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社会人になり立ての頃、小田原に住んでいた。当時も珍しかった3人共同住まいの部屋にはプライベート空間はなく、昭和感丸出しの薄暗い部屋でコンビニ弁当を食べるのが嫌で、私は毎日外で夕食を摂った。
そんな夕食の選択肢に老舗のホルモン焼き屋があった。ガンコな親父と威勢の良いお母さん、無口な長男と妹の家族経営で味は良かったが初めての客にはちょっと入りづらい雰囲気の店だった。
まずメニューが全然分からない。酢味噌で食べる豚足は「ハイヒール」と言い、ボイルしたのを酢醤油で食べるのは「ボール」。豚のひざの軟骨は「軟骨デカ」で、これとは別のスライスし味噌で和えたものをレンジでチンして食べるのは「軟チン味噌」。フツーの人が入ったらメニューなど一つもわからない店で、飲み物もホッピーという清涼飲料水を焼酎で割って飲むのが主流だった。この店が好きで週に2~3日はここで夕食を摂った。
関西出身の同僚がホルモンの由来を教えてくれたのもこの頃だ。放る(捨てる)もん(もの)という意味で使われた「ほるもん」がいつからかカタカナ表記され、本来の意味・語源とは違った響きを持つようになったがそもそもはそういう意味だ、とグデングデンになりながら聞いたのを覚えている(笑)。
あれから早30年…。先日胆石を除去し健康の大事さを思い知った私だが、それでも変わらずホルモン(=牛や馬、豚の臓器系=モツ)は好きで、胆石がなくなったのを良いことに、そろそろモツ鍋がうまい季節になるなぁ…などと考えてしまう(笑)。
さて、モツといえば保つ(もつ)。競馬の世界では距離が保つか保たないかは非常に大事だが、今週末・関東圏のメイン競走毎日王冠もまた距離に関してシビアなレースの一つだ。モツが保つに変わったところで今週の金言を紹介しよう。
曰く「毎日王冠は距離保つマイラーから」。
歴史を振り返ると毎日王冠の好走馬の多くはマイラーだが、その距離適性は「もう少し長い距離でも保つ」という馬が多い。たとえば昨年勝ち馬のサリオスは皐月賞2着だったし、ダノンザキッドもディープ記念、先の大阪杯で3着と善戦した。また一昨年の優勝馬シュネルマイスターもディープ記念で2着したし、2着のダノンキングリーは皐月賞3着だった。マイル適性は高いが2000mくらいまでならばこなせる馬。それが毎日王冠制覇に相応しい馬だ。
ジャスティンカフェはエプソムカップの勝ち馬。昨年の毎日王冠も2着などこの条件は得意。57キロに下がる斤量も有り難く、ここは手堅く一勝しておきたいところ。
件のホルモン焼き屋のネットの書き込みを見たところ、肉しか出さなかった店の口コミで「マグロのブツが美味しかった」とのコメント。ガンコでよく喋るおやじは他界し当時は若と呼ばれていた無口な長男が店を継いでいるという。時代は変わり人も、メニューも客も変わる。そろそろマイル路線の勢力図も変わって良い頃だ。
(文:のら~り)
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