霧
蒼馬久一郎
第59回北海道新聞杯クイーンS(14日、札幌11R、GIII、3歳上牝馬オープン国際特指、別定、芝1800メートル、1着本賞金3800万円 =出走14頭)春のクラシックに出走できなかったうっぷんを晴らして、秋のGI獲りに大きく前進だ。池添謙一騎乗の3歳馬アヴェンチュラが直線で力強く伸び、2着コスモネモシンにクビ差のV。1番人気に応えて重賞初勝利を飾った。タイム1分46秒6(良)はコースレコードにコンマ2秒差の好タイムで、レースレコード。秋華賞(10月16日、京都、GI、芝2000メートル)の有力候補に大きく浮上した。 北の大地で重賞初制覇を飾り、実りの秋へ確かな一歩を踏み出した。アヴェンチュラが雨の中の叩き合いを制してV。早くも肌寒さを感じる札幌の空気とは対照的に、熱い走りを見せつけた。 「一度は2着馬に出られたんですが、差し返してくれました。いい勝負根性をしています。けがで休んでいるあいだに、成長してくれましたね」 池添謙一騎手の笑顔が弾けた。道中は折り合いをつけながら、6番手の好位置をキープ。しかし、3コーナー過ぎではムチが入り、勝負どころでの脚いろは決してよくなかった。それでも直線ではグイグイと脚を伸ばし、外から先頭に立ったコスモネモシンに負けじと、力強いフットワークを繰り出す。ラスト200メートル過ぎで先頭に立つと、そこからは最後までネモシンに先頭を譲らなかった。 凱旋門賞に挑むヴィクトワールピサとともにフランスに滞在中の角居調教師に代わって、前川調教助手がレースを見届けた。「ズルさを見せないように、中間は“攻め”の調整を行いました。力強さが出て、体も成長してくれましたね」と目を細める。昨年12月の阪神JF4着後、右第3手根骨骨折で長期離脱を余儀なくされたが、7カ月半の休養を乗り越えて、復帰戦となった7月30日函館の漁火S(1600万下)を快勝。続けて重賞もクリアと、期待馬は逞しくなってよみがえった。 全姉トールポピー(07年阪神JF、08年オークス)の主戦も務めていた池添は「この相手にこれだけ頑張ったんだから、成長しているし、強くなっていますね」と感心しきり。復活した妹の姿を頼もしそうに見つめた。 池添には阪神JF、桜花賞各2着、オークス3着のホエールキャプチャというお手馬がおり、秋華賞でどちらを選択するのか、興味深い。「うれしい悩みですね」と話す池添は「秋は3歳馬同士ですから。楽しみです」と、古馬相手の重賞Vに、今秋の大きな手応えをつかんだことは間違いない。イタリア語で冒険を意味するアヴェンチュラが、GI制覇への厳しい旅へ向かって突き進む。(宇恵英志)