今後の活躍が期待される若手騎手の素顔に迫る「夏に飛び出せ! 若手ジョッキー」の4回目は、原優介騎手(23)=美・フリー=を取り上げる。今年は早くも自己最多を上回る17勝をマーク。9日の福島4Rでは単勝326・2倍の馬を勝利に導く大波乱を起こした〝穴男〟に大注目だ。
◇
巻き起こした波乱の一つ一つが、成長の証しだ。原騎手は9日の福島4Rを13番人気のボールドトップでV。枠連14万9110円は、券種別払い戻しのJRAレコードを53年ぶりに更新した。デビュー4年目で3度目の単勝万馬券を記録した波乱の申し子は、はじける笑顔で振り返った。
「3コーナーで手応えがよく『これは』と思いました。でもまさか勝てるとは。レース後にはお祝いのメッセージが50件近くきていました」
15日には今年の17勝目を挙げ、JRA通算50勝に到達。2021年の16勝を上回り、自己最多勝利数更新を確定させた。
躍進の秘訣(ひけつ)は、抜本的に考え方を改めたことだ。今までは「減量だから前へ行かなければ」という考えに縛られて、位置取りに躍起になっていたが、最後のひと伸びを欠いて2着が多かった。「関係者には納得してもらえますが、馬には苦しい競馬となっていました」と当時を振り返る。
そこで、リスクを覚悟で120点の騎乗を心掛けると、未勝利戦を中心に勝ち鞍が増加した。「勝たせる方法が分かってきました。納得させる競馬と勝たせる競馬は別物です」と手応えをつかんだ。レース後には、尊敬を超えた存在である津村騎手からペース配分や進路取りに関するアドバイスをもらい、技術向上に励んでいる。
そんな若武者も、ひとたび競馬を離れれば、プロ野球・DeNAを熱烈に応援する好青年。「元々、牧選手が好きでした。人柄がいいですし、めっちゃ打ちますから。でも今はチーム全体を応援しています」と目を輝かせる。ファン歴はまだ浅いが、ファンクラブのランクはトップステージ。オフの日には、球場に足を運ぶほどのハマ党となった。
穴党を何度も歓喜させてきた23歳と最後にこんな約束を取り付けた。「デスターシャですか? いいですね、重賞を勝ったらやりましょう」。牧選手らの決めポーズを、競馬場で見られる日も遠くないはず。夢を追いかける新星の〝頂戦〟はこれからが本番だ。
■原 優介(はら・ゆうすけ) 2000(平成12)年6月10日生まれ、23歳。東京都調布市出身。JRA競馬学校36期生として17年に入学。20年に騎手免許を取得し、同年3月1日の中山3Rでデビュー(8着)。4月5日の中山12Rを13番人気のタイキダイヤモンドで初勝利を挙げた。JRA通算1791戦50勝(20日現在)。今年3月に美浦・小桧山悟厩舎所属からフリーに。158・1センチ。47キロ。