人差し指を突き上げ、そのあとガッツポーズを繰り出す。そして、「コイツをもっと褒めてやってくれ。ホントに強い馬なんだ」といわんばかりに、パートナーを指差して、何度も何度もアピールした。
ファンの割れんばかりの拍手と声援にカンパニーは大興奮。まだまだ走り足りないといった様子で、再び1~2コーナーに向けて駆け出していった。まさかのウイニングランのアンコール。
アナタは疲れというものを知らないのか!
とてもではないが、激しいGⅠレースを戦い終えた馬とは思えなかった。
検量室前にゆうゆうと戻ってきた勝者に関係者から拍手が送られ、横山が馬上で両手をあげてガッツポーズをつくる。すると突然、カンパニーは大暴走。もうちょっとで鞍上を振り落としそうな勢いで、枠場めがけて突進した。どうやら、体力は存分に有り余っているようである。
脱帽という言葉はこういうときに使うべきなのだろう。帽子をかぶっていなかったから脱ぐことはできなかったけれど、やったような気持ちになりながら、心の中で小さく声をかけた。
ごめんなさい。年寄りだとバカにして悪かった。アナタは若い。そして強い。なにより元気。
口取り写真の撮影のときも気合いはいまだ入ったままで、幾度となく後ろに下がっては、関係者を慌てさせていたカンパニー。いくつになってもヤンチャさが抜けないその姿を見て、なんだかとてもほほ笑ましくなった。
3週間後、もうひとつのGⅠタイトルをあっさりと手中に収め、カンパニーは現役を退いた。8歳の秋にして、引退前のレースを3連勝。しかも、内2つはGⅠ。そんな馬、見たことも聞いたこともない。
これ以来、高齢馬だからといって、むやみに切り捨てることはなるべく控えるようになった。そのおかげで、何度かいい馬券を獲ることに成功している。『スーダラ節』と『どうにもとまらない』のしがらみから解放してくれたカンパニーは、ある意味恩人ともいえる存在なのである。(文中敬称略)
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