過去にダート界のスターを何頭も輩出し、出世レースとして名高い
ユニコーンS。
今年、文句の付けようがない堂々たる走りでこのレースを制したのは、1番人気に推されていた
ペリエールだった。
2月のヒヤシンスSにおいて既に同舞台を経験しており、適性の高さを示していた
ペリエールだが、今回も芝スタートを難なくこなし、序盤からスピードの乗りも良好。道中は内目に進路を取っていたが、砂を気にする素振りなど全くなく、最終コーナーの時点で他馬との手応えの差は歴然。2番手から抜け出していた
サンライズジークを全く問題にせず、最後は3馬身もの差を付けた。
砂被りを嫌がる馬も多いヘニーヒューズ産駒だが、本馬の場合はその辺りの心配が全くなく、枠順や展開を問わず、ロスのない競馬運びができるというのは大きなアドバンテージ。加えてダートに適性が偏った馬が抱えがちな”芝スタートで行き脚が付かない問題”も今の所全く見られない。
母系を遡ると名マイラーだったスキーパラダイスの名があるし、母父もマイル適性の高い
フジキセキ。今回の東京1600mという舞台に対する適性の塊という印象すらある。
その分、1800m以上の距離や川崎のようなタフなダートでは甘さを見せているので、
帝王賞や
チャンピオンズカップよりも、
フェブラリーSや
南部杯で好走しそうなタイプと言えるだろう。現在のダート界の中では、
レモンポップや
カフェファラオに近いイメージだ。
この後は休養に入るようだが、やや完成の早い血統構成に映るだけに、ここからもう一段上の成長を遂げられるかが今後の鍵。順調に成長するようならば、来年の
フェブラリーSの有力候補に名を連ねて来るだろう。
2着には道中2番手から
サンライズジークが粘り込んだ。
こちらは勝ち馬よりも尖った適性の持ち主で、現状東京1600m専用機とも言える戦績を残している。母父フレンチデピュティの血のイメージがそのまま前面に出たタイプなのだろうか。
ダートも芝もこなし、
秋華賞でも3着に入った実績のある
プロヴィナージュが母で、産駒の適性が芝に偏る
エピファネイアが父とくれば、本馬も芝砂兼用ホースになってもおかしくなさそうだが、今の所芝適性は絶望的。ダートでも東京1600m以外はそれほど光る走りを見せておらず、今後別の条件に出走してきた時の評価が非常に難しい。
本当に今回と同じ舞台しか走れないのか、実はもっと短距離向きだったりするのか、父の血が騒いで中長距離に活路を見出すのか、突然芝適性が覚醒したりするのか……色々な可能性が考えられる馬なだけに、行き着く先を想像する楽しみには溢れている。
3着には
ペリエールと人気を分け合っていた
ブライアンセンスが入り、意地を見せた。
前2走時と比べると調教の時点で若さを感じたし、道中もやや力み気味でリズムが悪そうに見えた。3月のデビューから今回が5戦目。やや強行軍だったことは否めないか。それでも馬券圏内を確保した辺り、潜在能力の高さは疑う余地がない。
こちらは
ペリエールよりも適性の幅が広そうな血統構成だし、成長力という点でも互角以上の可能性を秘めているように思う。順調に成長すればマイルから中長距離まで、現行のダート王道路線の全てをカバーできるような存在になるだろう。
4着
メイショウモズは、ポツンと離れた最後方から直線だけで押し上げてきた。
ニシノカシミヤが作った澱みない流れが味方した部分もあるが、砂被りを気にしたり、馬群の中だと萎縮したりするようなタイプなので、大味な戦法も合っていたのだろう。
母系が短距離寄りの構成なので、真の適性がどこにあるか分かりにくいが、今回の走りからはどちらかといえば中距離寄りのタイプであるように映る。
5着の
グレートサンドシーと6着の
オマツリオトコも少し気性的に難しさのあるタイプで、多少ロスがあってもストレスなく運ぶほうが合いそう。今回は馬群の中での競馬だったり、最内枠から難しい戦法を強いられたりと、それぞれ厳しい要素があった分が最後のジリジリした伸びに繋がったか。
距離に関しても、現状ではどちらも1400mのほうが合うように思えるだけに、条件が変われば再度浮上してくるだろう。今回の敗戦で極端に評価を下げる必要はないと見る。
終わってみれば、上位3頭はいずれも同舞台でハイレベルの走りをしていた馬。
歩んできたレースのレベル差は精査する必要があるが、同じ舞台で経験を積みながら人気に推された馬は素直に信頼し、人気薄の馬に関しては、過去の好走歴や距離短縮で上向く可能性を考慮するのが有効な戦法か。
5着以下の馬もそう弱い馬ではないはずだが、舞台実績がない点や距離延長となるローテに対する風当たりのキツさはかなりのもの。そういった質を持ったレースになる確率が極めて高いということを、自戒も込めて覚えておきたいと思う。
○霧(きり)プロフィール
ウマニティ公認プロ予想家。レース研究で培った独自の血統イメージに加え、レース戦績や指数等から各馬の力関係・適性を割り出す”予想界のファンタジスタ”。2023年1月には、長年の活躍が認められ殿堂プロ入りを果たす。
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