第56回
有馬記念(25日、中山10R、GI、3歳以上オープン、芝2500メートル、1着本賞金2億円=出走13頭)これが3冠馬の底力だ!
池添謙一(32)=栗東・フリー=騎乗の1番人気
オルフェーヴル(栗東・
池江泰寿厩舎、牡3歳)が大外から豪快に差し切り、GI4勝目をあげた。注目された、最強牝馬
ブエナビスタとの最初で最後の対決を制し、日本最強を高らかに宣言した。タイム2分36秒0(良)。来年は秋の
凱旋門賞(10月7日、フランス・ロンシャン、GI、芝2400メートル)が最大目標となるが、この勝利により春のドバイ遠征も浮上。日本最強の座についたスーパーホースは来春、世界を舞台に戦う。
現役最強、いや史上最強だ。雲がかかり、薄暗さを増した師走の中山で、黄金色の馬体がひときわ輝いた。女傑
ブエナビスタを抑えて、1番人気に支持された
オルフェーヴルが、大外から12頭を豪快に差し切って3歳4冠目を獲得。11万を超える大観衆に、3冠馬の強さを見せつけた。
「内の馬も来ていることは見えたが、ねじ伏せるように伸びてくれた。もう“強かった”という言葉しか出てこない」
池添謙一騎手(32)=栗東・フリー=が、興奮冷めやらぬ表情で振り返った。
秋2戦にはなかった、まさかの出遅れで序盤から厳しい展開をしいられた。前半1000メートルは1分3秒8の超スローペース。最後方まで下がり、行きたがる面も見せるなど、一時は絶望的と思われた。
しかし、それらは3冠馬にとっては些細なことだった。向こう正面で外に出されると、2周目3コーナーから進撃を開始。「沈みこむ感じで抜群のスピードの乗り」というコーナリングで5番手に取り付き、直線入り口で早くも前を射程圏に入れた。さすがに相手は歴戦の古馬。内から伸びた昨年のダービー馬
エイシンフラッシュに抵抗されたが、直線半ばで先頭に立ってからは一度も前を譲らなかった。
検量室前に引き揚げてきた池添は「よっしゃあ!」と、馬上で力強く両腕を突き上げ、喜びに浸った。「3歳世代が弱かったから3冠が獲れたと言われたりもしたが、この馬が一番強いと自信を持って乗った。日本最強を証明できてよかった」。女傑
ブエナビスタとの最初で最後の対決を制し、
オルフェーヴルは正真正銘の日本一に輝いた。ジョッキー自身も05&06年の
武豊騎手、07年の
安藤勝己騎手と並ぶ年間最多記録のGI6勝目となった。
池江泰寿調教師(42)=栗東=は、装鞍所で体つきを見て勝利を確信していた。レース後には「力が抜けているのがわかっていた。2キロの斤量差があったから3馬身くらい差をつけると思っていたけど、さすが古馬だね」と本音をポロリ。09年の全兄
ドリームジャーニーとの兄弟制覇は有馬史上初となった。
この勝利で来年のプランが上方修正されるかもしれない。「揚がってきても息がすぐに整った。これならドバイもなきにしもあらず」とトレーナーは来年3月31日に行われるドバイ国際競走のドバイワールドCか、シーマクラシックの参戦をほのめかす。最大目標である秋の
凱旋門賞の前に世界で雄姿が見られるかもしれない。
「遅生まれ(5月14日)なので、乗るたびに乗り味や走り方が全然違う。来年はもっと良くなるし、夢が広がります。きょうは日本一を証明できたし、来年は世界一をとりたい」
主戦の池添が胸を張る。国内最強から世界最強へ。
オルフェーヴルの新たな伝説が、ここから始まる。 (板津雄志)