目を輝かせ、いたずらっぽく笑いながら“ヤツ”がやってきた。毎度笑いの種をくれる男子生徒だ。 「先生、三角形は英語でトライアングルですよね。なら四角形は?」 「スクエア。」 「じゃあ五角形は?」 「ペンタゴン。」 「ですよね。じゃあ十角形は?」 「いや、知らない(笑)。というか十角形なんて受験に出ないし日常生活でも使わないから覚えなくて良い。」 「でも知りたくないですか?」 「何て言うんだ?」 「デカゴンです!ついでに十二角形はドデカゴンなんですよ!覚え易くないですか?」 「イヤ、そんなポケモンみたいな名前覚えてどうする?そんなことより…」 言葉を制して彼が畳み掛ける。 「ちなみに二角形はわかりますか?」 「二角形?点が3つないと面は出来ないから二角形は存在しない。」 「ところがですね!球面をリンゴを剥くように切り取った形の外側の皮にあたる部分は球面二角形と言うれっきとした二角形なんです!そしてダイアゴナルって言います。」 彼は得意げに図を書いて示した。なるほど、見れば確かに2つの角度を持った図形だ。 「ところで一角形っていうのはユークリッド幾何学では見つかってないんですが、実は既に名前が決まってるの、知ってました?」 (イヤイヤ、一角形なんて未来永劫見つからないし、そんなモノの名前も当然知らん(笑)。君の思考は一体どこをさまよって…。) そう思う私をよそに彼は生き生きと喋り続けた。 「ヘナゴンっていうんです!スゴくないですか?見つかってない形に既に名前があるんです!」 (イヤ確かにスゴイ。スゴイが、日常生活を送りつつそこに辿り着くお前の思考のほうが遥かにスゴイ笑)そう思い何か言ってやろうと言葉を選んでいるうちに、彼は新たな発見の吐露にすっかり満足したのか、返事を待たずその場を去った(笑)。 さて、ヘナゴンは将来その図形が見つかった時に備えて作られた一角形の名前だが、今週日曜東日本のメイン、有馬記念には未来に関する勝ち馬検討の金言が存在する。謹んで紹介するとしよう。 曰く「有馬記念は次世代のホープから」。 トップホースが強さを見せつける引退の有馬。死んだフリをしていた往年の名馬が復活を遂げる有馬。有馬には様々な顔が存在するが世界一の称号を持ったままイクイノックスがターフを去った今回、盛り上がるとすればそれは彼に負かされた馬たちのハイエナレースではなく、新時代を担う新たなトップホースの誕生でであろう。 タスティエーラは今年のダービー馬。走っても走っても人気にならないがデビュー以来の成績は超優秀で、古馬と初めて戦うここを勝てば新時代の主役決定だ。舞台と役者は揃った。あとは勝ち名乗りを上げるだけだ。 高校生の文理選択のリミットは通常高1の12月。多角形の話を生き生きと語った件の生徒は何故か文系選択だが(笑)、新時代の、新たな文系人間の誕生を予感させる。1年後に迫った受験の有馬、共通テストが楽しみだ…。