第54回
有馬記念(27日、中山10R、GI、3歳上オープン国際、定量、芝・内2500メートル、1着本賞金1億8000万円=出走16頭)ブエナ破ってGP制覇! 中央競馬の総決算レース・第54回
有馬記念は、
ドリームジャーニーが1番人気の2冠牝馬
ブエナビスタをくだして優勝。
宝塚記念以来となるGI3勝目を挙げ、史上9頭目となる同一年春秋
グランプリ制覇を達成した。有馬初Vの
池添謙一騎手(30)は11万観衆からの“イケゾエコール”に涙を流し、ファンと喜びを分かち合った。
夕暮れの中山でひときわ小さな馬体が大きく弾む。ゴール前で襲いかかる末脚は女王も容赦しない。俺こそがナンバーワン! メンバー最軽量426キロの
ドリームジャーニーが、史上9頭目の春秋
グランプリ制覇を成し遂げた。
ゴールを過ぎ、向こう正面まで流していったジャーニーの背の上で、
池添謙一騎手の喜びは頂点に達した。天を仰ぎ、雄叫びを上げ、指を1本突き立てた。「今回は負けられないと、自分をプレッシャーで追い込んでいたから」。11万超の観衆からの“イケゾエコール”に胸を熱くしながらのウイニングラン。関係者の出迎えに、こらえていた涙は一気にあふれた。
出遅れ気味のスタートはいつものこと。後方2番手で、相棒の末脚を最大に爆発させるためのエネルギーを蓄える。故障した
スリーロールスと馬体がぶつかるアクシデントにも動じず、外めを回った3~4コーナーでは他馬と手応えが違った。
「リズムよく走れば絶対に最後は伸びてくれると信じていた。内に
ブエナビスタがいるのはわかったし、直線を向いたときには、全部かわせると思った」
先に抜け出したのは
ブエナビスタ。春2冠の3歳牝馬に1番人気は譲ったが、1着は譲れない。馬場の外から一気に並びかけた勢いのまま、ゴールでは半馬身前に出ていた。
「決めてくれよな」とレース前に池添に声をかけて送り出した
池江泰寿調教師(40)は、立ち上がる人垣に阻まれて、ゴールの瞬間を見られなかった。
「隣にいた調教師の先生に『おめでとう』と言われて、ああ、勝ったのか、とやっと分かった」
池江寿師が助手時代に携わったジャーニーの父
ステイゴールドは、98年の
有馬記念で3着。母の父
メジロマックイーンは「絶対に勝てると思っていた」が2着(91年)だった。
「競馬は血のドラマ。私たちはそれを大事にして馬を育てています。ステイが強くなっていくと実感したのと同じものをジャーニーにも感じていました」
父が01年にラストランの
香港ヴァーズでGIを制した地、香港のクイーンエリザベスII世C(4月25日、シャティン、GI、芝2000メートル)に登録するが、来春の目標は天皇賞(5月2日、京都、GI、芝3200メートル)と、
宝塚記念(6月27日、阪神、GI、芝2200メートル)の連覇だ。
今年、再婚して子供が生まれた池添騎手と、11月19日に長男の悠喜君が生まれたばかりの
池江泰寿調教師。「血のドラマ」は人馬ともに大きなものだった。09年を最高の形で締めくくった池添騎手&池江寿師、そして
ドリームジャーニーは、10年も多くの夢をファンに見せてくれるはずだ。(柴田章利)