第45回
スプリンターズS(2日、中山11R、GI、3歳上オープン国際(指)、定量、芝・外1200メートル、1着本賞金9500万円 =出走15頭)新女王の誕生だ! 秋のGIシリーズ第1弾は、先頭集団の直後を追走した3番人気の4歳牝馬
カレンチャンが、直線で外から力強く伸びて快勝。5連勝、重賞4連勝でGI初制覇を果たした。タイム1分7秒4(良)。2着に先行した9番人気
パドトロワが粘り、3着はサマースプリントシリーズ王者の7番人気
エーシンヴァーゴウ。断然の1番人気に推されたシンガポールのロケットマンは4着に敗れ、22戦目で初めて連対を外した。
世界トップレベルの
スプリンターを、4コーナーで馬なりのままかわしていく。勢いの差は歴然だった。初の中山も楽々
クリアして、
カレンチャンが5連勝で女王君臨。“やまとなでしこ”が、世界の強豪を撃破した。
「強かったですね。直線を向いても手応えはあったし、追ってからも反応がありましたから」。区切りの重賞50勝目を飾った
池添謙一騎手は「ここでもやれると思っていました。重賞で、負けなしで頂点まできたのだから、たいしたもの」と、パートナーをたたえた。
いつもは不安のないスタートだが、待たされた影響で、緊張の糸が緩んだ。1歩目が遅れた。「あっ、と思いました。でも、二の脚が速かった」と、すぐに挽回。仕掛け気味にジワジワと好位に取りつくと、4コーナーでは、すでに前を射程圏に。上がり3ハロン33秒8の末脚で先行勢をあっさり捕らえた。サマースプリントシリーズは、最終戦
セントウルSで
エーシンヴァーゴウに逆転を許しており、だからこそ「その見返りに、GIをプレゼントしてくれた」と
安田隆行調教師は、この勝利に満面の笑みを浮かべた。
デビュー時から高い素質を感じさせていたが、体質が弱く3歳夏からリフレッシュで、7カ月休養。「無理しなかったのが今年の活躍につながった」と安田隆師は話す。今後は12月の阪神Cを予定していたが、上方修正。「ひと叩きして、来年の
高松宮記念を目指します」と安田隆師。国内専念でGI連勝を狙う。
昨年の
京阪杯を勝った
カレンチャンの半兄
スプリングソングは、5月に変位疝(腸などがねじれる腹痛の一種)で死亡。「お兄ちゃんも、天国で応援してくれていたと思う」。兄の主戦も務めた池添は胸を熱くさせた。
その池添は、
ローズSの
ホエールキャプチャ、
神戸新聞杯の
オルフェーヴルに次ぐ3週連続の重賞Vで、さらに札幌リーディングも奪取。「
秋華賞、
菊花賞、この2つもしっかり獲らなきゃ、と思っています」。実りの秋を迎えた32歳は、
カレンチャンの勝利でさらに自信を深めて、
オルフェーヴルの3冠挑戦も待つGIシーズンの主役を突き進む。 (田中直成)