第71回
菊花賞(24日、京都11R、GI、3歳オープン、牡・牝、指定、国際、馬齢、芝3000メートル、1着本賞金1億1200万円=出走18頭)7番人気
ビッグウィークが、2周目3コーナー2番手から直線で力強く抜け出してV。夏の上がり馬が、重賞初勝利をクラシックで飾った。3分6秒1(良)。騎乗停止明けで殊勲の勝利を挙げた
川田将雅(ゆうが)騎手(25)=栗・フリー=は、08年
皐月賞に次ぐGI2勝目。
長浜博之調教師(64)=栗東、谷水雄三オーナー(71)ともこれで牡馬3冠制覇となった。1番人気
ローズキングダムは直線で外から伸びたが、2着に敗れた。
皐月賞馬
ヴィクトワールピサも、ダービー馬
エイシンフラッシュもいない
菊花賞。夏に力をつけた7番人気の
ビッグウィークが、最後のタイトルを堂々ともぎとった。
「ゴールの瞬間まで、勝利の確信はなかった。何かが来るんじゃないか、と思っていました」
川田将雅騎手の笑顔が弾けた。11番人気
コスモラピュタの大逃げは、2000メートル通過で昨年より2秒4も遅い流れだったが、敵は後ろにいると信じて、前半は離れた2番手集団の先頭でジッと我慢。2周目の3コーナーで、坂の下りを利用してスパートを開始すると、直線を向いてそのまま力強く伸びる。ラスト1ハロンで先頭に立ってからは独走。外から追い込む
ローズキングダムらの2着争いを寄せ付けず、1馬身1/4差をつけてのフィニッシュは、完勝と呼んでいいほど強い内容だった。
3連勝で挑んだ
神戸新聞杯は3着。
ローズキングダムと
エイシンフラッシュのダービー1、2着馬に力の違いを見せられた。そこで川田が取った策は、瞬発力勝負を避けること。「前走は完全に切れ負けでした。今回は3000メートルもあるんだから、瞬発力勝負にならないようにと」と作戦がズバリ。「未勝利から3連勝して、一戦ごとに競馬を覚えてくれた」。54年に中央競馬会(JRA)が発足してからは、7月10日の初勝利は
菊花賞馬で最も遅い。まさに“遅咲き”の血の開花だ。
クラシック2勝目の川田は、苦しい時期を乗り越えて手にした勲章。
スプリンターズSでは
ダッシャーゴーゴーで2位入線も、進路妨害で4着に降着となり、2週間の騎乗停止処分が前日23日に明けたばかりだった。
「多くの方に迷惑をかけてしまいました。2週間乗れなかったことで、改めてジョッキーとしてやれる喜びを感じています。それでこんな大きな舞台を勝てるなんて…」。改めて競馬への情熱を強く抱いた25歳の若きジョッキーは、23日に京都11R室町Sを
マハーバリプラムで勝ち、この日は
菊花賞を含め3勝。京都で土日メーンVの活躍を演じた。
長浜博之調教師は
アグネスフライトの00年ダービー、
アグネスタキオンの01年
皐月賞に次ぎ、史上11人目の牡馬3冠制覇を達成。「徐々に力をつけてきて、いい状態ならもう一回、ダービーの上位馬と戦わせてみたいと思っていた。3冠ですか。僕も定年(70歳)が近いですからね」。ベテラントレーナーは、偉業に照れ笑いを浮かべた。
今後については現時点では未定。ステイヤーの資質を開花させた長距離砲が再び火を吹くのは、
有馬記念か、それとも天皇賞・春か。いずれにせよ、長距離界の新星に大きな未来が広がった。(柴田章利)
ビッグウィーク 父バゴ、母タニノジャドール、母の父サンデーサイレンス。青鹿毛の牡3歳。栗東・
長浜博之厩舎所属。北海道・新ひだか町・カントリー牧場の生産馬で、馬主は谷水雄三氏。戦績10戦4勝。獲得賞金2億612万7000円。重賞は初勝利。GI
菊花賞は、
長浜博之調教師、
川田将雅騎手ともに初勝利。