今年の3歳ダート路線は面白い。
改革元年と称し、南関クラシックがJRAを含めた全国に門戸を開くなど、元々例年とは違った雰囲気を持つ世代ではあるが、サウジ、ドバイ、アメリカと世界を相手に好走してきた
フォーエバーヤングの存在もあり、より層が厚く、バラエティも豊かな勢力図が生まれた。
現状ではその
フォーエバーヤングと、
東京ダービーを圧勝した
ラムジェットの2強体制という声が大方を占めるが、今回のレパードSで
ミッキーファイトが見せた勝ちっぷりは、2強にすら迫るのではと思わせるのに十分なパフォーマンスであったと思う。
レースは
ブルーサンが自分の形を貫く格好でハナへ。
ピュアキアンが追随するが、絶対スピードの差か前には追い付けず、代わりに
サトノフェニックスが好位に浮上。
ミッキーファイトは内からこれらを見る形。馬群の中や砂被りも全く苦にせず、3~4コーナーではいつでも前を捉えられる手応えだった。
しかし、前にいた
サトノフェニックスも人気薄だったとは思えない脚色。
直線ではいち早く抜け出し、後続との差を広げにかかる。
それでも、
ミッキーファイトは動じない。
道中の雰囲気のままに脚を伸ばし続けると、最後は
サトノフェニックスに1馬身差をつけてのゴール。
ラップタイムも最後まで減速しておらず、余裕すら感じる重賞初制覇だった。
格が違う。
そんな印象すら残した
ミッキーファイト。
例年ならばこの勝利をもって世代のトップ評価を受けていそうなものだが、そうならないのがこの世代の面白さであり、本馬もこれからもう一段上のレベルの戦いへ身を投じることになる。
フォーエバーヤングとの力関係は不透明な部分が多いが、ユニコーンSの内容から
ラムジェットとはそう大きな差がないはずで、再対戦の暁にはリベンジを果たしても不思議はなさそう。もちろん、その先にある古馬との対戦も非常に楽しみだ。
勝ち馬の強さには屈したが、2着の
サトノフェニックスも今後に繋がる収穫の多い内容。
兄の
ショウナンアーチー、
サンライズジャストは共にゆったりとした距離で結果を出している馬で、本馬も距離を延ばして大幅にパフォーマンスが向上した。
2歳時は1200~1400mで結果を出していたが、今回で本来の適性が明らかになったのは大きいし、勝ち馬以外には決定的な差を付けたように、基礎能力の高さも垣間見れた。
若駒の頃の海外遠征で不振に陥る馬も少なくない中で、こうしたV字復活を実現した馬自身と陣営は素晴らしく、順調ならば世代上位の1頭として存在感を発揮してきそうだ。
3着には
ミッキークレストがぐっと一伸び。2走前の鳳雛Sで見せたハイレベルな走りが本物であることを証明してみせた。
序盤から終盤まで終始気合を入れられながらの追走で、同馬主の
ミッキーファイトの立ち回りに比べると荒削りな面は目立つが、それでも嫌気を差すことなく最後まで脚を伸ばしたのは好感が持てるし、伸び代も十分にありそう。
どのような展開からでも伸びてくるという個性は非常に強力なので、あとは基礎能力がどれだけ伸びてくるか。父
ジャスタウェイのようにどこかで爆発的な成長を見せるようなら楽しみなのだが。
4着の
バロンドールは淀みのないペースの中でも苦労することなく先団で追走。コーナーの立ち回りもスムーズで、直線ではインに潜り込んで脚を使った。
上位2頭とは差があったものの、中央とは違った流れになる地方や海外の経験が生きている印象で、もう一段二段レベルアップすれば楽しみな存在に。
5着
ハビレは発馬で出負けし後方から。それでも
ブルーサンが引っ張るペースで課題の折り合いはスムーズ。勝負所もインを立ち回って脚は見せたが、進路がなく切り返すシーンがあった。そのロスがなければ3着争いに加わっていた可能性が高く、やや悔いの残る内容と言える。
本質的にはマイル以下の距離が向きそうな馬だが、今後の進路はどうなるだろうか。
一方、人気の一角を担った
ソニックスター、
ジーサイクロン、
サンライズソレイユは見せ場らしい見せ場を作れず。
ソニックスターは道中外々での追走となり、相応のロスはあったものの、それを踏まえても伸びは案外。
ジーサイクロンも出負けから後方追走になるという想定外の事象はあったが、両馬とも現状の完成度や経験といった点で上位とは差があったように思える。
後方から追走や勝負所での押し上げに苦労していた
サンライズソレイユも含め、やや特殊な新潟ダートコースへの適性が着差に表れた面もありそうだ。
それぞれに光るものはある馬たちなので、舞台や相手関係が変わればすぐに巻き返しても不思議なさそうで、今後も適性を見極めながら狙いを立てたい。
ちなみに筆者は新潟県在住で、レース前日には日本3大花火大会の一つ、長岡花火をライブ中継で観ていた。
長岡といえば特に有名なのは”フェニックス”と呼ばれる大花火。
その余韻のまま、サトノ”フェニックス”を抑えておけば……と、後悔することとなった。
夏競馬のうちに馬券成績を不死鳥の如く復活させるつもりだったが、なかなかそう上手くはいかないものだ。