第57回
有馬記念(23日、中山10R、GI、3歳上オープン国際(指)、定量、芝・内2500メートル、1着本賞金2億円=出走16頭)圧倒的な強さだった。
内田博幸騎乗の1番人気
ゴールドシップ(栗東・
須貝尚介厩舎、牡3歳)が、道中最後方から進み、桁違いの末脚を見せて完勝。今年の
皐月賞、
菊花賞に続くGI3勝目をあげた。タイム2分31秒9(良)。来春は天皇賞(4月28日、京都、GI、芝3200メートル)が最大目標となる。2着は10番人気の
オーシャンブルー、3着は大出遅れから巻き返した
ルーラーシップ。
師走の薄日を浴びてきらめく芦毛の馬体に、中山競馬場に詰めかけた10万人を超える大歓声が降り注ぐ。圧倒的な力で古馬を蹴散らした
ゴールドシップが、堂々の
グランプリ制覇。手綱を取った
内田博幸騎手でさえ、強さに感服した。
「乗り方うんぬんじゃなく、馬が本当に強かった。頭が下がりますね。今年を表す漢字が『金』だったから、金で締めくくりたかった」
豪快な大まくりでライバルをねじ伏せた。道中は最後方を追走し、2周目の3コーナー過ぎからスパート。外を回って4コーナーで10番手までポジションを上げる。直線は真ん中に進路を取って加速すると残り100メートルで先行勢をあっさりかわした。4コーナー10番手通過での勝利は2006年の
ディープインパクト以来で、芦毛馬の勝利は1990年の
オグリキャップ以来。歴代の名馬に姿を重ねたくなる衝撃的なレースだった。
「最後は大外を回ってもこの馬なら突き抜けてくれると信じていた」
内田博騎手は絶対的な自信を持っていた。昨年5月に落馬して頸椎歯突起骨折の重傷を負い、一年前の有馬は療養中でテレビ観戦。約8カ月ぶりの復帰から2週間後、今年2月の
共同通信杯で復帰後の初重賞をプレゼントしてくれたのが
ゴールドシップだった。長いブランクで失いかけたものを芦毛の3歳馬が思い出させてくれた。初コンビでの重賞制覇から、GI3勝を上乗せして、最高の形で2012年を締めくくった。
須貝尚介調教師は、「応援してくれたファンのみなさんと、関わってくれたすべての人に感謝します。みなさんのサンタクロースになれてよかったです」と笑った。
圧巻のV3だったが、満足はできない。今回は3冠牝馬で
ジャパンCを制した
ジェンティルドンナや
凱旋門賞2着の
オルフェーヴルが不在だったからだ。来春は天皇賞から
宝塚記念に向かう予定で、秋も国内に専念。3頭が直接対決するのは、来秋の
ジャパンCあたりか。海外挑戦はその先になりそうだ。
「来年は古馬として、GIホースとして恥ずかしくない競馬をしたい。ここからが始まりです」
気を引き締めた須貝尚調教師の目は、
ゴールドシップが突き進む黄金に輝く航路に向いていた。 (川端亮平)