とぅっけ
にしのけいご
第24回マイルチャンピオンシップ南部杯(10日、東京11R、GI、3歳上オープン、定量、ダ1600メートル、1着本賞金4500万円=出走15頭)単勝1・6倍という圧倒的な1番人気に推されたトランセンドが、GI3勝目を飾った。本来の逃げでなく2番手からの競馬で危ないシーンがあったが、それを克服しての勝利。交流GI3連勝中のスマートファルコンとの11月3日のJBCクラシックでの対決が大いに注目される。 残り100メートルでスタンドの悲鳴が大歓声へと変わった。脚いろが劣勢だった断然の1番人気トランセンドが驚異的な脚を発揮してダノンカモンを差し返し、JRA・GI3連勝。初対戦だった09&10年の最優秀ダートホース・エスポワールシチーも4着に退けた。 「道中はフワフワしていて1600メートル追いっぱなし。ヒヤヒヤしましたが、地力を出してくれましたね。エスポワールシチーには一目置いていましたし、勝ちたかった」 検量室前に引き上げてきた藤田伸二騎手がホッとした表情を見せる。ドバイワールドC2着以来、6カ月半ぶりの帰国初戦。陣営にはひとつアイデアがあった。「もうチャレンジャーではないのでハナにこだわってばかりでは勝たせてもらえない。番手から競馬ができればと思っていた」と藤田は説明。道中は思惑通りに逃げるエスポワールの2番手を進んだ。直線入り口で前を捕らえにかかったが、反応はもうひとつで、いったんはダノンカモンに外からかわされてしまう。「余力は残っている。ゴールまでしっかり走ってくれ!」。鞍上の叱咤に応えるように残り200メートルから脚を伸ばしてエスポワールをかわし、ダノンを頭差ねじ伏せた。薄氷を踏む勝利。それでも、以前とは違う勝ち方ができただけに収穫は大きかった。 カレンチャンでのスプリンターズSに次ぐGI連勝を飾った安田隆調教師は「本当にしんどかった。3着かと思ったら、ジワジワ来てゴール入った時は頭差ですから。ドッと疲れが出ました」と苦笑い。今後はJBCクラシック(11月3日、大井、交流GI、ダ2000メートル)から連覇がかかるJCダート(12月4日、阪神、GI、ダ1800メートル)へ。「もちろん、来年もドバイ(ワールドC)に行きたい」と安田師は続けた。 JBCクラシックには交流GI3連勝中のスピード馬スマートファルコンも参戦予定。トランセンド2着、スマートファルコンが3着だった昨秋の日本テレビ盃に次ぐ2度目の対戦で完全決着をつけ、日本最強を証明するためにも2番手で競馬ができたことは大きい。 この日は「岩手競馬を支援する日」として開催された。「人気に応えられて被災地の皆さんを勇気づけられたと思います」と藤田は笑顔。ドバイワールドCでヴィクトワールピサとワンツーを決め、ジャパンパワーを印象づけたトランセンドが再び勇気をくれた。 (森田実)