第72回
菊花賞(23日、京都11R、GI、3歳牡牝オープン国際(指)、馬齢、芝・外3000メートル、1着本賞金1億1200万円 =出走18頭)今春の
皐月賞&ダービー馬
オルフェーヴル(栗東・
池江泰寿厩舎、牡3歳)が、2周目4コーナー先頭から独走。2005年
ディープインパクト以来、6年ぶり史上7頭目の3歳牡馬クラシック3冠馬に輝いた。勝ちタイム3分2秒8(良)はレコードに0秒1差。史上最年少の3冠馬ジョッキーとなった
池添謙一騎手(32)=栗東・フリー=は「夢が広がる走り。
オルフェーヴルに乗れたことを誇りに思う」と胸を張った。陣営は来年、フランスの
凱旋門賞への挑戦を明言。4日に死亡した1984年3冠馬
シンボリルドルフと入れ替われるように誕生したスターは、今度は世界のNo.1を目指す。
京都競馬場を覆う厚い雲を切り裂くかのように、6万8289人の大歓声が響きわたる。2周目4コーナー。
オルフェーヴルが、外から早くも進出して先頭だ。黄金色に輝く馬体は後続を突き放し、あとは栄光のゴールへ向かって自分の道を突き進むのみ。史上7頭目の3冠馬は、2馬身半差の圧勝で誕生した。
「後ろの馬に差されるイメージはなかったので、自信を持って乗りました。無事に3冠を獲れてほっとしましたね」
史上最年少32歳3カ月1日で3冠ジョッキーに輝くと同時に、史上6人目の5大クラシック制覇も果たした
池添謙一騎手は、偉業達成に晴れ晴れとした表情を浮かべた。
外枠不利の
菊花賞で、(14)番枠は最後の試練だったが、好スタートではねのけた。その直後の坂の下りで行きたがるそぶりを見せたが、池添が中団で懸命になだめ、少しずつ落ち着きを取り戻す。2周目に入って、人馬ともリズムがピタリ。だからこそ、早めに動く強気な競馬ができた。池添は直線半ばで「勝てる」と確信。ゴール前で手綱を緩める圧勝を「夢が広がる走り」と形容した。
池添にとって、
菊花賞前のプレッシャーは想像以上だった。「一生に1回あるかないか。ガンガンに緊張している。現役ではユタカさん(
武豊騎手)しか3冠を獲っていないですから」。日に日に表情が強ばっていくのが、自分でも分かる。だが「
オルフェーヴルと謙一を信頼しているから」と
池江泰寿調教師、「自信を持って乗ってください」と担当の森沢光晴調助手。その言葉と、相棒の頼もしい背中が勇気と自信を与えてくれた。
厩舎開業から最速(7年7カ月23日)で3冠馬トレーナーとなった
池江泰寿調教師(42)=栗東=は「父があっての
池江泰寿厩舎であり、私であり、3冠です」。
ディープインパクトを管理した父、
池江泰郎元調教師(70)に感謝を述べて、史上初の父子3冠トレーナーの感慨に浸った。そして「目標は、ボクの夢である
凱旋門賞です」。来年10月に行われる世界最高峰レースでの頂点奪取に夢を馳せた。
昨年8月の新馬戦勝利後に池添を振り落とし、
菊花賞のゴール後にも再び池添を振り落としたが「
オルフェーヴルと僕らしいですね」と池添。今度はガッチリと手綱を握って離さず、そのまま愛馬の胴に顔をうずめて喜びをかみしめた。レースでまっすぐに走れない面や、エキサイトしすぎる面があり、昨年10月から2月まで4連敗。そんな精神面の難しさを克服して手にした栄光だった。
今後は
ジャパンC(11月27日、東京、GI、芝2400メートル)か
有馬記念(12月25日、中山、GI、芝2500メートル)。日本一、そして世界一へ-。
オルフェーヴルと池添はさらなる高みを目指していく。 (板津雄志)
★3冠馬
近代競馬発祥の地・英国のレース体系に倣い、
皐月賞(芝2000メートル)、ダービー(芝2400メートル)、
菊花賞(芝3000メートル)のすべてを制した馬を3冠馬という。距離が異なり、施行時期も春が
皐月賞(4月)とダービー(5月)、秋が
菊花賞(10月)と長い期間で争われるため、体系が整ってから約70年で今年の
オルフェーヴルを含めて7頭しか達成していない。