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右太ももの筋挫傷で休養していた武豊騎手(54)=栗東・フリー=が13日、16日にレース復帰することを明かした。栗東トレセンで朝日杯フューチュリティステークスでコンビを組むエコロヴァルツ(栗東・牧浦充徳厩舎、牡)の追い切りに騎乗後、自らゴーサインを出した。調教評価で最高の『S』となったパートナーを2歳マイル王に導き、名手が完全復活をアピールする。
関係者の視線を一身に集めたエコロヴァルツの追い切りを終えると、〝ユタカスマイル〟を振りまいた。戦列を離れていた名手がターフに帰ってくる。真っ白のジャンパーに身を包んだ武豊騎手が、16日中山での実戦復帰を明言した。
「今週、乗ります。長かったですね。1頭乗って、大丈夫だな、という感じです」
10月29日の東京5R後、検量室前で下馬した際に騎乗馬に右足を蹴られた。その後は騎乗できず、天皇賞・秋でコンビを組む予定だった昨年の日本ダービー馬ドウデュースなどは乗り替わった。その後、右太ももの筋挫傷と診断されて休養。患部が腫れたまま固まり、右膝が曲がらなかった時期もあった。国内GⅠだけでなく、自ら進言したオオバンブルマイのオーストラリア遠征(ゴールデンイーグル)も断念。さらに当初は11月18日の復帰見込みだったが、回復が遅れて先送りになった。
「こんなに時間がかかるとは。楽しみにしていたレースも多かったですからね。一日も早く復帰したいという思いだけ。できることはやりました。何もしなかった日は一日もなかったです」
悔しさやふがいなさ、焦りを感じながらも、54歳のベテランは休日返上で懸命にリハビリに取り組んできた。8日に調教騎乗を再開すると、患部の状態がグンと上向いた。そしてこの日の朝、追い切りにまたがって最終チェックを行い、復帰を決断した。
好感触を得たのは、自身の状態だけではない。手綱を取ったエコロヴァルツは、栗東坂路でラスト1ハロン過ぎからスッと反応してスムーズに加速。悠々とタイセイランナー(1勝)に2馬身半先着した。4ハロン54秒6と全体時計は控えめだが、馬なりのままラスト1ハロン12秒3で駆け上がり、調教評価は最高の『S』。「いい動きでしたね。能力が高い。フットワークのいい馬で素質を感じます」と笑みを浮かべた。
初めてコンビを組んだ前走のコスモス賞は6馬身差の圧勝。「夏に乗って勝ったあとに、このレース(朝日杯FS)で乗りたいと思いましたからね」と評するパートナーで、今年4月の大阪杯(ジャックドール)以来となるJRA・GⅠ通算81勝目をにらむ。
「心配してくださった方もたくさんいて、励ましの言葉もうれしかったです。レースでいいパフォーマンスをみせて、という気持ちは強いです」
苦悩の日々を乗り越え、感謝の思いを込めて臨む2歳マイル王決定戦。千両役者は大喝采を浴びる準備もできている。(山口大輝)
★武豊騎手トーク
──今週から復帰する
「きのう(12日)くらいからいけそうな気がしていました。間に合ったという感じですね。意外と重傷でした。馬力ってやっぱりすごいね(笑)。まだ騎乗数は少ないだろうけど」
──エコロヴァルツの夏からの変化は
「体が大きくなった感じはします。子供っぽいところはまだあります。(前走は)最後まで問題なく、強い内容でした。あの感じなら、広い競馬場の方がいいかもしれません」
──1600メートル戦は初めてになる
「スタートとか速いわけじゃないけど、マイルも問題ないと思います」
──GⅠに向けて
「陣営も(自身の復帰を)待ってくれていましたからね。待ってくれていたのはうれしい」
★有馬記念はドウデュースで参戦
武豊騎手は8年連続33回目の有馬記念(24日、中山、GⅠ、芝2500メートル)参戦も決まった。この日はコンビを組む昨年の日本ダービー馬ドウデュース(栗・友道、牡4)の1週前追い切りに騎乗。「右トモ(後肢)が本当じゃないかな。俺の(笑)」とジョークで和ませ「相変わらず動くね。反応も抜群で手前もスッと替えた。毎年のことだけど、この季節になるとワクワクする。今年はドウデュースと出られるしね」と、最多タイの4勝目へ意欲をみせた。
また、ノットゥルノ(栗・音無、牡4)で東京大賞典(29日、大井、GⅠ、ダ2000メートル)に臨むことも決定した。
■武豊騎手の経過
★10月29日 東京5R後に検量室前で騎乗馬に右足を蹴られ、天皇賞・秋のドウデュースなど3頭を乗り替わり
★31日 自身の公式HPで右太ももの筋挫傷と診断され、11月18日の復帰を目指すことを発表
★11月9日 自身の公式HPで復帰を1週延ばすことを発表
★20日 自身の公式HPで、想像以上に治るスピードが遅いため、12月2日までの騎乗依頼をキャンセルしたことを発表
★12月8日 栗東トレセンで調教騎乗を再開。「来週も追い切りに騎乗して、決めたいと思います」と語った
★13日 栗東トレセンで追い切りに騎乗し、16日の復帰を明言
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