第35回
マイルチャンピオンシップ(18日、京都11R、GI、3歳上オープン国際(指)、定量、芝・外1600メートル、1着本賞金1億1000万円 =出走18頭)5番人気の3歳馬、ステルヴィオが好位追走から直線で内をついて伸び、昨年の覇者
ペルシアンナイトをアタマ差退けてGI初制覇。タイム1分33秒3(良)。
木村哲也調教師(46)=美浦、ウィリアム・ビュイック騎手(30)=英国拠点=は、ともにJRA・GI初制覇となった。1番人気で春秋マイルGI制覇を狙った
モズアスコットは13着に敗れた。
群雄割拠のマイル界に新星誕生だ。初騎乗のビュイック騎手に導かれたステルヴィオが、淀のインを切り裂くように伸びた。最後は最内から迫る
ペルシアンナイトとの叩き合いをアタマ差しのいで、GIウイナーの称号を勝ち取った。
「スタートが良かったので、引かずにそのままの位置で進めました。思った通りの競馬ができました。海外でもGIを勝ってきたけど、初めて勝ったような気分です」
4年ぶりの短期免許で17日から騎乗し始めたばかりの鞍上は、9度目の挑戦でのJRA・GI初Vに笑顔。これで、
秋華賞のルメール騎手から6週連続で外国人騎手がV。手綱さばきはもちろん、レースに臨む“頭脳”も光った。
2013、14年と
マイルCSに騎乗(ともに5着)してコースの特徴は掴んでいた。パートナーの過去のレースを研究し、後方待機策から勝ちきれないのを見てレース前日に木村調教師に「5番手以内で競馬をしていいか」と提案。トレーナーも「それができれば申し分ない」と快諾した。好スタートを決め、Cコースに替わったばかりで状態がいい内めの馬場を4~5番手で進み、温存した末脚を生かし切る有言実行の好騎乗だった。
開業8年目でJRA・GI初勝利をつかんだ木村調教師は、人目をはばからず号泣。涙で顔をくしゃくしゃにしながら、厩舎スタッフや関係者と抱き合った。
「ホッとしました。頭が整理できません。関わりある人すべてのエネルギーが、ステルヴィオを押し上げてくれた」
胸に秘めていた、
皐月賞4着の雪辱を果たした。「(
皐月賞)当週の調教で組み立てを失敗し、トップコンディションではない状態で出走させてしまった。秋はなんとかして(ステルヴィオの)名誉を回復させたいと思っていた」と同師。「種牡馬にしたい気持ちが強い。それに値するパフォーマンスができるように維持していきたい」と、先を見据えた。
ビュイック騎手は頼もしい相棒へ「もっと成長する。1800、2000メートルでもいけると思う。選択肢として、海外も含めて大きなGIに挑戦してほしい」と期待を込めた。さらなる高みを目指し、新たな王者がマイル界を引っ張っていく。 (渡部陽之助)
★入場&売り上げ
18日の京都競馬場の入場人員は3万3129人で前年比96・5%とダウンしたが、
マイルCSの売り上げは155億7777万400円で同107・3%とアップした。JBC3レースを除く今年の平地GI18レース中、
フェブラリーS、
大阪杯、
皐月賞、天皇賞・春、
宝塚記念、天皇賞・秋、
エリザベス女王杯以外の11レースの売り上げが前年を上回っている。
★アラカルト
◆ウィリアム・ビュイック騎手 ノルウェー出身で拠点は英国。JRA・GIは9度目の挑戦で初制覇。これまでは2014年有馬記念
トゥザワールドの2着が最高成績だった。同重賞は5勝目。
◆
木村哲也調教師 JRA・GIは延べ16頭目の挑戦で初制覇。これまでは15年
NHKマイルC(
アルビアーノ)と17年
朝日杯FS(ステルヴィオ)の2着が最高成績だった。同重賞は8勝目。
◆
ロードカナロア産駒 JRA・GIは
アーモンドアイの牝馬3冠に次ぐ4勝目。
◆関東馬 15年
モーリス以来の14勝目。関西馬は21勝。今年のJRA・GI(障害含む、JBC3レースを除く)は関西馬11勝、関東馬8勝。
◆生産者ノーザンファーム(北海道安平町) JRA・GIは今年11勝目で、自身が昨年マークした年間最多勝記録に並んだ。通算では123勝目。
◆馬主(有)サンデーレーシング
マイルCSは初勝利。JRA・GIは通算45勝目。
ステルヴィオ 父
ロードカナロア、母ラルケット、母の父
ファルブラヴ。鹿毛の牡3歳。美浦・
木村哲也厩舎所属。北海道安平町・ノーザンファームの生産馬。馬主は(有)サンデーレーシング。戦績9戦4勝。獲得賞金2億7773万円。重賞は2018年GIIフジテレビ賞
スプリングSに次いで2勝目。
マイルチャンピオンシップは
木村哲也調教師、ウィリアム・ビュイック騎手ともに初勝利。馬名は「イタリア北部にある国立公園」。
ウィリアム・ビュイック 1988年7月22日生まれ、30歳。ノルウェー出身、デンマーク国籍、騎乗拠点は英国。2007と08年に英国の最優秀見習騎手に輝き、10年からJ・ゴスデン厩舎の主戦となる。この年はダーレミでの
ドバイシーマクラシックなどGI5勝、翌11年もナサニエルでのキングジョージなどGI5勝をマーク。15年からゴドルフィンの主戦騎手に。今年は英国ダービー、
ドバイシーマクラシック、BCジュベナイルターフなどを勝っている。JRAでは230戦22勝(重賞5勝)。
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