豚ミンC
フラワーCが20日、中山競馬場で14頭によって争われ、12番人気の伏兵アブレイズが2番手追走から抜け出して快勝。無傷のV2で重賞ウイナーに輝いた。次走は桜花賞(4月12日、阪神、GI、芝1600メートル)に向かう。海外で活躍後、昨春にJRA騎手免許を取得した藤井勘一郎騎手(36)=栗・フリー=はうれしい重賞初勝利。3/4馬身差の2着は4番人気のレッドルレーヴだった。 無人のスタンドを背に、右手で何度も拳を握りしめた。フラワーCを制したのは、キャリア1戦のアブレイズ。絶好のスタートから強気に2番手でリードした鞍上の藤井騎手は、5度目の受験でJRA所属となった昨春から、挑戦14度目にして念願の重賞初制覇だ。 「もう36歳になりましたけど、うれしいですね。海外では重賞も勝っていますが、日本の騎手になってこういう能力のある馬に乗せてもらって、自信になります」 殊勲の勝利インタビューで精悍(せいかん)なマスクをほころばせる。体重の問題でJRA受験がかなわない中、騎手への夢を諦められず、単身オーストラリアに渡ったのが15歳のとき。その後はシンガポールや韓国などを渡り歩き、地道に腕を磨いてきた。白熱のゴール前、左腕で繰り出した火花が飛ぶような風車ムチは、往年の海外の名騎手さながらだった。 それにパートナーが見事に応える。「楽に2番手がとれたし、キャリアがないぶん、まだフワフワと走っていて、いい意味で息も入った。前走と全然違うコンディションの競馬で勝てたのは大きいし、底も見せていないので」と今後の可能性にも太鼓判を押した。 15年連続の重賞制覇となった池江調教師にとっては、思い出の血統によるメモリアルVだ。「3代前の母リリオは当時、セールで(前田幸治)オーナーに“選んでいいぞ”と言われて、自分が選ばせてもらった馬。これぞブラッドスポーツの醍醐味(だいごみ)。今夜は眠れません」と歓喜の声を上げ、「桜花賞、オークスと行くことにします」とクラシック参戦を明言した。強豪ひしめく牝馬戦線。魅惑の新星がまた1頭、名乗りを上げた。 (内海裕介)アブレイズ 父キズナ、母エディン、母の父ジャングルポケット。青鹿毛の牝3歳。栗東・池江泰寿厩舎所属。北海道新冠町・(株)ノースヒルズの生産馬。馬主は前田幸貴氏。戦績2戦2勝。獲得賞金4150万4000円。重賞初勝利。フラワーCは池江泰寿調教師、藤井勘一郎騎手ともに初勝利。馬名は「燃え立って、輝いて」。