第76回
日本ダービー(5月31日、東京10R、GI、3歳オープン、せん馬不可、定量、芝2400メートル、1着本賞金1億5000万円=出走18頭)40年ぶりの不良馬場で劇的な逆転V-。単勝2番人気の
ロジユニヴァースが直線でインを突いて抜け出して4馬身差の圧勝。1番人気で14着に惨敗した皐月賞のウップンを晴らした。
横山典弘騎手(41)は初騎乗から20年、15度目の挑戦で念願のダービー制覇。2分33秒7。2着が
リーチザクラウン、アタマ差3着が
アントニオバローズ。断然人気の皐月賞馬
アンライバルドは12着に完敗した。
勝敗は一瞬で決した。ライバルのすぐ内側に開いたわずかなコースが、栄光へと続く雨中のビクトリーロード。
ロジユニヴァースと
横山典弘が迷わず突っ込む。泥田のような極悪馬場に耐えて相手の追撃を封じ込んだ。
「正直、ずっと調子が良くないと思っていたんです。馬に失礼なことをしました。本当に、本当に、勝つとは思っていなかったので…。今回は馬に感謝です」
独特のガッツポーズも出ない、静かなゴール。反省の弁が口をついたのも、正直な気持ちだ。無理もない。断然人気の皐月賞は14着に大敗。1週前追い切りも冴えなかった。苦悩の思いは、メディアを通じてファンにも伝えたが、そこから懸命の仕上げを施した陣営に最高の騎乗で応える。「馬に負担をかけない。それだけを考えました」という言葉通りの競馬。折り合いをピタリとつけて、3番手で運び直線もロスなくインへ。脚が上がりかけるロジを懸命に叱咤した。「必死でした」という最後は、4馬身差の圧勝にも気づかないほどだったが、ノリらしい自然体の騎乗で呼び込んだVだ。
初めてダービーに乗ったのが1989年。翌年に、1番人気の
メジロライアンで2着に敗れた。03年
ゼンノロブロイ、04年
ハーツクライも2着。そして09年、自身のJRAGI連敗を「83」でストップして悲願を達成。04年天皇賞・春の
イングランディーレ以来5年ぶりとなるGI勝ちは、
サニーブライアン以来12年ぶりの関東馬によるダービー制覇となった。「これだけ関東が低迷している中での勝利は大きい」。関東の第一人者として結果に胸を張った。
優勝旗を受け取った時に見せた、満面の笑み。表彰式に向かう途中で、息子を抱きしめた父としての素顔。ウイニングランでは、雨中で応援したファンに向かって深々と頭を下げた。何をやっても絵になる男が、ついに手に入れたダービージョッキーの称号。現役では関東でただひとり。「これからまた勝てるように、一生懸命頑張って…って、オレらしくないな」。
記者会見場を爆笑の渦に巻き込んだノリの表情は、深い雲に覆われた府中の空とは対照的に澄み切った笑顔だった。「きょうはこの馬の底力と生命力のなせる業。とにかく無事でずっと走っていけたらいい」と言う
ロジユニヴァースとともに、堂々と王道を突き進んでいく。(黒田栄一郎)
親子制覇
ロジユニヴァースは03年
ネオユニヴァースと父子制覇を達成。これは02年
タニノギムレット&07年
ウオッカ以来5回目。
阪神デビュー馬のV
ロジユニヴァースのデビューは7月6日阪神。阪神デビューのダービー馬は40年イエリユウ、98年
スペシャルウィーク、05年
ディープインパクトに次ぐ4頭目と少ない。
皐月賞大敗からの雪辱
ロジユニヴァースは
皐月賞14着。二桁着順からのダービーVは86年
ダイナガリバー(
皐月賞10着)以来23年ぶり8頭目。
遅いVタイム
勝ちタイム2分33秒7は不良馬場で行われたダービーでは最速。2分30秒以上かかったのは85年
シリウスシンボリ(2分31秒0=重)以来。