第38回
ジャパンカップ(25日、東京11R、GI、3歳上オープン国際(指)、定量、芝2400メートル、1着本賞金3億円=出走14頭)前年の覇者も古馬のタイトルホルダーもあっさり退けた。1番人気の
アーモンドアイが、2012年の
ジェンティルドンナ以来となる史上2頭目の3歳牝馬のVを達成。2分20秒6(良)の世界レコードで、国内最強をアピールした。この後は、
有馬記念は使わず来年のドバイ遠征に備える。
アーモンドアイの圧倒的な内容、2分20秒6の驚異的なレコードタイムに、国枝調教師の表情は緩みっぱなしだった。
「ロンジンの時計は優秀だから、こんなに速いタイムになったんだろ。俺の腕時計はもっと遅かったよ」
相変わらずの国枝節で周囲を笑わせたが、「すごく期待していたし、たぶん大丈夫だろうと思っていたけど、その通りの結果になってホッとしたよ」。やはり重圧との戦いだったようだ。
トレーナーが最も懸念していたのは折り合い。だがスタートしてすぐ不安は吹き飛んだ。「ゲートを出て、いい位置が取れた。コントロールも利いていたし、これならと安心した」。さらに、1000メートル通過59秒9とモニターに映し出されたのを見て、「いける!」と勝利を確信した。
踏み込みが深く、後肢と前肢がぶつかるため、
秋華賞では前肢の蹄鉄(ていてつ)はけがをしないようにクッションを付けたものを使用していたが、今回はさらに改良したものを使用。負けられない大一番に万全の態勢で挑んでいた。その結果、生み出された超高速タイム。もう国内に敵はいない。
今後についてはオーナーサイドとの協議で決められるが、「きょうはグローバルなレースで勝てたし、外国に出て行けたら、と思います」と、視線は世界へ向いている。来春の目標はドバイ国際競走になるのだろうが、大目標はやはり日本馬の悲願、
凱旋門賞制覇だ。
「みなさんが考えているようなレースに行きたいですね」
今年、トレーナーとして30年目を迎えた国枝調教師。節目の年に出現した超大物。来年は
アーモンドアイとともに世界を駆け回り、新時代を切り開いていく。 (柴田章利)
★シルク・米本代表「夢を現実にしてくれる馬」
生産者のノーザンファーム・吉田勝己代表(70)は、「化け物過ぎる。恐怖さえ感じるね」と、その強さに舌を巻いた。馬主の(有)シルクレーシング・米本昌史代表(43)も「来年の青写真を描く上で試金石の一戦だったが、これで(日本の)トップホースであることをはっきりと確認できた。夢を現実のものにしてくれる馬。今後は海外を意識せざるを得ない」と感激の表情で話した。今後について吉田代表は
ドバイターフ(3月30日、ドバイ・メイダン、GI、芝1800メートル)か、
ドバイシーマクラシック(同、芝2410メートル)になると明かした。
生産者のノーザンファームは2年連続のVで今年のGI12勝は、同牧場が昨年に記録した11勝を上回る年間記録。同牧場の進撃はとどまるところを知らない。
アーモンドアイの活躍で、父の
ロードカナロア(社台スタリオンステーション)の評価は急上昇。種付け料は今年の800万円から来年は1500万円になることが先日発表された。
母は昨年の2月28日に
ルーラーシップの子を出産した後に死んだが、その最後の1歳牡馬は堂々たる馬体で大きな評判を呼んでいる。
★入場&売り上げ
25日の東京競馬場の入場人員は前年比91.2%の9万8988人で、
ジャパンCの売り上げも同92.3%の204億7549万1300円と、ともにダウンした。出走馬が14頭と少なめだったことも影響したとみられる。JBC3レースを除く今年の平地GI19レース中、
フェブラリーS、
大阪杯、
皐月賞、天皇賞・春、
宝塚記念、天皇賞・秋、
エリザベス女王杯に次ぐ8レース目の売り上げダウンとなった。
★アラカルト
◆牝馬のV 9勝目だが、今年を含む過去10回では6勝と牡馬を上回っている。また、3歳馬は7勝目。他は4歳18勝、5歳10勝、6歳2勝、7歳1勝。
◆GI4連勝
桜花賞、
オークス、
秋華賞に次ぐ勝利で、GI以外のレースを挟まない4連勝は史上初。
◆クリストフ・ルメール騎手 JRA・GIはJpnIの
JBCスプリントの
グレイスフルリープに次ぐ今年8勝目で、自身の年間最多勝記録を更新。通算では歴代8位タイの22勝目。
◆
国枝栄調教師 3度目の挑戦で初勝利。JRA・GIは歴代6位の15勝目。
◆
ロードカナロア産駒 現3歳が初年度産駒で、JRA・GIは前週の
マイルCSの
ステルヴィオに次ぐ5勝目。
◆日本馬 06年
ディープインパクトから13連勝で、関東馬は08年
スクリーンヒーロー以来の5勝目。他は関西馬19勝、米国、英国が各4勝、アイルランド、フランス、ニュージーランド、オーストラリア、ドイツ、イタリアが各1勝。
◆1番人気&馬番(1) 1番人気は16年
キタサンブラック以来の8勝目。馬番(1)は3連勝での5勝目。最多は(14)番の6勝。
◆単勝支持率 53.4%(140円)は06年
ディープインパクト(1着、130円)の61.2%に次ぐ2位。