「おっっっそ!!」
テレビの前で、思わずそんな声が出てしまった今年の
スプリングS。かなりタフな流れが形成されていた昨年のイメージが頭に残っていたからか、1000m通過が63秒1というのは相当に遅く感じた。
小頭数であったことに加えて向正面で向かい風がかなり強かったために、余計にペースが上がらなかったというのが真相なようだが、こうなると後ろから行く馬は相当に厳しい。道中前にいた馬の順番が少し入れ替わる形でレースは決着することとなった。
そんな特殊な状況下において、勝った
シックスペンスの立ち回りは目を引いた。
序盤から前向きで、ハナも狙えそうな出脚を見せていたが、他馬の動きを確認するとすっと控える。それにより折り合いを欠くような素振りは全くなく、3~4コーナーでの進出も、直線でゴーサインを出されてからの反応も極めてスムーズ。デビュー時から操縦性の良さを評価されていた馬ではあるが、3歳になり、より洗練された印象を受けた。もちろん鞍上のルメール騎手の適切なペース判断や位置取りも非常に大きかったのだろうが、ここまで大人びたレースをする馬もなかなかいない。必要な時に必要な分だけ力を出している感じで、いかにも大崩れの少ないタイプであるように感じた。
しかし、この後に控える本番、
皐月賞のことを考えると評価に悩む。今回のようなレース展開は極めて特殊。多頭数のG1において同じ展開は考えにくいからだ。
それでも、風の恩恵があったとはいえ、後半2ハロンで10秒台を連発した瞬発力は秀逸。大きく性質の異なる流れの中でもこうした良さが出せるのかどうか、次が試金石になりそうだ。
2着の
アレグロブリランテは完全に作戦勝ち。
横山和生騎手の判断が生きた格好だ。
指数的に見ても、かなり物足りない数字だった2歳時と比べると、馬体の充実と共にレースレベルはかなり向上してきている。気性面でズルさが残る現状なのでもう一押しがなかなか利かないが、さらに成長すれば中距離重賞で展開の鍵を握るような存在になってくるかもしれない。
3着の
ルカランフィーストは好位のインでロスの少ない立ち回りだったが、勝負所の機動力の差で勝ち馬に離されてしまった。陣営がボコボコした馬場状態を心配していたし、若干ではあるが内にモタれ気味に走っているようにも見えたので、ベストは綺麗な馬場の左回りではないだろうか。
母のゴージャスランチもこのくらいの時期からじわじわと力をつけて、秋にはローズSで好走を果たしただけに、本馬も本格化はこれからだと思われる。順調ならば重賞の常連になれる素材だろう。
4着の
チャンネルトンネルは中盤でやや力む挙動を見せ、コーナーでの機動力も今ひとつ。直線は外に大きく膨れるシーンもあり、全体的に若さを感じる内容だった。
現状どのあたりに適性があるのか分かりにくい馬だが、血統構成を見るとマイラーという印象が非常に強い。瞬発力もそれなりに備えているので、ある程度広く、直線の長いコースのほうが向いているように思う。
一方、
シンザン記念と
きさらぎ賞で結果を残してきた
ウォーターリヒトはブービー9着と惨敗。
特殊過ぎるスローペースの中を後方から進め、勝負所では大外からの押し上げを余儀なくされ……と、完全に展開に泣かされた敗戦だった。
牡馬クラシック路線の物差し的な存在としても注目が集まっていたが、度外視できるレベルの敗戦で、物差しとしては全く機能せず。各路線の有力馬たちの比較がより付きづらくなり、いよいよ
皐月賞の予想難易度が洒落にならないレベルにまで上がってきた。
どの馬を信じ、どの馬を疑うか? 決断の時まで、もう一ヶ月を切っている。
○
霧(きり)プロフィール
ウマニティ公認プロ予想家。レース研究で培った独自の血統イメージに加え、レース戦績や指数等から各馬の力関係・適性を割り出す”予想界のファンタジスタ”。2023年1月には、長年の活躍が認められ殿堂プロ入りを果たす。
霧プロの最新予想ページはこちら
※週末の枠順発表までは直前週結果ページへ遷移します。