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【鈴木和幸】ジャパンカップの秘話

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 注目のジャパンカップは今年で29回を数える。来年は記念すべき30回、もうそんなにも回を重ねたのかとの思いがしきりである。

 私は、昭和56年の第1回からジャパンカップを見、予想もしてきた。いちばん衝撃的だったのは、やっぱり第1回である。1~4着の上位を外国馬に独占され、我が◎モンテプリンス(2番人気)は、”どこさもない”7着、世界と日本とのレベルの違いを痛いほどに思い知らされた。このときの勝ち馬メアジードーツ(米)が、これといった重賞勝ちもない名もない馬だっただけに、なおさら世界との距離を感じさせられたのである。

 第2回も外国馬に勝たれ、ジャパンカップは外国馬のためにあるといわれ始めたとき、第3回で2着したのが日本のキョウエイプロミス、そして、第4回にはまさかの日本馬カツラギエースの逃げ切りがあり、つづく第5回はまたしても日本馬シンボリルドルフのV、このころから日本の馬には、世界とのレベルはともかく、”地の利”があるんだといわれるようになったと思う。

 昨年までの28回を振り返ると、外国馬14勝に対し日本馬も14勝だから、数字の上では日本馬は互角以上に戦っている。だからといって、一概に日本馬が世界的レベルに達したとはいえないが、ジャパンカップが日本で行われている以上、日本馬のVチャンスは十分。”アゴ足つき”(出張経費はすべてJRAの負担)で招待されることもあり、物見遊山的にてやってくる外国馬も多いとなれば、なおさらチャンスは広がると考えてもいいだろう。そう、地の利に加え、いうところの”やる気”度が違うからである。

 今年の外国馬は仏国のシャラナヤが辞退してしまったので5頭、さて、この中に本気で勝ちにきた馬、勝てる実力のある馬、日本の軽い芝に合った馬はいるのだろうか!? じっくりと調べ、東京競馬場に出かけて観察することにしよう。

ジャパンカップの予想を立てる上で、最も楽しみなのは外国招待馬の評価である。各馬の戦績はJRAがデビュー戦からのすべてを発表してくれるので、それを見ればわかる。しかし、その戦績通りにランク付けができるかといえば、そう簡単にはいかないのがジャパンカップなのである。戦績、格はもうひとつでも体調のよさが際立っている馬、日本の軽い芝に対応できる、いや、軽い芝が合っている馬を探し出すこと、それがジャパンカップでの私の最大かつ最重要な仕事、そう考えて取り組んできた。

 私は生来の動物好きである。犬はもちろんのこと鶏(にわとり)や山羊(やぎ)、いまでは禁止されているがメジロやヤマガラ、ホオジロなどの野鳥もたくさん飼った。中でも伝書鳩は、”鳩きちがい”といわれるほど好きで、鳩レースにも参加させていた。みなさんは鳩をみてその体形の違いがおわかりになるだろうか。多くの方々は毛色の違いくらいしか判別できないのではありませんか。でも、学校でとられる時間はともかく、それ以外の時間の大半を鳩と過していた私には、その体形の違いはもちろん、空を舞う飛び方まで1羽、1羽判別でき、仮に50羽を飛行訓練させていたとして、1羽でも欠けたり、1羽でも他人の鳩が加わっていたら、その異常にすぐさま気付いたほどだった。知らず知らずのうちに1羽、1羽を観察するようになっていたからだと思う。

 この経験が馬の世界に入ってから大いに役立っている。ジャパンカップにおける外国招待馬の評価にもどれほど役立ったことか。あれは平成4年のジャパンカップだったと思う。この年の外国招待馬は7頭、多くの支持を受けていたのはイギリスのGⅠ馬ユーザーフレンドリーだったが、私が◎を打ったのはオーストラリアからやってきたナチュラリズム。440キロの牡馬にしては小さい馬だったが、全身これバネといった感じで、とにかくバネのきいたフットワークが魅力的だった。ずばりといえば、いかにも軽い芝の日本の競馬向き。対してユーザーは、気性に問題がありそうな目つきをしていたし、胴長のスタミナタイプ、日本の競馬には?マークがついたのである。こいつならナチュラで負かせるとの判断のもと、◎に踏み切ったのである。

 この年の日本の馬はどれも評価が高くなく、岡部=トウカイテイオーの5番人気が最上位の評価。しかし、私はそのトウカイにVまである▲をつけた。確かにトウカイは春の天皇賞で1番人気で5着。秋初戦の天皇賞でもこれまた1番人気で7着と期待は裏切ってはいたものの、実この2つの天皇賞の中身はぜんぜん違っていたのである。春は5着とはいえ直線ズブズブの1秒7の大差負け。ところが、秋は7着と着順こそ悪かったが、勝ち馬との時計差はたったの0秒5。負けても見せ場たっぷりとあった。この点を評価し、勝ち馬候補の1頭に取り上げたというわけだ。

 最後の直線、一歩先にインいっぱいから抜け出したナチュラに、外から猛然と襲いかかったトウカイ。この手に汗握る両馬の死闘は、トウカイがクビでたところがゴール。珍しく、あの冷静沈着な岡部の右手をあげてのガッツポーズが今も鮮明に記憶している。私は▲にとどめていてもトウカイに勝たせたいとの心情があったし、単勝オッズがナチュラ6・7倍に対してトウカイ10倍ときては、トウカイの単勝を買わずして何を買えというのだ。思いっ切りトウカイテイオーの単勝で勝負させてもらったし、馬連は前記2頭▲◎の⑦―⑭(4890円)が大本線。気がつくとラジオの生中継中だったというのに、”岡部、岡部”と絶叫し、失礼にも実況アナウンサーの頭をたたいていたではないか。忘れられないジャパンカップである。

 その翌年も、さらにその翌年も私は毎日のように東京競馬場に出かけて行き、外国招待馬を観察し、取材を重ねた。おかげで3年連続してジャパンカップは予想的中、友人から、”ジャパンカップは和さん(私のこと)にお任せ”とのありがたい言葉ももらった。今年も外国招待馬が入厩したその日から東京競馬場へ行こう。そして、5頭をジックリと観察させてもらう。ただし、近年の外国招待馬は自国で調教のほとんど済ませてきてしまい、来日そのものが遅いし、日本ではほとんど強い調教をしない。これでは馬体を見ることはできでも、全力で走る姿や息遣いは観察できないわけで、いきおい成績に重きをおくことにもなりかねない。ぜひ、外国招待馬は東京競馬場で最終追い切りを、これが私の切なる願いである。

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