「なんとなく自分はこの舞台の予想が得意」
読者の皆様も、そんな風に感じるコースや距離があるのではないだろうか。
筆者にとって
フィリーズレビューが行われる阪神1400mは、正にそんな舞台であった。
自分でも理由ははっきりと分からないのだが、予想的思考がハマりやすいのだろう。昔からこの舞台ではそれなりの好配当を手にしてきた自覚がある。2020年、2021年の当レースにおいても、結構気持ちのいい当たり方をしたものだ(注・過去の栄光です)。
そんな勝手知ったる舞台であったがゆえに、今年の結果……
エトヴプレの勝利には驚いた。
否、
エトヴプレが勝った事自体は驚きではなかったか。これまでも十分に高いパフォーマンスは示していたし、好走しても不思議ではないと評価していた馬。驚いたのは、その”勝ち方”だ。
過去の結果を遡っていくと分かるが、当レースで逃げた馬が勝ち切った例というのは非常に少ない。ややスプリント寄りの適性を持つ馬がここを目指してくるせいだと考えているが、とにかく道中のペースが厳しく、差し競馬になりやすい。マイル以上の距離を使われて、距離短縮で挑んできた馬が多く好走しているというのも、タフな流れの中で最後の一押しが利きやすいからだろう。
では今年がどうだったかというと、1000m通過は56秒4。差し・追い込み馬同士の決着となった近3年と比べても同等か、少し速いくらいのペースだ。十分にタフな流れだと言える。
その中で逃げながら、最後まで大きくラップを落とさず勝った
エトヴプレの走りはなかなかのものだ。ここまで5戦全てで1200mを使われてきた馬で、距離延長で臨んだ一戦であったことも踏まえると、過去の当レース好走馬の中ではかなり異質の存在。これが絶対能力の高さによるものであれば、今後がかなり楽しみになる。
血統的に1200~1400mがベストという印象が強く、自身の走りも前進気勢に溢れたものであることを考えると、この後に控える
桜花賞は必ずしもベストの舞台とは言えないかもしれない。が、さらにその先にあるスプリント路線に舵を切ってくるようならば、楽しみは一気に増すはず。前向きながらも制御はしっかりと利き、決して一本調子なタイプではないため、かなり安定感のある
スプリンターとして成長する可能性があるだろう。
同様の可能性は2着の
コラソンビートにも感じる。
阪神JFにおいて前向きな走りを見せていたことから、今回の1400mという距離では盤石の存在かと思われたが、ここでもその前進気勢の強さは変わらず。鞍上がかなり強めに抑えているように映った。
こちらは勝ち馬と異なり、血統的にはマイル以上も余裕でこなせる構成なのだが、この気性面を考えると短めの距離のほうが力を出しやすいかもしれない。再度マイルへの挑戦となる
桜花賞に繋がる走りだったかは疑問で、先々の進路をなんとなく予感させる一戦だったように思える。
3着の
セシリエプラージュは、道中も直線も外を回る形での競馬。
エトヴプレと
コラソンビートがインコースをロスなく回っていたことを考えると、この差し込みは褒められる。母の
アットザシーサイドも当レースの好走馬で、母譲りの適性をしっかりと発揮した形か。
指数的な見地からすると、現状では母の同時期よりも一回り小粒な数字を刻んでおり、
桜花賞でこれ以上の走りが出来るかは疑問だが、ゆくゆくは1200~1400mの安定勢力になる可能性は秘めている。
こうした上位馬以外でも、なんとなく”未来の
スプリンター”になり得る存在が多いように感じた今年の当レース。数年後にここを走っていた馬がどんな舞台を主戦場にしているのか、その確認作業も競馬の楽しみの一つ。それぞれの馬の個性をしっかりと把握しながら、その蹄跡を追いかけていきたいものだ。
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霧(きり)プロフィール
ウマニティ公認プロ予想家。レース研究で培った独自の血統イメージに加え、レース戦績や指数等から各馬の力関係・適性を割り出す”予想界のファンタジスタ”。2023年1月には、長年の活躍が認められ殿堂プロ入りを果たす。
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