久しぶりに中京へと帰ってきた当レース。中継を通して多くのファンの歓声が聞こえ、さすが重賞と思える盛り上がりを見せていたようだ。
それはそれで賑やかな競馬観戦が本格的に戻ってきたようで喜ばしいのだが、今回の出馬表を見て頭を抱えたのは筆者だけではあるまい。何度思考を巡らせてみても、中心馬らしい中心馬は不在。有力と目された馬達も、何か一つ歯車が噛み合わなければド惨敗まであり得そうなキャラの持ち主ばかり。様々なタラレバにまみれながら予想した方が多いのではないだろうか。
筆者も筆者で、「この馬はこう動いてくれたら勝てるはず」とか、「こういう展開になればあの馬は怖いはず」とか、様々なタラレバを脳内で生み出していたのだが、その中には、今回勝った
セルバーグが「単騎逃げしてくれたら」というものもあった。中途半端な形で見せ場すらなかった前2走と、逃げて運んだ3走前に刻んだレースレベルがあまりにも違いすぎたからだ。
とは言え、父
エピファネイアの気性の難しさが前面に出たタイプで、これまでも安定感とは無縁の存在。減量騎手を起用して逃げさせてみたり、少しでも綺麗な競馬ができるよう抑える戦法を試みたりと、陣営の試行錯誤がかなり感じられた馬だっただけに、ここ一番で逃げの手に打って出てくれるのか、そもそも癖のある馬なだけに、しっかりとスタートを決められるのか等、ゲートを出てみないと分からない面が非常に多く、筆者の予想力では▲を献上するのが精一杯であった。
それだけに、鞍上の松山騎手が迷いなくハナを主張し、単騎逃げの形に持ち込んだ時点で、◎を打たなかったことを早速後悔することとなった。自身の"こうなると強い"方法を、メンバー中最もスムーズに実践できたことのアドバンテージは絶大だったし、そうした戦法を陣営が率先してとってきたというのは、本馬が力を出せる方法をしっかり把握しているということ。色々な戦法を試してきた本馬にとって、しっかりと自分の形が固まったというのは非常に大きな一歩だ。
気性が気性だけにこれからも浮き沈みの激しい戦績を刻むことになるのだろうが、チャンスがあれば、また今回のように逃げを打ってくるはず。強い逃げ馬の存在はレースを締めてくれるし、予想をする面でも考える楽しみが増える。馬券を狙い撃つ難しさはあるものの、新たな個性派逃げ馬の誕生は、今後のマイル路線に少なからず影響を与えることになるだろう。
今回は
セルバーグにレースを支配されたものの、2着に飛び込んだ
ディヴィーナも見せ場十分。
セルバーグと同等か、それ以上にレースに行っての安定感に欠ける馬で、相変わらず折り合いは難しそうな面を見せていたものの、それでも本馬としてはスムーズな方。直線における伸び脚もしっかりしており、改めて重賞級の能力があることを証明した。
ヴィクトリアマイルは超人気薄による好走だったためにどこかふわふわとした評価だったものの、重賞連続好走を果たしたことで、ようやく確固たる地位を確立した印象。気性面を考えると、秋の牝馬路線よりもこのままマイル路線を歩む方が無難と思われるが、結果の出ていない他場でも上手な競馬ができるかどうかが当面の課題となる。
僅差の3着争いを制したのは
ルージュスティリア。
本馬にしては道中で力み気味になっていたし、馬場に脚を取られたかバランスを崩すシーンも。3コーナー過ぎ辺りでも派手に躓いており、全体的にスムーズなレース運びだったとは言い難い。
それでも気持ちを切らさずにここまで伸びてきたのは評価できるし、パフォーマンスのブレが少ないのは大きな長所。重賞で安定して勝ち負けを演じるにはもう一段上の成長が必要になりそうだが、展開問わず常に自分の力は出してくるだけに、今回のような低調なメンバー構成の際は警戒が必要になるだろう。
4着の
ウイングレイテストもしっかりと見せ場は作ってきたが、やはり直線が長めのコースだともう一押しが足りなくなる。最も安定してハイレベルな走りを見せているのが中山マイルなだけに、現状では直線の短い小回りコースがベストなのかもしれない。
前走で大きく減っていた馬体が戻らなかったのも気がかりだし、この後のレース選択や調整面などがどうなるか、しっかり注視しておきたい。
その他に触れておきたいのは
サブライムアンセムと
メイショウシンタケ。
前者は課題のスタートを無事に決めたものの、道中で前向きすぎる挙動を見せていた。
後者も同様の挙動を見せており、この2頭に関してはマイルよりももう少し短い距離向きの気性であるように感じる。しっかりと折り合いが付けばマイルでも上位争い可能な力はあるが、1400m寄りのマイラーと捉えていた方が良さそうだ。
○霧(きり)プロフィール
ウマニティ公認プロ予想家。レース研究で培った独自の血統イメージに加え、レース戦績や指数等から各馬の力関係・適性を割り出す”予想界のファンタジスタ”。2023年1月には、長年の活躍が認められ殿堂プロ入りを果たす。
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