第35回
エリザベス女王杯(14日、京都11R、GI、3歳上牝馬オープン国際、定量、芝・外2200メートル、1着本賞金9000万円=出走17頭)世界トップレベルの強さは衝撃的だった。英国からやってきた4番人気
スノーフェアリーが直線で内から抜け出すと、後続をグングンと突き放して、日本馬はなすすべなし。今年の英愛
オークス馬が、
エリザベス女王杯史上で最大となる4馬身差をつけて、圧勝を収めた。タイム2分12秒5(良)。
ジャパンC(28日、東京、GI、芝2400メートル)へ向かうかは未定も、出走してくれば日本馬の脅威となる。史上最速のJRA・GI5勝到達に挑んだ1番人気
アパパネは3着に敗れた。
英愛
オークス馬が、圧倒的なパフォーマンスで日本勢を撃破した。英国の3歳牝馬
スノーフェアリーが上がり3ハロン34秒0の切れ味を披露。直線で豪快に突き抜け、昨年まで7頭が出走して、勝利に届いていなかった外国馬では初の
エリザベス女王杯の覇者となった。
「夏を越して馬体も力強くなっていた。英愛
オークスなどを振り返っても、今回が彼女のベストパフォーマンスだよ。とにかく勝ててうれしい」
ライアン・ムーア騎手は、パートナーの強さに誇らしげだ。「調べたら3頭(
アパパネ、
メイショウベルーガ、
アニメイトバイオ)が強いと思った」と対策を練った末、
アパパネに標的を絞った作戦も的確だった。
好スタートから、同じ赤い帽子の
アパパネをすぐ前に見る形でレースを進める。
テイエムプリキュアが後続を離して逃げたが、それにも慌てずライバルの動向を観察。京都競馬場特有の3~4コーナーの坂の上り下りもスムーズにこなすと、直線へ向いて末脚爆発だ。
「スタートからすべて順調。道中は
アパパネをマークして、直線の入り口では自然と前が開いて内をつく形になった」とムーア。
アパパネが進路を外に取った時、
スノーフェアリーの前がポッカリと開いた。迷いなく内に進路を取ると瞬く間に後続を突き放し、ゴールでは4馬身という決定的な差をつけていた。
今年、6月4日の英
オークスで初のクラシックVを決めたムーアは、その翌日にワークフォースで英ダービーも制覇。
凱旋門賞では同馬で2着
ナカヤマフェスタの夢を打ち破った。日本ファンにとっては憎らしいほど手綱さばきが冴えている。今週末から短期免許を取得し、
マイルCSは
キンシャサノキセキに騎乗。GI連勝も十分だ。
1歳のセリでは1800ユーロ(当時のレートで約23万4000円)でも売れず、結局、生産者がそのまま走らせることになった
スノーフェアリー。それが欧州、日本の女王の座を独占し、今回は1着本賞金9000万円のほかに褒賞金9000万円、計1億8000万円を得た。陣営の喜びもひとしおだ。「
ジャパンC出走はオーナーの判断。でも、
ブエナビスタを倒すのは今しかないと思います」とエドワード・ダンロップ調教師は希望を膨らませた。ムーアは
ジャガーメイルに騎乗するため鞍上は未定も、出走すれば注目の存在だ。
日本でさらなる素質が開花した英国の妖精。そのシンデレラストーリーは、ますます輝きを増していくことだろう。(高尾幸司)