アッと驚く大波乱だ。初コンビの幸騎乗で後方を追走した10番人気の
アカイイトが、直線で早め先頭に立ってGI初制覇。
キズナ産駒もJRA・GI初制覇で、2着も7番人気の
ステラリアが入り同産駒のワンツーとなった。3着は9番人気の
クラヴェルで、3連単は339万3960円。1番人気の
レイパパレは6着、
秋華賞馬で2番人気の
アカイトリノムスメは7着だった。
仁川のターフがどよめきに包まれた。最後の直線。力強く抜け出してきたのは、1番人気の
レイパパレでも、2番人気の
アカイトリノムスメでもない。重賞未勝利で10番人気の伏兵
アカイイトだ。ライバルたちを一蹴し、同レース史上最高配当となる3連単339万3960円の大波乱を演出した。
「最後は『絶対に伸びてくれる』と信じていました。阪神内回りのGIなので、長く脚を使うイメージで乗りました」
初コンビで女王へと導いた幸騎手が笑顔で振り返る。出負けして、後方5番手で脚をためた。ラスト800メートル付近から一気にまくり、残り200メートルで先頭に立って2馬身差の快勝だ。馬群の外を回りながらも、上がり3ハロン35秒7はメンバー最速。JRA・GI初制覇となった父
キズナから受け継いだ非凡な素質が、大舞台で開花した。
「思いのほか前を早く捕まえてしまい、『後ろから来ないでくれ』と思いながら追っていました。(2003年3冠牝馬で2着だった)
スティルインラブで悔しい思いをしたので、きょう晴らせてよかったです」と鞍上は笑みを浮かべた。
運命の糸に導かれた勝利だった。
アカイイトの岡浩二オーナーが所有していた
ヨカヨカの主戦ジョッキーとして、今年の
北九州記念を制覇。熊本産馬で初の重賞制覇を果たし、“九州産馬の星”として
スプリンターズSに向けて調整していたが、調教中に骨折し、引退を余儀なくされた。
「
ヨカヨカで重賞を勝てたことで、(騎乗)依頼があったと思うので。そういう意味では“赤い糸”がつないでくれたのかなと思います」と幸騎手が語れば、岡オーナーも「(
ヨカヨカが故障して)こんなにもGIは遠いのかと。
ヨカヨカのぶんも走ってくれました。“赤い糸”で結ばれていたのかな」と感慨深げだ。
中竹調教師は09年
NHKマイルC(
ジョーカプチーノ)、18年
ホープフルS(
サートゥルナーリア)に次ぐJRA・GI3勝目。「馬にめりはりが出て、たくましい体に見えました。飛び上がるように、うれしい感情がわいてきました」と声を弾ませた。
今後は未定だが、
有馬記念(12月26日、中山、GI、芝2500メートル)も視野に入る。幸騎手と岡オーナーの縁で女王の座に就いた
アカイイト。糸は切れることなく、どこまでも強くなっていく。(増本隆一朗)
■
アカイイト 父
キズナ、母ウアジェト、母の父
シンボリクリスエス。青鹿毛の牝4歳。栗東・
中竹和也厩舎所属。北海道浦河町・辻牧場の生産馬。馬主は岡浩二氏。戦績20戦5勝。獲得賞金1億9289万5000円。重賞は初勝利。
エリザベス女王杯は
中竹和也調教師、
幸英明騎手ともに初勝利。馬名は「赤い糸。父名より連想」。
◆売り上げ、入場者数
エリザベス女王杯の売り上げは168億2731万6500円で、前年比105・8%とアップ。入場人員は5909人(うち有料入場5509人)だった。
エリザベス女王杯アラカルト
●JRA重賞未勝利馬の優勝 3歳以上となった1996年以降では、2015年
マリアライト以来6年ぶり8頭目。
●
キズナ産駒 JRA・GIは初勝利。これまでは今年の秋華賞
ファインルージュなどの2着が最高。産駒の重賞でのワンツーフィニッシュは昨年の葵S以来2回目。
●馬主・岡浩二氏 JRA・GIは初勝利。これまでは2020年
阪神JFの
ヨカヨカで5着が最高着順だった。
●単勝10番人気の勝利 95年
サクラキャンドル以来2回目。
●払戻金 3連複(2)(5)(16)=28万2710円(271番人気)、3連単(16)(5)(2)=339万3960円(1838番人気)で当レースの最高払戻金額を更新。
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